

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

ペット不可物件で隠れて猫を飼育していたのがバレても、直ちに物件から強制退去させられるとは限りません。
貸主から建物明け渡し訴訟の提起があった場合、裁判所は信頼関係破壊の法理を重視します。
信頼関係が破壊されたとは言えない場合や、貸主との交渉次第では強制退去を回避できる可能性もあるでしょう。
退去費用の算定は、国交省が公開している原状回復ガイドラインが基準となります。
貸主から高額な退去費用を請求されたときは、原状回復ガイドラインを確認し、弁護士に交渉を依頼しましょう。
ここでは、ペット不可物件で猫の飼育がバレてしまい、高額請求や物件からの退去を求められたときの対処法などを解説します。
目次
ペット不可物件で隠れて猫を飼育した場合、ほとんどのケースでバレてしまいます。
バレる原因は、猫の鳴き声や窓越しの目撃、毛の付着、壁や床についた爪とぎの傷跡、トイレの臭いなどです。
不動産会社が退去時に室内の確認をするとき、猫を飼っていた痕跡がバレないケースは稀であり、発覚するリスクは高いでしょう。
退去前で近隣住民や不動産会社にまだバレていない場合でも、バレてしまったときの対応方法はあらかじめ考えておくのが望ましいです。

ペット不可賃貸で猫を飼っている事実がバレた場合、以下の3つのリスクがあります。
多額の費用が請求されたのちに、退去にもなりかねません。
ひとつずつ確認しておきましょう。
ペット不可賃貸であるにもかかわらず、ペットを飼っていた場合、修繕(原状回復)費の支払いが求められるケースが多いです。
民法621条[注1]上に定められた原状回復とは、借主の故意や過失による損傷などを回復させる義務です。
引用:
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
ペットの飼育に限らず、借主は退去時に部屋の修繕を行わなければいけません。
修繕箇所は、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)に則って行います。
日常生活で付いた傷や汚れや通常消耗の原状回復費用は家賃に含まれているとみなされ、借主が負担する必要がありません。
一方で、ペット不可の物件で猫が付けたクロスの傷や床の汚れは、借主の故意や過失とみなされ、借主の負担で修繕が求められます。
ペットを飼育されている場合は、通常より傷や汚れが付く可能性も高いため、多額の修繕(原状回復)費を支払うリスクがあるでしょう。
ペット不可の賃貸物件では、賃貸借契約書にペットを飼育した際の損害賠償請求が明記されている場合は、貸主は借主へ賠償金を請求できます。
損害賠償請求を支払わないと、最終的には訴訟まで発展し、強制退去や財産の差し押さえを受ける恐れがあるでしょう。
損害賠償請求ではなく、違約金の請求と明記されている場合も少なくありません。
ペット不可物件で猫を飼育している場合は、賃貸借契約書の条項や特約事項を確認し、損害賠償請求されたときの備えをしておきましょう。
ペット不可賃貸物件でペットを飼育していると、賃貸契約が解除され、最終的には裁判上の手続きで強制退去させられる可能性もあります。
一方で、貸主の注意により猫の飼育を諦めた場合などは、契約書に「即退去」と記載されていても即時の契約解除は認められにくい傾向にあります。
裁判では、当事者間の信頼関係の破壊が問われるためです。
強制退去を実施するには訴訟の提起が必要であり、数カ月単位の時間が必要です。
契約解除された借主は、期日までに部屋を明け渡ししなければなりません。
部屋を明け渡ししない場合、貸主から訴訟を提起され、敗訴すると家財などを強制的に搬出される可能性があります。
高額な修繕費や現状回復費、執行費用などを請求される恐れがあり、早急にペット飼育可の物件を探して退去する方が得策でしょう。
ペット不可賃貸で猫を飼っていたときの退去費用の相場は、家賃の2〜3カ月分ほどです。
| 家賃 | 退去費用の目安 |
|---|---|
| 8万円 | 16万円~24万円 |
| 10万円 | 20万円~30万円 |
| 12万円 | 24万円~36万円 |
もちろん部屋の損傷具合によって金額は変動するため、一概には言えません。
しかし、ペット可物件のほとんどが敷金2〜3カ月に設定されているため、おおよそ上記のような費用相場になります。
ここからは、退去費用の項目別の相場を紹介します。
部屋の大きさによって異なりますが、クロスの張り替えの費用相場は5万円〜10万円前後です。
部屋の畳数別の費用目安は、以下の通りです。
| 部屋の畳数 | クロスの張り替え費用相場 |
|---|---|
| 6畳 | 5万円~6万8,000円 |
| 8畳 | 6万5,000円~8万4,000円 |
| 10畳 | 7万8,000円~9万6,000円 |
白いクロスのような量産品より割高なアクセントクロスを取り入れている場合は、上記の費用相場より高くなります。
フローリングの張り替えにかかる費用の相場は、おおよそ3万円〜20万円前後です。
ここでは、施工範囲に合わせた費用相場を紹介します。
| 部屋の畳数 | クロスの張り替え費用相場 |
|---|---|
| 1畳 | 3万円~6万円 |
| 4畳 | 7万円~14万円 |
| 6畳 | 8万5,000円~17万5,000円 |
| 8畳 | 10万円~20万円 |
| 10畳 | 11万5,000円~22万5,000円 |
傷のついたフローリングが少ないときは、1~2枚だけなど部分張替えをする場合もあります。
張り替えをする範囲が小さくなるほど、費用が安くなります。
柱の修繕の費用相場は、1本あたり1万円〜6万円ほどです。
傷が多い場合や大きな破損をしていると、費用はより高額となります。
基本的に、柱は交換ではなく部分補修となるケースが多いでしょう。

