賃貸アパートの室内がタバコのヤニで汚れた場合、退去時に原状回復が必要です。
タバコの汚れは室内全体に広がるため、退去費用が高くなるケースもあるでしょう。
なお、入居期間が長くなると自然損耗も多くなり、壁紙などを総入れ替えする場合もあります。
15年以上入居していると、「タバコの汚れの有無に関わらず、すべて同じ退去費用になるのでは?」と考える方も少なくありません。
原状回復は貸主が責任を持つ場合もあるため、退去費用の負担割合も理解しておくとよいでしょう。
今回は、タバコのヤニ汚れがあるケースについて、退去費用の負担者や、金額の計算例などをわかりやすく解説します。
目次
賃貸アパートの退去時にタバコのヤニ汚れがある場合、退去費用は基本的に借主負担です。
タバコのヤニ汚れは喫煙で発生するため、壁や天井などの汚損は借主が故意に付けたものとみなされます。
太陽光による壁紙の日焼けなど、自然損耗の原状回復は貸主負担ですが、汚損の原因が貸主の故意や過失であれば、退去費用として修繕費を請求されるでしょう。
賃貸借契約にタバコのヤニ汚れに関する特約があると、クロス張り替えなどの費用を借主が負担しなければなりません。
なお、国土交通省のガイドラインでは、設備の経過年数に応じて通常損耗や経年劣化も増えるため、入居期間が長いときは借主負担を軽くするように定めています。
カーペットの場合は6年の償却で残存価値が1円になるため、入居年数が長くなるほど借主の負担割合が低くなります。
賃貸アパートで15年タバコを吸いながら暮らした場合、借主も退去費用を負担しますが、金額の目安はありません。
退去費用は内装や設備の残存価値が基準になるため、退去時の耐用年数と入居期間から計算します。
壁紙などの耐用年数は以下のようになっており、借主が負担する退去費用は未償却部分のみです。
ユニットバスや下駄箱などは建物に固着しているため、建物の耐用年数が適用されます。
クロスの張り替え費用は1㎡あたり1,500~2,000円程度ですが、基本的には全面張り替えになるため、退去費用の相場は15万~20万円程度でしょう。
フローリングの床は部分補修が多く、タバコの焦げ跡がある場合、1万5,000~5万円程度の退去費用がかかります。
賃貸アパートの内装には自然損耗や経年劣化が生じるため、基本的に借主が退去費用を全額負担するケースはありません。
壁紙などの耐用年数は減価償却と連動しており、貸主は内装や設備の購入費を償却期間で振り分けます。
退去費用を計算する際、入居中に経費計上された償却部分は貸主の負担です。
では、6年間住んだアパートを退去する際、タバコのヤニ汚れがあったときの退去費用がいくらになるか、具体的な計算例をみていきましょう。
6年間住んだアパートにタバコのヤニ汚れがある場合、退去費用は貸主と借主で負担するため、それぞれの負担額を以下のように計算します。
【条件】
借主の負担額は「退去費用×(耐用年数-入居期間)÷耐用年数」と計算するため、以下の結果になります。
耐用年数を経過した壁紙の残存価値は1円ですが、貸主からの請求はないため、借主の負担額は0円です。
貸主の負担額は「退去費用×入居期間÷耐用年数」となるため、以下のように計算します。
アパートに15年以上住んでいれば、退去費用の借主負担はないでしょう。
賃貸借契約の特約にタバコのヤニ汚れについて定めがある場合、入居期間に関係なく、壁紙などの張り替え費用を借主が負担しなければなりません。、
以下の要件を満たした特約は有効になるため、賃貸借契約に従う必要があります。
特約によって借主が一方的に不利益を被るなど、契約内容に問題があるときは弁護士に相談してみましょう。
アパートに15年住むと、借主が付けた汚れや傷が増えてしまい、退去費用が高くなりがちです。
前述したように、故意や過失による汚れがあった場合、借主の責任で原状回復しなければなりません。
タバコのヤニ汚れも例外ではないため、15年以上住んだアパートの退去費用を抑えたいときは、以下の方法を実践してみましょう。
経年劣化した部分の原状回復は貸主負担になるため、アパートを退去するときは、以下の内装や設備を確認しましょう。
【フローリングの床】
【風呂やトイレなど】
【壁や天井のクロス】
日頃から小まめに掃除すると、入居時からあった傷や経年劣化による汚損がよくわかります。
故意や過失ではない汚れがあるときは、写真を撮っておくとよいでしょう。
アパートでタバコを吸うときは、必ず換気できる場所を選ぶようおすすめします。
ベランダで喫煙すると上層階の入居者に健康被害が及ぶ可能性もあるため、換気扇のあるキッチンなどが適しています。
なお、1階の部屋は換気扇の排気が道路に漏れてしまい、近隣住民や歩行者の苦情に発展する恐れがあります。
場合によっては損害賠償請求されるため、他人に迷惑がかからない場所を探しておきましょう。
15年以上住んだアパートにタバコのヤニ汚れがあっても、退去費用の負担割合はそれほど高くないでしょう。
耐用年数を経過した内装はほとんど残存価値がなく、経年劣化した部分の原状回復費は家賃に含まれています。
なお、経年劣化かどうかの判断が難しいときや、特約を確認せずに賃貸借契約を結んだ場合、貸主とトラブルになるケースが多いため、要注意です。
納得できない退去費用の請求など、賃貸借契約をめぐるトラブルに困ったときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談をご利用ください。