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立ち退き料とは、大家が賃貸マンションを借りている人に対して、強制的に退去してもらう対価として支払う金銭のことです。
一般的に、大家の都合で入居者が退去し、退去のためにかかった費用の補填などを総称して立ち退き料と呼んでいます。
賃貸借契約を締結したときに、2年間の賃貸借契約としているので、2年経てば解約できるのではないかと思う賃貸経営者の方がいるかもしれません。
しかし、残念ながら借地借家法により、賃貸借契約は更新されることになっています。
そのため、大家から契約解除を申し入れることはできず、退去させるには更新をしないことを入居者に伝えた上で、立ち退き料を支払わなければいけません。
100万円の立ち退き料が高いと思うか、安いと思うかは個々の状況により違います。
そろそろ転居しようと考えていた入居者にはありがたい話ですが、入居のために多額の家具新調費用などを出したばかりの新規入居者にとっては「100万円は少ないな」と思われてしまう可能性があります。
しかし一律いくら支払えばよいという明確な法的根拠がないため、どのくらい払えばいいのかは大家の判断です。
大家が入居者を退去させるには、自分で金額を算出して提示し、入居者に納得をしてもらわなければいけないのです。
立ち退き料を算出するための判断材料やおおよその計算方法があるので、それを使って入居者に支払う立ち退き料を算出します。
そして、算出した金額を基準として入居者との退去の交渉を始めることになります。
次に、立ち退き料の内訳を見ていきましょう。
移転のために必要な費用と考えられる主な項目は、引っ越し代金や荷物の輸送費、内装の撤去費用、家具の撤去費用などです。
入居者が退去するにあたり、どのくらい実費が発生するのか考慮します。
入居者へ退去を求めなければ発生しなかった費用を、大家が負担しなければいけないという考え方です。
新居を借りるために必要な費用と考えられる主な項目は、仲介手数料や礼金、火災保険料・地震保険料の新規加入、家具の新調費用などです。
移転のために必要な費用と同じく、退去するためにどのくらいの実費が発生するのかを考慮します。
なお、敷金については、あくまで家賃滞納などを担保する預り金のため、新居を借りるときに必要な費用とは考えません。
退去する賃貸物件と新居となる賃貸物件の家賃の差額を1〜3年分くらい補償をする必要があります。
どのくらいの年数分が補償されるかは、大家が入居者を退去させなければいけない事情を考慮して決定されます。
世間一般的にみて正当とされるような事情である場合は、補償する年数が少なくなり、大家の事情があまり正当な事情でない場合には、補償する年数が大きくなります。
たとえば、退去する賃貸物件と新居となる賃貸物件の家賃の差額が3万円、補償をする年数を2年とした場合は、3万円×24ヶ月(2年)=72万円を補償することになります。
立ち退き料の相場・計算方法は決まりがありませんが、前述の通り、立ち退き料の金額を算出する判断材料があります。
この判断材料の項目ごとにどのくらいの費用がかかるのか、事例を挙げて計算してみます。
一般的な単身者の移転のみにかかる費用の内訳は以下のように考えられます。
移転にかかる費用は合計20万円です。
新居を借りるために必要な費用は、合計25万円です。
退去する賃貸物件と新居となる賃貸物件の家賃の差額が2万円あった場合で、2年分補償をするときは、2万円×24ヶ月(2年)=48万円の補償をすることになります。
入居者がどのような新居を借りるかはわかりませんが、今、貸している賃貸物件と同条件の賃貸物件はどのくらいの相場賃料で貸し出されているかを基準にします。
最後に、各事例で算出した費用をまとめてみましょう。
すべての金額を合計すると、93万円になります。
この計算した金額に、退去をさせるお詫びの気持ちを少し上乗せするというのが、立ち退き料の基本計算です。
そのため、立ち退き料が100万円というのは、相場からかけ離れた数字ではないことがわかります。
立ち退き料として100万円を受け取った場合に税金がかかるかどうかは、受け取った立ち退き料から立ち退くために実際にかかった費用を差し引いた額がいくらになるかによります。
実際にその物件から引っ越すためにかかった費用が45万円だった場合、55万円が一時所得(100万円-45万円)となりますが、一時所得は特別控除50万円を差し引いたあとの金額の2分の1に相当する金額が他の所得と総合されることになるため、2万5,000円((55万円-50万円)×1/2)が課税対象となります。
立ち退き料が増額あるいは減額されるケースがあります。
それぞれどのような事例が該当するのか説明します。
立ち退き料が増額されるケースとしては以下のようなことが考えられます。
立ち退き料が増額されるケース
入居者が賃貸物件を借りるにあたって、どのくらいの支出をしているかがポイントになります。
また、支出した時期が退去予定日から近い場合は、退去費用が増額されることが多いようです。
立ち退き料が減額されるケースは以下のようなことが考えられます。
立ち退き料が減額されるケース
このように、大家にどうしても入居者を退去させなければいけない事情があることや、入居者に対して退去の費用以外の面で補償をしている場合、立ち退き料が減額できることがあります。
大家に正当な事情があるのか、入居者の退去をどれくらいサポートしているかがポイントになります。
ここまで、立ち退き料が100万円という設定は妥当かというお話をしてきましたが、実は立ち退き料が発生しない場合もあります。
立ち退きが発生しない事例としては以下の場合が挙げられます。
立ち退き料が発生しないケース
立ち退き料は、守るべきことを守らない入居者にまで支払う必要はないものだといえるでしょう。
立ち退き料はどのくらい支払わないといけないという金額は明確になっていません。
しかし、立ち退き料を支払う目安の項目はわかっています。
移転のための費用、新居を借りるための費用、現在の賃貸物件の賃料と新居の賃料の差額を基準として立ち退き料が計算できます。
この計算で出た基準の金額に、大家、入居者の個々の事情が考慮され立ち退き料が決まってきます。
このような考え方があることを理解しておくことで、おおよその立ち退き料がどれくらいになるのかわかってきます。
立ち退き料の算出の仕方を把握した上で、弁護士などの専門家に立ち退きについて相談をすれば、スムーズに打ち合わせが進みトラブルになる可能性も減ります。
立ち退きはトラブルが起きやすいので、トラブル防止に努めて行うようにしましょう。