不動産売買において、何らかの特別な事情により合意解除を検討するケースは多いかもしれません。
実際、不動産売買契約を締結したあとでも、売主と買主の合意によって契約を解除することは可能です。
本記事では、具体的にどのような場合において不動産の合意解約が行われるのか、具体例を挙げながら解説していきます。
また、合意解除の詳しい手続きの流れや、押さえておくべき注意点などについても解説していくので、合意解除を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
そもそも、不動産売買における合意解除とは、どのようなものなのでしょうか。
合意解除とは、売主と買主双方の合意に基づき、契約の効力を遡って消滅させることをいいます。
ここで重要なのは、お互いが納得した上で契約前の状態に戻すという点です。
つまり、解除を求める意思が、売主と買主のどちらか一方によるものである場合は、合意解除ではありません。
合意解除を理解しようとするとき、合意解除ではない契約の解除や解約と混同してしまう場合があります。
合意解除ではない契約の解除や解約は、売主か買主のどちらかによる一方的な意思表示により行われるものです。
従って、解除の意思を一方的に伝えることにより契約の解除や解約が行われ、相手方の同意をともないません。
これに対し合意解除の場合は、一方的な解除の意思表示だけで行われるのではなく、売主と買主との間で協議し、双方の合意により解除が行われることになります。
相手方との合意により解除が行われることが、合意解除ではない契約の解除との違いです。
不動産売買の契約において、合意解除は実際にどのようなケースで行われるのでしょうか。
ここでは、不動産売買の合意解除が行われる具体例を3つ挙げて解説していきます。
不動産売買では、婚約の破断によって合意解除が行われる場合があります。
たとえば、婚約中のカップルが結婚後の新居として住宅を購入する契約を結んだものの、何らかの事情により婚約が破断となった場合です。
契約の締結後であっても、売主に破断となった事情を伝えた上で売主が解除に同意すれば、合意解除が行われることになります。
不動産売買の契約を結ぶことに関して親からの反対を受け、合意解除が行われる場合があります。
本人の自己判断により売買契約を結んだものの、あとから親に猛反対されてしまったために合意解除する事例もあります。このような場合も、売主が解除に同意すれば、合意解除は可能です。
契約の相手方に迷惑をかけないためにも、親からの反対を受ける可能性が予想できる場合は、なるべく契約前に親ときちんと話しておいたほうがよいでしょう。
不動産売買契約において、買主が負担しなければならない費用の一部を契約後に認識し、合意解除となる事例もあります。
たとえば、戸建て住宅の売買において次のようなことが予測されます。
住宅や土地そのものの費用は把握していたものの、地盤改良などの土地整備が必要なことが契約後に分かり、想定していた金額を大幅に超える費用が必要となってしまった場合などです。
このような場合も、売主が解除に同意すれば、合意解除は可能です。
住宅の購入に際しては、必要経費をすべて把握して、予算と合致するかをよく検討しましょう。
ここでは、実際に合意解除を行う場合の手続きの流れについて、解説していきます。
合意解除するためにはまず、契約の相手方に対して解除の意思を伝え、解除に合意してもらうことから始めましょう。
双方が納得した上で合意解除を進めることが決まったら、契約解除合意書といわれる書面を作成します。
口頭だけではなく、書面にて合意解除することをきちんと記録しておくことで、後のトラブルを防ぐ効果があります。
無事に契約解除合意書を取り交わしたら、最後に必要な登記手続きを行わなければなりません。
すでに不動産の所有権移転登記がなされた後に合意解除する場合は、もう一度登記簿上の所有権を売主へと戻す必要があります。
登記の内容を正しく戻すことは非常に重要な手続きなので、確実に行いましょう。
不動産の合意解除を行う場合の注意点は、2つあります。
不動産売買契約を合意解除する場合、取得税の課税についてよく確認しておくことが必要です。
合意解除の場合でも、法律関係は、契約前に遡ってすべてが元通りになるというのが原則ですが、不動産取得税については課税されてしまうことがあります。
不動産取得税の課税上では、一度買主に移行した不動産の所有権が、その後に合意解除によってまた売主に戻ったという状況をとらえて、売主は改めて不動産を取得したとみなして、取得税が課税される場合があるようです。
ただし、このような不動産取得税の課税は、合意解除ではない解除の場合にも当然に行われているわけではないようです。
詳しくは、不動産取得税の課税を行う自治体などに照会してみてください。
合意解除する際は、口頭ではなく必ず書面を交わしておきましょう。
合意解除の詳しい内容を書面に残さず進めてしまうと、あとになって「言った」「言わない」などのトラブルが起こるリスクが高まります。
後のトラブルを未然に防ぐためにも、合意解除する際はきちんと契約解除合意書を作成し、お互いの署名捺印をもって行うことが大切です。
不動産売買契約において合意解除を検討する際は、「合意解除のためには売主の合意が必要である」ということをきちんと理解しておくことが重要です。
また、本記事で解説した手続きの流れや、事前に押さえておくべき注意点についても理解を深めておけば、スムーズに合意解除を進められるはずです。
これから不動産の合意解除を行おうと考えている人は、ぜひ本記事で解説した内容を参考にしてみてください。