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立ち退き料の決め方と費用内訳【相場や過去の判例も紹介】

立ち退き料はどう決める?過去の判例から相場や費用内訳を解説

この記事でわかること

  • 立ち退き料の決め方がわかる
  • 立ち退き料に関する判例がわかる
  • 立ち退き料をスムーズに決めるコツがわかる

立ち退き料について、法律で金額が定められていません。

立ち退きをさせるためには、状況に応じて貸主が立ち退き料をいくら支払うか考えて、賃借人に提示する必要があります。

法律に決められた計算方法がないなら、どのように計算すればよいのかわからないという方も多いかと思います。

今回は、立ち退き料を計算する方法や、裁判で立ち退き料の支払いをどのように決めているのかを解説します。

立ち退き料の決め方に法的な決まりはない

立ち退き料は法律で支払わないといけないと決まっておらず、賃借人の退去時に支払わなければならないものではありません

さらに、支払わなければならない金額のルールも決まっていません。

貸主が立ち退きを請求する理由の正当性と、賃借人が立ち退きするときにどれくらいの負担がかかるのかを総合的に考えます。

賃貸人が立ち退きを請求する理由によって、賃借人にとって立ち退きが負担と考えられる場合は、両者のバランスを取るため、立ち退き料を支払うということになります。

つまり、立ち退き料は賃借人を退去させる賃貸人の事情の正当性を補完する料金ということです。

立ち退き料の判例

立ち退き料の判例
立ち退き料に関しての判例が数多く存在しています。

立ち退きが認められた例や、逆に認められなかった例、立ち退き料が増額になった例などを、不動産物件の種別ごとに紹介します。

一戸建ての立ち退き判例

海外転勤が終了したことによる、貸主と家族居住のための立ち退き請求

貸主の海外転勤時に、「海外転勤が終了した場合には貸主が居住する」という約束で賃貸借をしました。

そして、賃貸借の開始から10年以上が経ち、貸主の海外勤務が終了し帰国したため、賃貸していた一戸建てに住もうと、賃借人へ立ち退き請求をしました。

立ち退き要求をしたときの家賃は、6万5,000円でした。

貸主は他に居住用の不動産を所有しておらず、立ち退き請求時はアパート暮らしをしていました。

裁判所の判決
立ち退き料200万円の支払を条件に立ち退き要求を認めました。

判決の理由
貸主家族4人が本件物件の明け渡しを受けられず、狭いアパート暮らしを強いられていることは酷であること。

ただし、賃貸借の開始から10年以上経過していることで、一時使用のための賃貸借ではなく、通常の賃貸借とされ、賃借人が居住地に生活基盤を築いていることも認められました。

このため、「一時貸し」として契約しましたが、通常の賃貸借と判断されました。

立ち退き料200万円を支払うことによって、賃借人を退去させることができると認められました。

一戸建て老朽化による建て替えのための立ち退き請求

賃借人が借りている一戸建ては築57年を経過しており、地震による倒壊のおそれがあり、耐震補強を行うにも多額の費用がかかることが見込まれると貸主は主張していました。

貸主は、立ち退き料840万円を提示していました。

賃借人は、肺気腫を患っており、すでに平均寿命よりも高齢でした。

裁判所の判決
立ち退きに正当な事由はなく、立ち退きは認められないという判決でした。

判決の理由
貸主が老朽化を主張している建物について、築年数は経過しているものの、建築当時に建築の検査を受けた建物であること、基礎が現代の基礎と差がなく建物も平屋で比較的倒壊の恐れが低いと判断されました

そのため、建物が老朽化していても危険とは言えず、高齢で病気を患っている賃借人を立ち退かせる理由にはならないと判断されました。

アパート・マンションの立ち退き判例

アパート老朽化による賃貸マンションへ建て替えのための立ち退き請求

老朽化したアパートには6世帯が入居中で、各世帯の家賃は2万6,500円でした。

貸主は経済的に余裕がなく、アパートからマンションへ建て替える必要性が高い状態。

一方、入居している賃借人の中には高齢者や病弱者もおり、転居に大きな負担がかかることが予測されました。

そのため、貸主は1世帯あたり347万円の立ち退き料を提示しました。

裁判所の判決
立ち退き料として一世帯平均522万円の支払うことを条件に、立ち退き請求を認めました。

判決の理由
貸主は経済的に余裕がなく、アパートからマンションへの建て替えによる有効活用の必要性があるが、賃借人の中には高齢者や病弱者などがおり、アパートでの居住の必要性は高いとされました。

