

大阪弁護士会所属。京都市出身。
建物の老朽化や土地活用に伴う「立ち退き」の問題は、賃貸人・賃借人双方の利害が複雑に絡み合い、解決が長引くほどオーナー様にとって大きな精神的・経済的負担となります。
円滑な明渡しを実現するためには、正当事由の精査といった法律知識に加え、妥当な立ち退き料の算定や、相手方の状況に応じた柔軟な交渉力が欠かせません。
私はIT企業や経営コンサルタントとしての実務経験を活かし、単なる法律論に留まらない「ビジネス視点での最適な解決策」をスピーディーに提示することを得意としています。 早期解決によって次のステップへスムーズに進めるよう尽力いたします。ぜひ一度ご相談ください。
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書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方

立ち退き料として100万円を提示された場合、金額が妥当かわからず合意してよいか迷ってしまうケースもあるでしょう。
立ち退き料は物件の用途や家賃、貸主が立ち退きを求める正当事由の強さなどで増減します。
新居への移転費用や事業上の損失、所得として発生する税金などを算定すると、100万円では不十分な場合も少なくありません。
本記事では、立ち退き料の相場や妥当性、貸主との対応や増額交渉、受け取り後に自分が納付しなければならない税金などを解説します。
目次

以下の場合は、100万円の立ち退き料が妥当なケースが多いです。
立ち退き料は賃料や貸主が退去を求める事由の強弱などで変わるため、店舗や事務所、高額賃料物件では不十分な場合もあるでしょう。
居住用物件の立ち退き料は家賃6〜12カ月分ほどになるため、家賃6万〜10万円のときは立ち退き料が100万円前後になりやすいといえます。
一方で、立ち退き料は家賃のみでなく引っ越し費用や新居契約の初期費用なども考慮されます。
上記の費用は、家賃6万〜10万円の物件から同条件の新居に引っ越す場合、100万円以内に収まるケースが多いでしょう。
引っ越し費用や契約費用で60万円かかる場合、残りの40万円は迷惑料として借主の手元に残るため、実務上は立ち退き交渉が進みやすくなります。
建物の老朽化が著しく、耐震診断で倒壊の恐れが証明されているなど貸主の正当事由が強いときは100万円の立ち退き料が妥当な場合もあります。
借地借家法28条[注1]の正当事由は、貸主が退去を要求する理由と借主の事情の比較衡量で判断されます。
耐震診断などで貸主の正当事由が公的に証明されている場合、立ち退き料は実費相当で足りると裁判所に判断される可能性が高いでしょう。
裁判上の争いでも100万円未満で立ち退きを命じられる恐れがあり、早期に合意する方が合理的な場合もあります。
一方で、不当に低い立ち退き料を防ぐために、耐震診断の結果の妥当性などは弁護士の介入によって検証を行うのが望ましいでしょう。
店舗や事務所、高額賃料の物件では、内装工事費や設備移転費用などで数百万円~数千万円の費用が発生するケースが珍しくありません。
新店舗を賃貸する初期費用のみで数百万円、現在の店舗に施した内装を再現するには1,000万円以上の工事費がかかります。
営業店舗の立ち退きでは、逸失利益などの営業補償も重要です。
休業期間の利益損失、リース料や従業員の休業手当などの固定費、得意先の喪失による減収などが補償として求められます。
100万円の立ち退き料では不十分なケースがほとんどであり、数千万円~億単位の請求が妥当となるケースもあるでしょう。

