
店舗の立ち退き料は法定の算定式があるわけではありません。
一般に「賃料の2〜3年分」が目安とされますが、造作・原状回復・移転や広告、
営業補償などの内訳と、業種・商圏・工期等により
大きく幅が出ます。
本ページは店舗テナントに特化し、金額の考え方(内訳)と交渉の進め方・準備チェックを噛み砕いて解説します。住居・事務所も含む相場の全体像や「正当事由」などの総論は、立ち退き料の相場(総合ガイド)をご覧ください。
なお、税金の扱いは要点のみ(一般に)。詳細はこちらの記事を確認の上、まずは見積・証憑を揃え、金額+スケジュールをセットで検討しましょう。
この記事でわかること
- 店舗の立ち退き料の「目安と内訳」(賃料の2〜3年分目安・幅)
- 店舗特有の営業補償の考え方(休業期間・粗利・固定費等)
- 交渉の流れと準備チェック(見積・証拠・スケジュール)
結論(店舗テナントの要点)
- 店舗の立ち退き料は法定の算定式はありません(一般に)。ただし賃料の2〜3年分が目安として語られることが多く、造作・原状回復・移転費・広告費・休業補償等を積み上げて協議します。
- 「営業補償」は売上ではなく粗利や固定費を基礎に期間で検討されることが多く、業種・商圏の代替性などで幅が生じます(事案により)。
- 交渉は見積(複数)・証憑・数値根拠の準備が要。説明文書→事情聴取→金額協議→合意書が基本線です。
店舗の立ち退き料の決まり方(店舗に特化)
立ち退き料は法律で金額が決まっているわけではなく、個別事情(建替えの必要性、契約内容、テナントの損失範囲など)を総合考慮して合意形成します(原則)。
「正当事由」の基礎や一般論は総合解説ページも参照してください:立ち退き料の相場はどのくらい?(総合) / 正当事由とは
店舗の立ち退き料の相場(目安)
店舗は、改装・造作・集客の再構築コストが高くなりやすいため、賃料の2〜3年分程度が目安とされることがあります(一般に/幅)。
住居・事務所の相場比較は総合ページへ誘導し、本ページは店舗の内訳にフォーカスします。
内訳の考え方(店舗特有の費目の例)
- 原状回復・スケルトン返し:解体・廃棄・産廃処理。
- 造作買取 or 撤去費:厨房機器・ショーケース・間仕切り等。
- 移転関連費:仲介手数料、敷金・保証金差額、引越し、内外装工事、看板・サイン。
- 広告・再オープン費:チラシ・WEB・予約/口コミ移行・オープン販促。
- 在庫・仕入れロス:廃棄・値引販売等の損失。
- 休業補償(営業補償):休業期間×(粗利−変動費)+固定費などの考え方が用いられることがあります(一般に/式はあくまで目安)。
- 商圏・人材の再構築コスト:アクセス悪化による売上低下リスク、人員再配置費用など。
交渉の流れと準備
- 説明文書の受領・理由確認(建替え・自用・再開発など)。
- 自己の事情整理(売上データ、粗利、固定費、移転可能時期)。
- 見積の取得:内外装・移転・広告・産廃は相見積。
- 立ち退き料の協議(内訳とスケジュールをセットで提示)。
- 合意書の確認(金額・支払期日・明渡猶予・原状回復範囲)。
準備チェックリスト
- 過去12〜24カ月の売上・粗利推移/家賃・人件費など固定費
- 在庫一覧・機器リスト(購入時期・帳簿価額)
- 移転先候補の相場感(賃料・保証金・内装費)
- 工期見込みと休業日数の算定根拠
税金の扱い(要点のみ)
立ち退き料は所得税・法人税の対象となる場合があります。
また、移転補償・営業補償は消費税の課税対象外となる取扱いが一般的ですが、賃借権の譲渡対価等は課税となる場合があります(一般に)。
詳細な判断・申告は税理士に確認してください。
よくある質問(店舗版)
居抜き譲渡と造作買取はどう違う?
居抜きは第三者へ設備等を一括譲渡するもので、賃貸人の承諾や賃貸借の扱いに注意が必要です。造作買取は賃貸人側が設備等を買い取るイメージで、いずれも価格は評価・交渉次第です。
「スケルトン返し」を求められたが応じるべき?
契約条項と建物の状態を確認し、費用見積と明渡時期を含めて総額で協議します。原状回復の範囲は事案により大きく変わります。
賃料滞納があると立ち退き料は下がる?
滞納等があると交渉上の不利要素になり得ます。まずは滞納清算計画を整理し、退去条件と併せて協議しましょう。
まとめ
店舗の立ち退き料は、法律で金額が決まっているわけではなく、原状回復・造作(買取/撤去)・移転費・広告費・在庫ロス・休業(営業)補償などを積み上げて協議するのが一般です
目安としては賃料の2〜3年分と語られることもありますが、業種・商圏・工期・契約条項によって幅が生じます(一般に/事案により)。
交渉では、過去の売上・粗利や固定費、相見積、機器リスト、工期見込みといった数値根拠と証拠を揃え、金額とスケジュールをセットで提示することが近道です。
住居・事務所向けの一般論は総合ガイドに委ね、本ページのポイントはあくまで“店舗特有の内訳と準備”。
税務の詳細判断は税理士の領域ですが、合意書の条項整理・説明文書の評価・交渉/調停対応は弁護士が伴走できます。迷ったら早期にご相談いただき、感情的対立や手戻りを避けつつ、実務的に妥当な着地点を一緒に設計しましょう。