内容を確認せずに内容証明郵便の受取を拒否したいと考える人も多いですが、トラブルに発展しないのか心配になる方もいらっしゃるでしょう。
受取を拒否したり、無視したりすると、内容次第では法的措置が取られる可能性も高いです。
そのため、事前に内容証明郵便が届いた時の対処方法を理解しておく必要があります。
本記事では、内容証明郵便を受取拒否したらどうなるのか、届いたときの対処方法、必ず返答しなければならないケースを紹介します。
この記事をお読みいただければ、内容証明郵便の受取を拒否した場合と対処方法を理解できます。
目次
内容証明郵便は、文書の内容や郵送したタイミング、差出人・受取人について謄本を作成して記録し、証明する郵便局のサービスです。
上記のサービスを使用して送付された郵便物を指す場合もあります。
内容証明郵便は、相手が郵便物を受け取った事実を証明できるため、法的手続きにおいては裁判での証拠として送るケースがあります。
受け取った相手が訴訟内容について知らないと主張しても、内容証明郵便で送っていれば、主張を覆せるでしょう。
また、従業員と連絡が取れないときや従業員に解雇通知するときなど、契約の解除を行う場合にも用いられます。
さらに、相続関連や立ち退き請求など、相手方に重要な文章を送る場合などにも利用できます。
内容証明郵便の効力は、「法的手段における証拠になる」点です。
「誰が」「誰あてに」「いつ」「どのような内容で」送ったのかが証明でき、受取人が受け取った、受け取り拒否した日も証明できます。
内容証明郵便はさまざまなケースで利用されますが、法的措置を行う場合、裁判で争う際の証拠のひとつにもなります。
自分の意思を相手に伝えたという事実を証明するために用いられるケースが多いです。
ただし、内容証明郵便は郵便内容や発送簿、受け取った日付を郵便局が証明するサービスです。
内容の正確性などを証明する書類ではありません。
例えば、「不動産の賃料未払いを催促する」内容であっても、無視したからすぐに退去しなければいけないわけではありません。
内容証明郵便は送付した年月日・送付した内容・送付した事実を証明する書類であるため、法的手段に訴える前段階として利用されます。
内容証明郵便が届いたときには驚いて、受け取り拒否をしてしまう方もいるかもしれません。
受取拒否すると、次のような結果になります。
それぞれ詳しく解説します。
内容証明郵便を受け取り拒否した場合は、最終的に送付名義人に返送されます。
また、不在時に内容証明郵便が届くと、配達員がポストに不在者連絡票を投函します。
不在者連絡票を無視しても、郵便局に約1週間保管されます。
送付名義人に返送される前に、不在者連絡票が入っていたら再配達の手配をしましょう。
なお、送付名義人に返送されるときに、返送された理由が通知されます。
郵便局によって返送される主な理由は、次の通りです。
内容証明郵便を受取拒否しても、内容は受取人に伝わったと推定される場合があります。
伝わったとされる可能性が高いケースは、次の通りです。
一方で、上記に当てはまらないケースは、内容が伝わったと推定されにくいでしょう。
たとえば、病気やケガで内容証明郵便を受け取れない状態や、音信不通だった親族から内容証明郵便が急に届くケースです。
内容証明郵便を受取拒否すると、拒否の意思が相手側に伝わってしまい、心証を悪くします。
内容証明郵便は法的手段前に任意で解決したい意思の現れでもあるため、受け取って対応しましょう。
早めに対応すれば、訴えられる前にトラブルを解決できる可能性があります。
内容証明郵便が届いたら、以下を行いましょう。
それぞれ詳しく解説します。
内容証明郵便の差出人に心当たりがないとしても、内容証明郵便が届いたら必ず内容を確認しましょう。
トラブルの相手先が個人名ではなく、法人名や弁護士名で送ってくる場合など、本来の差出人がわからないケースもあります。
しかし、本来の差出人がわからないからといって受け取りを拒否、または内容確認を怠ると、自分の立場が不利になります。
内容証明郵便が届いたときの対応方法がわからない場合、もっとも有効な方法は、「弁護士に相談する」です。
内容証明郵便に不当な内容が記載されていれば、すぐに対応しなければなりません。
しかし、法律の知識がないまま対応すると、ご自身の立場が不利になる恐れがあります。
そのため、トラブルにならないためにも内容証明郵便が届いたら、対応方法を弁護士と相談しましょう。
内容証明郵便が届いたときには、以下の行動をしてはいけません。
やってはいけない理由を解説します。
内容証明郵便の内容は、間違っている可能性があります。
近年、内容証明郵便が架空請求などの犯罪に利用されるケースも少なくありません。
そのため、内容証明郵便の内容に従うかどうかは熟慮しましょう。
どのように対応したらいいのか判断できない場合は、弁護士に相談して対応方法を相談してください。
内容証明郵便が届いたときには感情的になりがちですが、冷静に対応しましょう。
感情的に対応すると、相手側の心証を悪くします。
内容証明郵便が来るときには相手側とトラブルになっている可能性が高く、感情的に話すと揉めごとの規模が大きくなります。
内容証明郵便が届く時点では裁判になっていないため、訴えられる前に冷静に対応し、解決しましょう。
弁護士名義で内容証明郵便が届いたときには、相手方が裁判を見据えた動きをすでにしている可能性があります。
そのため、弁護士名で来た内容証明郵便を無視するのはよくありません。
