賃貸のアパートやマンションなどを借りる場合、貸主と借主で賃貸契約書(賃貸借契約書)を取り交わします。
賃貸契約書には物件情報や家賃、退去に関するルールなどの記載があり、貸主と借主の印鑑も押印されているため、原本は一部しかありません。
契約更新などの規定も賃貸契約書に記載されているため、紛失しないように注意しましょう。
今回は、賃貸契約書をなくしたときの影響や、再発行できるかどうかをわかりやすく解説します。
目次
賃貸借契約書とは、アパートやマンションなどの賃貸住宅を借りるときに、貸主と借主の契約関係を証明する書類です。
賃貸借契約を交わした借主は、後日賃貸住宅の引き渡しを受けた対価として毎月所定の賃料を貸主に支払います。
賃貸借契約書には、主に下記の項目が記載されています。
それぞれの項目の内容について、見ていきましょう。
賃貸契約する物件情報とは、物件の所在地や物件名、部屋番号、間取り、広さ、マンションやアパートなどの物件の種類、構造などです。
契約書を渡されたときは、契約する予定の物件と相違がないかを確認しましょう。
賃貸借契約書には、毎月の賃料と共益費、敷金などの金額や支払期限、支払方法などが記載されています。
また、敷地内駐車場や駐輪場などがある場合、付属施設の使用料も記載されているため、齟齬が無いか確認しておきましょう。
貸主と管理会社、借主と同居人に関する情報とは、貸主の住所・氏名・電話番号、管理会社の所在地と電話番号、借主の住所・氏名・電話番号などです。
ほとんどの場合、同居家族の氏名も記載されます。
賃貸住宅に居住するときに利用できる付帯設備とは、エアコンやガスコンロなどの貸主から提供される機器です。
また、残置物とは、テーブルやソファー、洗濯機など前入居者が居室内に残していった家具や家電などです。
なお、残置物は貸主や管理会社に相談すれば、入居前に撤去できます。
ほとんどの普通借家は、契約期間は2年間と定められています。
あらかじめ説明された契約期間と相違がないかを確認しておきましょう。
また、契約更新時の更新料の設定も記載されています。
退去するときは、前もって借主から管理会社へ退去する旨の連絡が必要です。
民法上の解約予告期間は3カ月ですが、一般的には退去日の1カ月までに管理会社等へ解約予告をすると定められています。
また、途中解約する場合に、違約金が発生するケースがあります。
違約金の発生するケースや金額などを前もって確認しておきましょう。
退去後の原状回復と敷金精算については、賃貸住宅でトラブルになりやすい事項の一つです。
国土交通省から、退去時の原状回復の負担に関するガイドラインが公表されています。
ガイドラインでは、フローリングやクロスの経年劣化や使用による損耗は原則貸主負担と定められています。
トラブルにならないように、契約書の原状回復と敷金清算される金額やタイミングについてチェックしましょう。
(参照元:国土交通省 原状回復回復をめぐるトラブルとガイドライン)
重要事項説明書とは、賃貸契約について特に重要な部分を記載した書面です。
具体的には敷金や礼金、原状回復のルールなどが記載されています。
重要事項説明書は物件を借りるかどうかの判断材料になるため、借主の署名・押印欄しか設けられていません。
賃貸契約書は貸主・借主のトラブルを防止する目的があり、双方の署名・押印によって効力が発生します。
賃貸契約書をなくした場合、基本的には再発行できません。
貸主と借主は同一内容の賃貸契約書を取り交わすため、どちらか一方が紛失すると、残りの契約書が正当かどうか、判断できなくなります。
仮に貸主側が更新期間などを無断で変更していた場合、自分の契約書がなければ改ざんを証明できないため、トラブルの原因になってしまうでしょう。
賃貸借契約書をなくしたときには、原則契約を仲介した不動産会社か貸主に、コピーを依頼します。
賃貸借契約時の契約書は2部作成し、貸主と借主それぞれが原本を保管するケースがほとんどです。
借主が賃貸借契約書を紛失してしまっても、貸主が同じ契約書を保管しているため、それをコピーしてもらって所持すれば全く問題ありません。
また、貸主への依頼が難しい場合、不動産会社側で保管している賃貸借契約書(複写)をコピーしてもらいましょう。
不動産会社には、賃貸借契約書を5年間保管する義務があり、不動産会社にコピーが残っているはずです。
賃貸契約書を紛失しても、日常生活で困る、契約関係で不利になるといった実害はありません。
一方で、紛失して内容がわからなくなり、以下のように困るケースもあります。
賃貸借契約書には、居住のルールや特約事項などについて記載されています。
入居者同士でこのルールや特約事項をめぐってトラブルになっている場合には、内容を確認する必要があります。
たとえば、楽器の演奏やテレビなどの音が問題になっている場合を考えてみましょう。
居住ルールの中に楽器の演奏時間や音量に関する注意事項があれば、管理会社などにクレームを言えます。
賃貸借契約書がなく、居住に関するルールについて曖昧な状態だと、注意喚起が難しくなるでしょう。
次に、貸主との間で金銭的なトラブルが起きたときです。
賃貸借契約書には、賃料や共益費などの費用について記載があります。
たとえば、契約更新時の家賃の値上げでトラブルが起きたときに、賃貸借契約書がなければ証拠不十分として、交渉を有利に進められない恐れがあります。
不動産会社に賃貸借契約書のコピー・再発行を断られてしまったら、各都道府県の窓口に相談しましょう。
相談窓口は、都道府県ごとに異なります。
東京都の相談窓口は、東京都都市整備局住宅政策推進部の不動産業課です。
他にも、全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会、国民生活センターや都道府県の消費生活相談窓口があります。
困った状況に陥っても、さまざまな業界団体に相談して解決を目指しましょう。
賃貸契約書はクリアファイルなどに入れ、すぐに取り出せる場所に保管してください。
他の書類と一緒にすると、保管場所がわかりにくくなり、誤って廃棄する恐れがあります。
契約関係の重要書類を分別しておけば、誤って廃棄するリスクを軽減できます。
クリアファイルにも「廃棄に注意」などの文字を書き込んでおくとよいでしょう。
賃貸契約書を廃棄する場合、退去から10年後のタイミングがよいでしょう。
壁の汚れや床の凹みなどを理由に損害賠償請求された場合でも、貸主が事実を認識したタイミングから5年または10年経過すると、請求権が時効を迎えます。
不測の事態に備え、すでに不要となった賃貸契約書でも、廃棄のタイミングは10年後をおすすめします。
賃貸契約書は再発行が難しいため、紛失やミスによる廃棄には十分な注意が必要です。
貸主と借主のトラブルは退去後に発生するケースもあるため、転居した後でもしばらくの間は賃貸契約書を保管しておくとよいでしょう。
入居中に隣人とのトラブルが発生し、騒音被害などを裁判で争う際も、賃貸契約書が必要です。
賃貸契約に関する悩みや、解決が難しい問題があるときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談を活用してください。