また、賃借人には賃貸借開始時から、賃料の滞納などの問題を起こしたことはありませんでした。

しかし、請求には正当な事由があることが認められ、賃借人に対して立ち退き料を増額することで立ち退きさせられるとされました。

海外帰国後の貸主が自分で住むための立ち退き請求

賃借人は貸主と海外滞在期間中のみマンションの1室を借りるという賃貸借契約を締結していた。

賃貸借開始から4年後、貸主が帰国したことにより立ち退きを請求。

貸主は、立ち退き料として60万円か、裁判所の認める額を支払う意思があると賃借人へ提示しました。

しかし、賃借人は、350万かけて内装工事を行っているという理由で立ち退きを拒否しました。

立ち退きを請求している間、貸主には他に住居がなかったため、親戚宅に住んでいました。

当初は家賃10万円で貸していましたが、立ち退き請求時、家賃は受け取っていませんでした。

裁判所の判決
正当事由が認められるため、立ち退き料は0円。

判決の理由
海外滞在期間中のみの契約で、貸主が帰国した際には退去することで合意していました。

帰国後、貸主が居住している親戚の家は、貸主とその家族が生活できる広さではないことも立ち退きが認められた事由になりました。

貸主が、他に居住できる不動産を所有していないことも考慮すると、貸主の立ち退き要求には正当事由が認められるとされました

店舗の立ち退き判例

自己居住を理由とした立ち退き

建物2階部分には、貸主と家族4名が居住していました。

子どもたちが成長し、手狭になってきた事から、1階で営業していた喫茶店に対して立ち退きを請求しました。

貸主が提示した立ち退き料は300万円でした。

賃借人は、立ち退き請求時、家賃2万円で借りており、賃料の支払いが何度か遅れるときがありました。

裁判所の判決
立ち退き料400万円の支払いを条件に立ち退き請求を認めた。

判決の理由
賃借人は、喫茶店の収支に関する証拠を提出せず、賃料の支払いが何度か遅れていたことから、喫茶店の利益はそれほど高額ではないと考えられました。

支払い賃料と適正な相場の賃料との差額や、近隣で同程度の喫茶店を新規開業する場合の費用など、その他の事情を考慮して立ち退き料を計算しました。

その上で、立ち退き料を支払うことで立ち退きを認めました。

老朽化による建て替えのための立ち退き

賃借人が借りていたのは築70年が経過した建物で、70年間食料品販売店を経営していました。

食料品販売店は、立ち退き料を受け取るか、建て替え後の建物に入居することを希望していました。

貸主が提示した立ち退き料は654万円、立ち退き請求時の家賃は10万円。

裁判所の判決
立ち退き料654万円の支払を条件に立ち退き請求を認めました。

判決の理由
建物の老朽化が激しく建て替えの事情も考慮できるが、長年営業していることを考慮すると、無償での立ち退きは認められませんでした

申し出のあった立ち退き料654万円は、借家権価格、営業補償などを含み、妥当な立ち退き料でした。

そのため、立ち退き料を増額することなく、立ち退き請求が認められました。

立ち退き料の決め方と費用内訳

立ち退きの金額を決める法的な根拠はありませんが、おおよその算出方法があります。

立ち退き料は、退去することによる損失を補う意味合いもあります。

そのため、退去するために必要であろう損失を合計していくことによって、算出することができます。

立ち退き料 = 移転の費用 + 新居の費用 + 固定電話などの引き込み費用 + 迷惑料・慰謝料

ここからは、立ち退き料を計算するために必要な損失の項目を紹介します。

移転の費用

賃貸人は、立ち退きがなければ発生しなかった賃借人の退去費用を補填する必要があります。

移転する費用の中には、引っ越し費用や家具を捨てる費用などが該当します。

新居の費用

立ち退きによって、賃借人が新しい住居に住むときの費用を負担しなければいけません。

入居する費用には、新居の仲介手数料や礼金、1ヶ月分の家賃、火災保険料などが該当します。

その他、現在の家賃と新居の家賃との差額も、補填が必要な項目とされており、2年分ほど補填することが一般的です。

差額を補填する年数は、賃貸人が立ち退かせる正当な事由により変動し、決定します。

立ち退かせないといけない正当な事由が強ければ、1年で計算することもあり、一方正当な事由が弱い場合は、3年分補填することがあります。

なお、敷金はいずれ戻ってくる預り金なので、補填の費用として考えない場合もあります。

固定電話などの引き込み費用

新居に移ったときに必要となる固定電話やインターネット環境の整備に必要な費用も考慮しなければいけません。

迷惑料・慰謝料

移転に要した費用や、新しい住まいへの入居費用、電話やインターネット環境の整備費用などを勘案して金額を計算します。

退去させることにより賃借人に迷惑を掛けたということで、計算した金額に迷惑料または慰謝料を追加して立ち退き料を増額して支払います

まとめ

立ち退き料には、法的な計算方法がありません。

立ち退き料をどう決めればいいか迷った場合は、過去の判例も参考にしましょう。

判例によっては立ち退きが認められなかったり、立ち退き料が増額したりするケースもあります。

立ち退き料は、賃借人にどのような損失が発生するのかを計算し、立ち退かせる事情や賃借人の状況を踏まえながら決めることが大切です。

お互いが考えている立ち退き料の見積もりに金額差があると、トラブルに発展してしまう恐れがあります。

弁護士などの専門家に確認しつつ、賃借人との関係を良好に保ち、立ち退きを進めていきましょう。

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