貸家に住んでいる方は、大家から立ち退き通知書が渡され、退去を要求されるケースがあります。
特に老朽化した建物を建て替え等する場合は解体しなければいけないため、立ち退きしなければいけません。
しかし、引越するにも費用がかかってしまうため、経済的余裕がない人も退去願いに従わなければいけないのでしょうか。
また、立ち退き料をもらうことができるのか、疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。
この記事では、立ち退き通知書(退去願い)の概要と、退去願いに従う必要性と対処方法、立ち退き料が発生するケースについて紹介します。
目次
立ち退き通知書(退去願い)とは「大家から入居者に対して退去の請求をする告知書」のことです。
口頭で立ち退きの旨を伝えても、「言った・言わない」の水掛け論にもなりかねない上、借地借家法第26条で、賃貸人(大家)は、期間満了の1年前から6カ月前までの間に、賃借人(入居者)に対して更新しない旨の通知をするよう定められています。
つまり、賃貸人が送付する立ち退き通知は通知日を書面に記載した上で、半年以上前に行う必要があります。
とはいえ、賃借人にとっては不意打ちの通知となる退去願いにも従わなければいけないのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
立ち退き要請を受けた賃借人が従わなければいけない場合は、賃貸人に「正当事由」がある場合です。
正当事由とは、貸主が更新をせず、借主を立ち退かせるために必要なものとして借地借家法が定める理由のことを指します。
正当事由は法律で明確に定められていないものの、貸主が建物を使用する必要性と借主が建物を使用する必要性を比べて、どちらの方がその建物を必要としているかという点が、主たる判断要素となります。
主に以下の4つの観点から正当事由に該当するかを判断します。
つまり、賃借人が正当事由もなく立ち退き通知書(退去願い)を渡しても、賃借人がその建物に住んで生活している以上、従う必要はありません。
では具体的に、どのような理由が正当事由に該当するのでしょうか。
ここでは代表的な3つのケースを紹介します。
ひとつずつ確認しましょう。
老朽化した建物は倒壊するリスクがあります。
倒壊する危険性がある建物を大規模リフォームや解体するための立ち退きは、正当事由に該当します。
万が一倒壊してしまうと、賃借人の命にもかかわります。
老朽化した建物については明確な定義が定まっていませんが、一般的には以下の建物が該当します。
立ち退きの正当事由としては最も多いため、築古物件に住んでいる方は老朽化を理由に立ち退きをお願いされる場合が多いでしょう。
賃貸人が住んでいた家を賃借人に貸し出していたものの、賃貸人が戻ってくることになった場合は、その家から退去しなければいけません。
もちろん、賃貸人と賃借人にとっての建物の必要性から判断されます。
たとえば、高齢者の方がその建物しか所有しておらず、他に住む場所がないケースや、賃貸人がその建物を使用して商売を行いたいケースなどは、正当事由として認められることが多いです。
賃貸借契約書に明記されている契約違反を賃借人が行った場合、立ち退きの正当事由に該当するケースが高まります。
具体的には、「賃料の未払い」や「ペット飼育不可物件であるのにもかかわらず猫や犬を飼っていた」などが挙げられます。
上記のケースの通り、契約違反を行えば、賃貸人側にとっての立ち退きの正当事由に該当する可能性も高いです。
また、その他にも正当事由に該当した判例は数多くあります。
そのため、退去願いを受け取った際は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
立ち退き料とは、立ち退きするにあたって賃貸人が賃借人へ支払う金銭のことを指します。
貸主に足りない「正当事由」を補完する要素とも考えられますが、一般的には、引越しする時にかかる「敷金」「礼金」「家賃」「引越し代」などの初期費用が該当します。
相場としては家賃の6カ月と言われていますが、算定する明確な基準や計算式は存在しません。
そのため、賃貸人と賃借人が同意できた金額が立ち退き料となります。
しかし、立ち退き料は必ずもらえるというものでもありません。
ここでは立ち退き料が発生する3つのケースを紹介します。
賃貸人都合による立ち退きを行う場合、立ち退き料が発生します。
賃借人が引越しするための費用の多くを、賃貸人が負担するのが一般的です。
老朽化した賃貸物件を建て替えする場合、賃借人が引越しするための費用を立ち退き料として支払います。
アパートやマンションなどの賃貸物件が老朽化し、建て替えなどをする場合は、入居者全員に立ち退き料を支払うのが一般的です。
再開発による建物の移転や取り壊しを行う場合、賃借人は退去しなければいけないため立ち退き料を支払います。
ディベロッパーや国が大規模商業施設やマンション、公共施設などを建設するためにその土地を収用した場合、建物も解体することになります。
当然、賃借人も解体する建物に住み続けられず立ち退きすることになるため、立ち退き料が発生します。
一般的に、以下のケースでは立ち退き料は発生しません。
上記の他にも、建物に重大な危険性があるときは立ち退き料が発生しない場合もあります。
この場合は、立ち退き料で補完するまでもない正当事由があるとみなされるためです。
なお、定期建物賃貸借契約とは、賃貸借契約期間が定められており、更新が認められない契約をいいます。
賃貸人から退去願いを受け取った場合は、以下の3つの流れで対処しましょう。
ひとつずつ紹介します。
はじめに、立ち退き通知書(退去願い)の内容を確認します。
確認すべき項目は、「正当事由」「退去期日」「立ち退き料の有無」です。
いつまでに退去しなければいけないのか、立ち退き料はもらえるのかという、期日とお金についてチェックします。
立ち退き通知書(退去願い)の正当事由や立ち退き料などの内容に納得できない場合、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
正当事由には明確な基準が定まっていないため、そもそも立ち退き通知書(退去願い)の内容が正当事由に該当するのかわからない方も多いです。
さらに立ち退き料の相場も定まっていないため、弁護士に相談すれば適切な金額を賃貸人へ交渉してくれます。
立ち退き請求書が届いていたら慌ててしまい、すぐに合意しようと考える方も多いですが、一度落ち着いて立ち退き請求書と契約書を確認し、弁護士へ相談するようにしましょう。
立ち退き通知書(退去願い)の内容に合意できる場合は、賃貸人に合意の旨を伝えます。
その後、引越し先物件などを見つける作業に入ります。
当然ながら、期日までに退去しなければいけません。
仕事が多忙で引越し先が見つからなかったという理由は通用しないため、期日までに引越しをしましょう。
立ち退き通知書(退去願い)とは「大家から入居者に対して退去の請求をする告知書」のことです。
賃貸人に正当事由があれば、半年から1年以内に退去しなければいけません。
しかし急に立ち退き通知書が届いてしまうと、慌ててしまう方も多いです。
立ち退き料の交渉などにも影響するため、しっかり内容を確認し、必要があれば早めに弁護士などの専門家に相談して対処しましょう。