賃貸物件に自分でエアコンを取り付けた場合、退去時には壁のビス穴を塞ぐ必要があります。
築年数の古い物件はエアコン設置が想定されていないため、室外機用の配管穴を開けている場合もあるでしょう。
退去時の原状回復義務は貸主・借主の双方にありますが、賃貸借契約に明記されていなかった場合、ビス穴の修繕費がトラブルの原因になってしまいます。
借主が修繕費を負担する状況であれば、原状回復工事の費用も把握しておかなければなりません。
そこで今回は、賃貸物件にエアコン用のビス穴があるケースについて、原状回復義務や工事費用の相場などをわかりやすく解説します。
目次
賃貸物件にエアコンのビス穴(室内機を固定するネジ穴)を開けた場合、通常使用の範囲であれば貸主の責任で原状回復します。
常識的な生活において発生する汚れや傷、へこみなどは通常使用とみなされるため、借主に原状回復義務はありません。
エアコンを取り外すと、設置部分の跡だけ壁紙の色が変わっている場合もありますが、喫煙などの影響がなければクロス張替えは貸主負担です。
なお、原状回復義務は賃貸借契約書の内容に従いますが、エアコンのビス穴について明記がなかった場合、貸主が借主へ修繕費を全額請求するケースもあります。
賃貸借契約にビス穴修繕の記載がなく、退去時の原状回復でトラブルになったときは、以下のガイドラインも参考にしてください。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃貸物件の経年劣化や自然損耗について、借主に原状回復義務がない旨を定めています。
ガイドラインのポイントは以下のようになっており、経年劣化や原状回復などの考え方も示されています。
エアコン用に小さなビス穴を開けている場合、常識的な使用方法と考えられるため、借主に原状回復義務はありません。
ただし、ビス穴の数や大きさによっては、通常使用の範囲を超えてしまいます。
エアコンのビス穴が借主の故意や過失、または注意義務違反とみなされた場合は、原状回復義務を負わなければならないでしょう。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン・再改訂版(国土交通省)
賃貸物件にエアコンのビス穴を開けている場合、原状回復工事には以下の費用がかかります。
賃貸物件の壁は1cm程度の厚みですが、下地を含めると2cm以上になるでしょう。
ビスの穴は径3~4mm程度を5本以上開けるため、修繕費は3万円以上かかるかもしれません。
貸主が内装工事業者を指定しており、一般的な相場よりも高かったときは、自分で業者を選べるかどうか確認してみましょう。
エアコンのビス穴が通常使用の範囲を超えている場合、借主の責任で原状回復しなければなりません。
賃貸物件の退去時には引っ越し代や新居用の敷金がかかるため、DIYでビス穴を塞ぐと、修繕費の負担が軽くなります。
自分でエアコンのビス穴を塞ぐ場合は、以下の方法を参考にしてください。
エアコンのビス穴が数ミリ程度であれば、市販の壁紙補修剤(パテ)で塞いでみましょう。
作業手順は以下のようになり、紙粘土やティッシュペーパーを使うと穴の奥までしっかり補修できます。
ビス穴をティッシュペーパーで塞ぐときは、内部で固まるように瞬間接着剤を練り込んでください。
壁紙補修剤は700~1,500円程度が多く、ビス穴が5つ程度であれば1本で十分です。
なお、壁紙と補修剤の色が異なると、ビス穴を塞いでもかなり目立ちます。
同一色の壁紙補修剤がないときは、表面仕上げ用の塗料も購入しておきましょう。
エアコンのビス穴が中程度になると、壁穴補修用のコーキング剤が必要です。
ビス穴を塞ぐ手順は以下のようになるため、手芸用の綿も準備しておきましょう。
壁穴補修用のコーキング剤は400~500円程度ですが、白い壁紙であれば、水回り用のコーキング剤を流用できます。
ビス穴が大きくなると表面のならしが難しくなるため、慎重に作業を進めてください。
エアコンのビス穴が大きいときは、リペアシートを使って以下の手順で塞ぎます。
市販の補修キットを購入すると、リペアシートやパテなどがセットになっており、値段は2,000円程度です。
エアコン用のビス穴はあまり大きくありませんが、家具などを壁に当てて「こぶしサイズ」の穴が開いたときは、リペアシートで塞いでみましょう。
石膏ボードの大きな穴を塞ぐときは、以下のように補修用石膏ボードを使います。
補修用の石膏ボードをホームセンターで購入する際は、その場で必要なサイズにカットしてもらいましょう。
のこぎりで切ると大量の粉が出るため、自分でカットするときはカッターナイフを使ってください。
エアコン用のビス穴は程度によっては原状回復が必要になるため、退去時には賃貸借契約書を確認してください。
原状回復の内容が曖昧になっていると、通常使用の範囲でもビス穴の修繕費を請求される場合があります。
賃貸物件を退去する際、一般的にはビス穴以外の原状回復も発生するため、天井クロスなどの修繕費も借主負担になる恐れがあるでしょう。
退去時の原状回復義務が不明確な場合や、貸主とトラブルになったときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談をご利用ください。