

賃貸借契約の終了に伴い、発行される解約通知書。
しかし貸主から突然、通知書が届いて戸惑っている方もいるかもしれません。
安易に同意することや、あるいは内容をよく確認しないままにしているとトラブルの元になります。
今回は、解約通知の概要から、万が一のときに自分の権利を守る補償交渉の進め方まで解説します。
目次
貸主から届く解約通知書とは、どのようなものでしょうか。
解約と解除の違いも合わせて解説します。
解約通知書とは、住宅の賃貸借契約や携帯電話の契約、サブスクリプションサービスなど、継続的な契約を終了する際に発行される書面です。
終了期日や契約を終了させる意思を明確にし、トラブルを防ぐ重要な役割があります。
契約の時点で「解約する場合は○日前までに通知すること」と定めているケースが多く、解約する場合は契約書をよく確認しておきましょう。
解約も解除も、契約を解消する意味は同じですが、法的効力が及ぶ範囲が異なります。
解約は、今まで継続してきた契約を将来に向かって終了させるもので、これまでの契約内容は有効です。
一方で解除は、契約時に遡って契約をなかったことにします。
そのため支払った金銭は返還し、契約前のもとの状態に戻す義務が発生します。
| 解約 | 解除 | |
|---|---|---|
| 目的 | 契約を将来に向かって終了させる | 契約を遡ってなかったことにする |
| 原因 | 契約期間満了・契約者都合 | 契約違反・クーリングオフ |
| 請求 | 未払い料金の精算 | 支払った金銭の返還・原状回復 |
住宅の賃貸契約の場合、貸主から契約を解約するには相応の理由が必要です。
ここでは、契約を解約できる正当事由について解説します。
建物の老朽化は、解約の正当事由にあたると解釈されることがあります。
しかし一般的には、以下のような深刻な状態である場合に、様々な事情を考慮して総合的に判断されます。
単に築年数が経過している場合や、簡易な補強で足りると判断された場合は正当事由として認められないこともあるでしょう。
物件の売却が正当な解約事由と認められるには、ただ単に物件を売りたいからという理由では足りません。
このように切迫した事情があれば、認められる可能性もあります。
売却を理由に立ち退きや契約の解約を求める場合は、相応の立退料を提示し、合意する必要があるでしょう。
入居者の契約違反は、契約の解約対象です。
家賃滞納や又貸し、ペット不可物件での飼育などが違反になり得ます。
しかし一般的に、軽微な違反では認められません。
家賃滞納であれば、3カ月程度の滞納が解約の目安となるでしょう。
災害や損壊による修復・使用不能も契約の解約対象になります。
地震、火災、浸水などで建物が居住や使用に適さなくなった場合が該当しますが、軽微な場合は認められないこともあります。
居住不能な状態や、耐震補強が必要な重大な損壊が解約の目安となります。
親の介護や子・孫の居住、従業員寮としての使用など、貸主の親族や従業員の使用が必要な場合は、契約の解約対象になります。
曖昧な必要性では認められない場合もあるため、具体的な緊急性や親族の切実な状況が必要になると考えられます。
解約の予告期間は、個別の契約や法律により定められています。
賃貸借契約では一般的に「解約の1カ月前までに書面で通知すること」と定められているケースが多く、基本は契約内容に従います。
しかし貸主側から解約を申し出る場合は、契約満了の1年~6カ月前までに更新しない旨を通知しなければならないと法律で定められています。
申し出る際には、正当事由も必要です。
また、事業用の賃貸借契約では、解約の3~6カ月前に通知すると定める場合が一般的です。
原状回復や次のテナントを探す期間が必要とされるためですが、契約により異なるため、よく確認しましょう。

もし貸主から解約通知書が届いたら、慌てずに安易に同意しないことが大切です。
ここでは、解約通知が届いた後の流れや、注意するポイントを解説します。
解約通知書が届いたら慌てずに、内容を隅々まで確認しましょう。
確認する内容は以下のとおりです。
差出人が貸主本人や管理会社、あるいは弁護士などから届いたものかにより対応の仕方が変わります。
解約の理由は正当なものであるか、具体的な内容が書かれているかよく確認しましょう。
また、解約日(立ち退き日)まで6カ月以上の猶予があるかも重要です。
これより短いと法令違反の可能性があります。
立退料が設定されている場合は、引っ越し費用や次の契約の初期費用に充当できるだけの十分な金額であるかが判断材料になります。
解約通知書の内容を確認したら、ご自身の賃貸借契約書も確認しましょう。
契約内容に違反しているところがないかを把握します。
また、貸主に対し安易に同意をしないようにしましょう。
「わかりました」「考えます」など、同意と受け取られかねない返答をしてしまいがちですが、表現には注意が必要です。
一度同意すると後から覆すのは非常に難しくなります。
解約が正当な理由であるか判断が難しい場合や、相手の条件で退去したくない場合は早めに弁護士に相談しましょう。
立ち退く場合でも、より有益な条件で退去するには交渉も必要です。
退去に合意する場合は、合意書などを作成することをおすすめします。
弁護士に相談すれば法律に則って、自分自身の権利を守りながら交渉を進めることができるでしょう。
立ち退きの請求が正当であるか、条件が賃貸人に不利益ではないかの判断は難しいでしょう。
一度同意すると覆すことは困難で、トラブルの元になりかねません。
トラブルになる前に、解約通知が届いたら早期に弁護士に相談しましょう。
VSG弁護士法人では、立ち退き問題に関する実績豊富な弁護士が対応するので安心してお任せいただけます。