家賃を滞納し続けると、賃貸人から強制退去させられる可能性もあります。
その際、部屋にある荷物はどのように扱われるのでしょうか。
賃貸人は滞納者の荷物を勝手に処分できませんが、正しい手順で進めれば処分できます。
滞納者は強制退去となった際の荷物の取り扱いについて理解していた方がよいでしょう。
この記事では、家賃滞納で強制退去になった場合に荷物の搬出先と処分方法、強制退去までの流れについて紹介します。
目次
家賃滞納は金銭的な余裕がないため、強制退去になった際、部屋の荷物は残ったままの状態が多いです。
処分しなければ次の入居者を迎え入れられず、家賃収入も得られないため、賃貸人はいち早く処分したいと考えます。
しかし、賃貸人の独断で荷物の撤去はできないため、どのように対処されるのでしょうか。
ここでは家賃滞納で強制退去になった場合に荷物の取扱いについて紹介します。
強制執行によって退去させられたとしても、部屋にある荷物は滞納者の所有物となります。
賃貸人が勝手に鍵を交換する行為や、許可なく滞納者の荷物を処分して部屋を片付けるといった実力行使は行ってはいけません。
所有物が滞納者にある以上、賃貸人が勝手に処分した場合、損害賠償請求が可能です。
明け渡し訴訟によって強制退去を裁判所から命じられた場合、滞納者は荷物を持って期日までに退去しなければいけません。
退去しなければ、執行官が手配した執行業者が建物内の荷物を強制的に搬出します。
搬出した荷物は、倉庫などで1カ月保管され、引き取りがない場合は売却されるしくみです。
執行業者が用意した保管場所を利用する場合は費用がかかるため、注意が必要です。
また、金銭的に価値が付かない荷物は廃棄されるため、大切なものも処分されてしまうでしょう。
売却された荷物の代金は、執行費用と相殺されるケースが多いです。
強制退去にかかった回収費用や訴訟手続き費用などは、基本的に入居者が負担しなければいけません。
一度は賃貸人が立替えますが、その後滞納者に請求される流れです。
家賃滞納から強制退去までの流れは、以下の通りです。
家賃滞納からおおよそ6カ月ほどで強制執行が行われ、賃借人は退去しなければいけません。
ここでは、強制退去するまでの流れについて詳しく説明します。
家賃滞納が発生した場合、賃借人へ家賃の支払い督促を行います。
督促方法は物件を管理している不動産会社が電話や手紙、訪問などで行います。
家賃支払いの督促がされたからといって、即座に退去が求められるわけではありません。
強制退去は、貸主と借主の信頼関係が破壊されるほどの滞納でなくては行えない手続きです。
1カ月や2カ月の家賃滞納では強制退去させられませんが、3カ月以上滞納すると、信頼関係が崩れたとみなされます。
そのため3カ月を目途に、強制退去への手続きが移行される可能性が高くなると理解しておきましょう。
3カ月以上滞納すると、内容証明郵便で、賃貸借契約解除や物件の明け渡し要求が届きます。
内容証明郵便とは、どのような内容の書類をいつ郵送したのかを郵便局で管理・証明する書類です。
明け渡し訴訟をする上で、賃貸人が滞納分の家賃を請求していた事実があった、重要な証拠となります。
内容証明郵便を送っても、家賃の支払いが確認できない場合は信頼関係が崩れたと認められ、賃貸人は強制的に賃貸借契約を解除できます。
内容証明郵便の送付は、既に賃貸人は弁護士へ相談し、裁判も視野に入れて動いていると考えられるでしょう。
この時点で滞納分の家賃を支払わなかった場合や、賃貸人と話し合いに折り合いがつかなかった場合、裁判所へ申立てが行われる可能性が高くなります。
内容証明郵便を送付しても、滞納者から何の連絡もない場合は、賃貸人から明け渡し訴訟を提訴される可能性が高くなります。
明け渡し訴訟では、賃貸人と賃借人の言い分や、これまでの経緯などから審理されます。