賃貸物件で猫を飼っていて退去費用が高額になるケースは、以下のとおりです。
ひとつずつ紹介します。
クロスや床、柱の傷が多いと、退去費用も高額になります。
基本的には「傷や汚れ」が付いている箇所が補修対象です。
猫は床や壁で爪とぎをするため、入居者の気が付かないうちに深い傷をつけてしまっている場合があります。
ペット不可であるにも関わらず契約違反を行ってペットを飼っている場合、全面交換を請求される恐れもあるでしょう。
部屋全体に猫の汚れや臭いが染みついてしまっていると、ハウスクリーニング費用が請求され、退去費用が高額となります。
猫のトイレ周辺は臭いが残るだけでなく、排泄物が飛んでクロスに付着してしまうケースもあります。
ご自身で掃除を行っても臭いは残ってしまうため、専門業者によるハウスクリーニングは必須です。
あまりにも汚れが酷い場合は、特殊清掃業者に掃除を依頼するため、高額な退去費用にもなりかねません。

原状回復ガイドラインとは、借主の賃貸物件からの退去費用について範囲や算定方法などを定めた資料です。
たとえば、室内のクリーニングは原則貸主負担であり、特約に消臭費や消毒費の負担の明記がないときは拒否できる可能性が高いでしょう。
設備の価値は、入居期間が長くなるほど減価償却によって減少し、借主の負担割合が少なくなるとされています。
減価償却とは、時間の経過によって設備の価値の減少を算定する方法です。
原状回復ガイドラインでは、設備ごとに残存価値がほぼゼロになる耐用年数が定められています。
たとえば、壁紙(クロス)の耐用年数は6年です。
入居期間が6年以上経過しているときは、猫の爪とぎで壁紙の張り替えが必要な場合でも、原則として借主は修繕費用を負担しません。
ペット不可賃貸でペットを飼育した場合の退去費用が高額になったときは、2つの対処法があります。
高額な退去費用を鵜呑みにしないために、対処法を確認しておきましょう。
退去費用の中に、本来は貸主が負担する費用が含まれているケースがあります。
明らかに入居者の故意や過失で破損した場合は、入居者が負担する原状回復の範囲に含まれます。
一方で、日常生活で自然に発生した汚れや損傷は、入居者の責任ではありません。
日差しによってフローリングやクロスが色褪せた場合や、水回りの水垢やカビは、通常の生活をしていても自然と発生する通常損耗です。
退去費用の明細に貸主の負担分が含まれていた場合、貸主や物件の管理を行っている不動産会社へ交渉してみましょう。
交渉次第では退去費用が下がる場合や、請求項目から外れる場合があります。
交渉をする際は、どの項目が貸主負担に含まれているかを証明するために以下の資料を用意して下さい。
交渉をしたいときは、まず不動産会社へ伝えてから貸主と交渉するのがよいでしょう。
貸主や管理会社から高額な退去費用を請求された場合、個人で交渉しても契約違反を主張され、不当に高額な費用を支払ってしまうケースが少なくありません。
管理会社はプロであり、貸主の利益を優先して交渉を断ってくる場合もあるでしょう。
法律の専門家である弁護士が借主の代理人として介入すると、管理会社は不当な要求を控えるケースが多いです。
契約内容から退去費用が適正かどうかについて確認するため、まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
依頼を受けた弁護士は、借主の代理人として貸主や管理会社との直接やり取りをします。
貸主や管理会社との交渉には精神的な負担がかかるため、弁護士の代行によって負担を大幅に軽減できるでしょう。
退去費用に不当な請求が含まれているときは、原状回復ガイドラインや過去の判例などに基づいて反論できます。
違反行為の程度やその他の事情によっては、退去の回避やペット可の引っ越し先が見つかるまで退去期限の猶予を交渉できる可能性もあるでしょう。
ペット不可物件で猫を飼育しているとバレてしまった場合でも、まずは落ち着いて対処していきましょう。
壁や床などの損害状況を把握し、原状回復ガイドラインの基準を確認するとおおよその負担額がわかります。
賃貸物件からの退去要求には信頼関係の著しい破壊が求められ、不当な追い出しや高額な費用請求は回避できる可能性もあります。
高額な退去費用を請求されている場合は、専門家である弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談すると、適正な退去費用の算定や交渉の代行を依頼でき、精神的な負担も大幅に軽減できます。
管理会社から強硬な退去を迫られている方、法外な修繕費を請求されてお悩みの方は、賃貸トラブルの解決実績豊富なVSG弁護士法人へご相談ください。
[注1]民法/e-gov
民法第621条(賃借人の原状回復義務)