弁護士名で内容証明郵便が来た場合は、受け取った側も弁護士に相談をして対応しましょう。
内容証明郵便に以下の内容が記載されていた場合、必ず返答しなければなりません。
それぞれのケースを詳しく解説します。
契約の申込・解除に関する内容証明郵便が届いた場合、必ず返答しましょう。
遠隔地の事業者から契約の申込に関する内容証明郵便が届いた場合、期間内に承諾しないと、申込は無効となります(商法508条)。
また、商人が日常的に取り扱っている商品の取引申し込みに関する内容証明郵便が届いたとしましょう。
その場合、無視すると申込を承諾したと扱われ、取引が成立してしまいます(商法509条)。
契約の申込に関する内容証明郵便を無視すると、取引先との契約が進まなかったり、契約が履行されたりするため注意が必要です。
一方、契約の解除に関する内容証明郵便が届いた場合に無視すると、受取人は契約解除ができなくなります(民法547条)。
受取人が内容証明郵便を無視すると、お互い契約の解除ができなくなり、トラブルになる可能性もあります。
被相続人(亡くなった方)が残した遺言内容に関して、他の相続人から遺言の承認を行うのかを内容証明郵便で確認される場合があります。
相続財産の中には、負債なども含まれており、相続した方は被相続人に代わって返済していかなければいけません。
もちろん負債は相続したくないと考える方もいらっしゃるでしょう。
相続が発生した場合、遺言通りに遺産を継承するのか、相続に関する権利を放棄するのかを決める必要があります。
相続放棄は相続が発生した日から3か月以内までと期間が定められているため、不透明なままでは、財産の分け方を決められません。
また、3か月が過ぎた場合は、相続を承諾したとみなされるため、事前に内容証明郵便で遺言の承認と相続放棄について確認されます。
遺言の承認に関する内容証明郵便を無視すると、相続放棄ができない上、受取人の相続が不利になる場合もあるため注意が必要です。
無権代理は、代理権を得ていない人が受取人名義で契約しても無効になります。
代理権を得ている人であれば、契約は履行され、成立します。
しかし、相手方にとっては代理権を得ているのかはわからないケースも多いです。
そのため、受取人に対して内容証明郵便で追認請求される場合があります(民法113条1項)。
無権代理の追認請求に関する内容証明郵便を無視すると、受取人が追認したとみなされます。
ただし、以下の場合は上記の限りではありません(民法第117条2項各号)。
つまり、代理人が悪意のある人や不注意で知らなかった、未成年者などの場合は、内容証明郵便を無視しても追認とみなされません。
抵当権とは、金融機関などから融資を受ける場合、不動産を担保に設定する権利を指します。
抵当権は、万が一ローンの返済が滞ってしまった場合、金融機関は不動産を差し押さえできます。
ローンを完済しても、抵当権が設定されたままとなり、抹消登記しなければ融資の担保に設定できません。(二番抵当を除く)
不動産の売買を行う際、売主が抵当権の抹消登記を完了していないままのケースも見受けられます。
そのため、内容証明郵便で買主から抵当権の抹消登記を依頼される場合があります。
債務が完済しているにもかからわず、内容証明郵便を無視して抵当権の抹消登記を行わないと、売買契約が成立しない恐れもあります。
一般的には、仲介する不動産会社が抵当権の抹消登記の手続きのサポートを行ってくます。
ただし、残債がある不動産の場合、売買代金で完済して抹消登記を行うケースもあります。
本章では、内容証明郵便を送る側から見た、内容証明郵便を受取拒否されたときの対処法を解説します。
自分自身の名義で内容証明郵便を送付した場合、弁護士名や弁護士事務所名で内容証明郵便を再送付しましょう。
個人名の内容証明郵便だと、相手側は「拒否しても何も起こらないだろう」と楽観的な感覚で対応するケースがあります。
しかし、弁護士名の内容証明郵便の場合「無視すると裁判になるのではないか」と心配になり、すぐに対応する可能性が少なくありません。
相手方の勤務先で送れば、受け取る可能性が高くなります。
勤務先であれば、内容を知らない受付や総務などが受け取るケースがあります。
また、相手方も周りの目を気にして、無視できないでしょう。
内容証明郵便の受取拒否をされたら、早々に訴訟を起こすのも良いでしょう。
内容証明郵便を何回も出していると、時間だけが経過してしまいます。
慰謝料や借金回収を目的として内容証明郵便を送付している場合、時間が経過すると消滅時効を迎える恐れもあります。
消滅時効は、原則5年、もしくは債権者が権利を行使できるときから10年のいずれか早い方のタイミングです。
内容証明郵便はただの郵便物であり、強制力はありません。
そのため、裁判のように強制執行できる手段の移行は、有効と言えます。
内容証明郵便は郵送物に過ぎないため、受取拒否ができます。
しかし、内容証明郵便を受取拒否する影響は大きく、場合によっては受取手の立場を悪くします。
不利な立場にならないよう、内容証明郵便が届いたらすぐに内容を確認しましょう。
特に弁護士名で内容証明郵便が届いたときは、送付人が裁判を前提に送付してきている可能性があるため、注意が必要です。
弁護士名で内容証明郵便が届いたら内容を確認し、すぐに弁護士事務所に相談してください。
弁護士に相談するときには、内容証明郵便と、記載された内容に関連する書類などを持参します。
多くの情報を弁護士に渡せれば、相手側との交渉を早くスムーズに進められるでしょう。