滞納者は訴訟の出席は任意となりますが、欠席すれば賃貸人の言い分を認めたと判断され、立場を悪化させるでしょう。
明け渡し訴訟で、裁判所から明け渡しを命じられたら、猶予期間までに立ち退くよう指示されます。
猶予期間までに退去しなければ、賃貸人は強制執行の申立てを行います。
裁判所が強制執行を認めると、執行官の立会いのもと、部屋の家具や家電が強制的に運び出され、同時に玄関の鍵も交換されます。
そのため、半ば強引に退去することになるでしょう。
また、強制執行により退去したとしても、これまでの滞納分の家賃を支払う義務は残るるため、注意が必要です。
家賃滞納で強制退去となったときの荷物の処分費用は、滞納者が支払います。
また、金銭的に価値があるものは、執行官によって売却されますが、高値が付くとは言い切れません。
そのため、強制退去となる前に、自分で売却などの処分したほうが高値にできる可能性も高いです。
ここでは強制退去となったときの荷物の処分方法を3つ紹介します。
各自治体のゴミ回収で、売れないものを処分すれば、処分費用を抑えられます。
粗大ごみであっても、数百円程度でシールを購入すれば、処分できる自治体も多いです。
粗大ごみにシールを貼り、回収当日の朝にゴミ捨て場に出しておくと回収してくれます。
自治体によって処分できるものが異なるため、事前に確認しておきましょう。
ただし、パソコンやテレビ、冷蔵庫や電子レンジなどは、小型家電リサイクル法に基づいた回収を利用した方がよいでしょう。
公共施設やスーパー、家電量販店などに回収ボックスが設けられている場合や、資源ごみ集積所に回収コンテナが設けられている場合があります。
また、大手家電量販店のほとんどが回収に協力しており、店頭回収や宅急便などで対応してくれます。
回収場所は全国に約1,600箇所あり、決められた期日に無料(一部有料)回収してくれるため、費用をかけずに処分が可能です。
なお、回収対象となる品目は一般社団法人小型家電リサイクル協会のホームページをご確認ください。
不用品回収業者とは、不要になった家具、家電、ゴミなどを回収処分する民間業者です。
小型家電リサイクルでも回収できないゴミを回収してもらえます。
さらに、大きな家具家電は自分で搬出するのが困難ですが、不用品回収業者であれば部屋から運搬してくれます。
また、即日対応してくれる業者も多く、時間の指定ができる場合もあり、りゴミの分別にも対応しています。
ただし、不用品回収業者を利用する場合は有料となります。
以下の表は、世帯数別の料金相場の目安です。
世帯構成人数 | 料金相場の目安 |
---|---|
単身者 | 4万9,000円~18万2,000円 |
2人家族 | 6万円~21万1,000円 |
3人家族 | 9万5,000円~22万7,000円 |
4人家族 | 12万4,000円~23万6,000円 |
もちろん、各世帯によって回収品の数や物が異なります。
さらに不用品回収業者によって料金にも違いがあるため、上記の価格は目安としておきましょう。
リサイクルショップなどで不用品を買取してもらえば、処分費用を抑えられます。
もちろん買取対象となる商品は、リサイクルショップによって異なります。
さらに買取価格にも違いがあるため、少しでも高く買取してもらいたい方は、複数店舗に査定を依頼しましょう。
また、滞納分の家賃を支払わなければいけないため、リサイクルショップでの買取金額を滞納分の家賃に充てることも検討しましょう。
強制退去となった場合の部屋の荷物は、滞納者の所有物であるものの、執行官によって1カ月ほど保管されます。
引き取りしないとそのまま売却や廃棄され、処分費用は滞納者が負担します。
そのため、即座に引き取るか、強制退去する前に自分で処分した方が出費が抑えられるケースも多いです。
自治体のごみ回収や小型家電リサイクル、リサイクルショップなどをうまく活用し、少しでも処分費用を抑えるようにしましょう。