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立ち退きを要求された場合、立ち退き料を受け取ることができるケースが大半です。
立ち退き料は、移転するためにかかる費用を賃貸人が負担するという意味合いがあります。
そのため、引っ越し先となる新居と、現在の住居との家賃の差額も立ち退き料の金額に加味されます。
ただし、このルールは法律で明確に決められているわけではありません。
そのため、必ず2年間分保証されるわけではありません。
また、現在の住居と新居があまりにも違う場合にも支払われないケースもあります。
現在の住居は小さなアパートに一人暮らししているにも関わらず、新居は新築で面積が相当広いマンションに一人暮らしするなどの場合は、支払われないこともあるわけです。
居住用の賃貸物件から立ち退く場合は、移転に必要な費用を立ち退き料として受け取るのが一般的です。
立ち退き料をどのように計算するのか法律上決まっているわけではありませんが、目安となる立ち退き料を計算することは可能です。
ここからは、居住用の賃貸物件から立ち退くときの立ち退き料の目安の計算方法を紹介していきます。
退去するための費用とは、引っ越し費用や家具運送費用、梱包費用などが該当します。
ただし、家具運送費用や梱包費用などは引っ越し費用に含まれることが多いため、引っ越し費用だけが保証されると思っておいた方が良いでしょう。
そのため、引っ越し費用で10万円かかる場合は、退去するための費用として10万円立ち退き料として受け取ることができます。
新居に住むためにかかる費用は、仲介手数料や敷金、礼金です。
この費用も立ち退きがなければ発生しなくて済んだ費用のため、立ち退き料の算定に含まれます。
事例新居に住むためにかかる費用
たとえば、(1)仲介手数料10万円、(2)礼金5万円、(3)敷金10万円((4)現在の住居の敷金8万円)の場合
(1)10万円 + (2)5万円 + (3)10万円 - (4)8万円 = 17万円
この場合は、新居に住むための費用として17万円が立ち退き料に加味されることになります。
現在の住居の家賃と新居の家賃との差額も立ち退き料で保証されます。
現在の住居の家賃より新居の家賃の方が高い場合、一般的には家賃の差額を約2年間分受け取ることができるケースがほとんどです。
事例現在の住居の家賃と新居もの家賃との差額
たとえば、現在の住居の家賃が8万円で新居の家賃が10万円だったとします。
この場合、家賃の差額は2万円になるため、2年間保証の場合、2万円 × 24ヶ月(2年間) = 48万円を受け取ることができます。
立ち退きするときには、退去するための費用や新居に住むためにかかる費用、現在の住居の家賃と新居の家賃との差額が立ち退き料として支払われます。
各項目で計算した金額を合計し、どのくらいの立ち退き料になるのか計算してみましょう。
(1)退去するための費用:10万円
(2)新居に住むための費用:17万円
(3)現在の住居の家賃と新居の家賃との差額:48万円
(1)10万円 + (2)17万円 + (3)48万円 = 75万円
シミュレーションで計算した条件だと、立ち退き料は75万円ということになります。
この75万円に迷惑料や慰謝料名目で多少の金額を上乗せして立ち退き料が支払われます。
この迷惑料や慰謝料についてもルールはなく、金額は決まっていません。
賃貸人や賃借人の個々の状況を考慮し決定します。
ただし、迷惑料や慰謝料が数十万円になるというケースはあまり多くなく、数万円程度の上乗せとなるケースがほとんどです。
これは、迷惑料や慰謝料を明確に計算できる根拠がないためです。
計算できる根拠があれば、その計算を基準として請求できることもあります。
立ち退き料交渉を成功させるには、いくつかの方法があります。
ここからは立ち退き料交渉を成功させるコツを方法ごとに紹介していきます。
大家から立ち退き要求がきた場合、まず弁護士などの専門家に相談します。
立ち退き料には法律で決まった計算方法がなく、計算はあくまで目安となってしまいます。
賃借人と立ち退き料交渉するときには、正確な数字の立ち退き料で交渉をしないとうまくまとまらないこともあります。
そのため、賃借人と交渉するときには、弁護士が計算をした立ち退き料で交渉することが大切です。
また、弁護士に依頼すれば、立ち退き料交渉を本人に代行してくれます。
折衝は豊富な法律的知識や折衝技術が必要のため、専門家に任せた方が成功する可能性が高まります。
その他、賃貸人となかなかスムーズに交渉が進まず、裁判所を利用することになったとしても、立ち退き料交渉に最初から弁護士を入れておけば、その手続きもスムーズに進みます。
立ち退き料を受け取るためには、賃貸人や近隣の方に迷惑かけることなく過ごしていることが必要です。
裏を返せば、賃貸借契約違反をしている場合や、騒音トラブルなどを起こし、近隣に迷惑を掛けている場合には、立ち退き料を受け取ることができません。
このような場合は、立ち退き料を受け取るどころか強制退去させられてしまいます。
そのため、賃貸借契約違反などをしている場合は、契約違反などの状態を解消しなければなりません。
立ち退き要求が来てからでは遅いため、すぐにでもトラブルを解消するなどしておきましょう。
賃貸人から来た立ち退き要求の条件は、必ずしも正しい内容とは限りません。
立ち退き要求するのにあたり、立ち退き料を支払わなくて良いと思い込んでいる大家や、相場からかけ離れた安い立ち退き料を提示してくる大家もいます。
そのため、大家から立ち退き要求が来たとしても、すぐに返事はしないようにしましょう。
また、立ち退き料の算定に迷惑料や慰謝料の上乗せがありますが、この迷惑料などの上乗せ金額は立ち退きの正当事由により、額が変動します。
立ち退きの正当事由とは、賃借人を立ち退かすにあたり、立ち退きを求める根拠が社会一般の常識に照らし合わせ正しいと言える理由です。
たとえば、大地震が起きると建物が崩れてしまうような老朽化した建物の建替での立ち退き、賃貸人に介護が必要となり、遠方の家族が介護のために賃貸物件に住むための立ち退きなどは、正当事由が強いとされる可能性があります。
一方、賃貸物件を空き家にして売却した方が高く売れるため、あるいは老朽化しているものの耐震性がまだ高い賃貸物件を建て替えるときなどは、正当事由が弱いとされる可能性があります。
正当事由が強くなると迷惑料などは減額され、弱くなると増額される傾向があります。
また、正当事由が弱すぎると、立ち退き料を支払っても賃借人に立ち退きが認められないケースもあります。
賃貸人から立ち退き要求をされた場合、ほとんどのケースで立ち退き料を受けとることができます。
賃貸人から支払われる立ち退き料は、立ち退きをした場合にかかる費用の補填という意味があります。
賃貸人から立ち退き要求が来た場合は、立ち退き料の根拠を確認し、その金額の目安を算出してから交渉に入ると良いでしょう。
ただし、立ち退き料交渉は専門的な知識や折衝技術が必要のため、なかなか個人で行うにはハードルが高い折衝です。
賃貸人に弁護士が付いていることも想定されるため、自身で交渉するのではなく、弁護士に立ち退き料交渉を依頼する方が良い結果になる可能性が高まります。