立ち退き料に法律上の規定はありませんが、居住用物件で家賃6カ月〜12カ月ほど、営業店舗ではより高額になります。
居住用物件での内訳は引っ越し費用や仲介手数料を例とする初期費用、新旧の家賃差額補償などです。
営業店舗は営業補償なども加算されるため、内訳の内容が適正かどうか精査しましょう。
居住用物件の立ち退き料は家賃6〜12カ月分ほどが一つの目安であり、裁判所の和解手続きなどでも指標となっています。
たとえば、家賃10万円であれば立ち退き料の目安は60万円から120万円ほどとなり、100万円の提示は適正な水準の範囲内でしょう。
家賃20万円では目安が120万円〜240万円となるため、立ち退き料100万円は相場より少ない可能性があります。
実際の立ち退き料は、家賃を基準とした目安に引っ越し費用や家賃差額なども考慮されます。
相場の上限を受け取るには、自分の家賃を基準にしながら増額要因を説明した上での交渉が重要です。
営業店舗などの事業用物件は、立ち退き料が居住用より高額になりやすく、数千万円〜億単位となるケースも珍しくありません。
立ち退き料を算定するとき、賃料による目安のみでなく事業上の営業補償や設備移転費用なども考慮されるためです。
たとえば毎月数百万円〜数千万円の利益がある飲食店などは、移転で営業できない期間の損失や顧客喪失などの賠償も相応の金額になります。
営業権の価値が最大の要素となるため、100万円の立ち退き料では損失額に不足するケースがほとんどでしょう。
弁護士に依頼すると、会社の決算書や確定申告書、工事見積などから事業補償を算定し、適正な立ち退き料を交渉します。
立ち退き料の主な内訳は、移転費用、新居契約費用、家賃差額補償の3つです。
移転費用
新居への引っ越し費用や不用品の処分費用などが補償対象です。
新居契約費用
新居を借りるときの仲介手数料や礼金、火災保険料・地震保険料の新規加入費用、家具の新調費用などが補償されます。
敷金は家賃滞納などを担保する預り金のため、新居を借りるときの契約費用とは考えません。
家賃差額補償
現住居と新居に家賃差額があるときは、貸主の正当事由の強さに応じて差額の1~3年分ほどが補償対象となります。
たとえば、家賃の差額が3万円、補償年数が2年のときは、3万円×24カ月=72万円が補償金額です。
以下のケースでは立ち退き料を増額交渉できる余地があります。
貸主の要求が一方的であり、自分の不利益が大きいときは居住権を強く主張できるため、立ち退き料の増額が認められやすいでしょう。
例えば以下のケースで100万円を超える費用が発生する場合、実費補償としてさらなる増額交渉が認められる可能性があります。
4人家族の長距離引っ越しなどは、運搬費用や契約初期費用などで数十万円〜100万円を超えるケースも珍しくありません。
高額な実費が発生して不利益補償が残らないときは、見積もりなどの客観的な根拠を基に増額交渉を行いましょう。
長年居住している場合、近隣の家賃相場が上がっており、同じエリアで同等の新居を探しても家賃が数千円〜数万円ほど高くなるケースもあります。
新居の家賃に大きな差額があるとき、貸主都合の退去によるランニングコストの増加であり、借地借家法28条[注1]に基づき補償を請求する材料にできます。
家賃差額の補償年数は通常1年〜3年であり、計算例は以下の通りです。
弁護士は、周辺の類似物件の賃料データを精査し、新旧家賃の差額を算出して補償年数を最大にできるよう貸主と交渉します。
借主の契約期間の更新は借地借家法26条[注1]などで保護されており、貸主に正当事由がないときは原則として契約は更新されます。
立ち退き料は貸主の正当事由を補完する役割があるため、貸主が退去を求める理由が弱いほど増額交渉は有利に進められます。
たとえば、建物の老朽化が軽微な場合や、貸主の個人的な都合で売却する場合などは正当事由が弱いと判断されやすいでしょう。
正当事由が弱いときは裁判上でも建物の明け渡しが認められにくく、貸主は解決金として立ち退き料の上乗せが必要になります。
貸主が立ち退きを求める理由の具体性や緊急性を確認し、自分が退去によって受ける不利益と比較衡量して増額交渉を行いましょう。
100万円の立ち退き料を提示されても、すぐに合意せずに書面を持ち帰る方が望ましいです。
立ち退き料の妥当性は、家賃や退去要求の理由、転居負担の大きさなどで変わります。
退去要求の理由や立ち退き料の内訳について説明を求め、弁護士に相談して増額交渉を依頼しましょう。
退去の立ち会いで合意書へサインするようプレッシャーをかけられても、「専門家と相談するため一旦持ち帰ります」と拒絶しましょう。
合意書にサインをすると、立ち退き料の金額や理由を認めたとみなされ、事後の取り消しや増額交渉が困難になります。
焦って合意した場合、退去期限や明け渡し条件、原状回復費用の扱いなどの重要な条件も見落としてしまう恐れもあります。
自分の利益を守るために一旦は書面を持ち帰り、条件の精査や弁護士に内容を確認してもらう時間を確保するのが重要です。
立ち退き料の金額に合意する前に、立ち退きを求める理由や退去期限、支払時期などの条件も確認しましょう。
引っ越し費用や家賃差額など、100万円がどのような計算で算出されたのか書面での詳細な提示を求めます。
100万円の計算根拠や詳細な条件の提示がない場合、退去費用との相殺や追加請求の制限などが含まれている可能性もあります。
条件の開示請求を行うと、貸主への牽制となり、不当な立ち退き要求を抑止できる効果もあるでしょう。
提示された100万円に少しでも疑問や不満がある場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談しましょう。
貸主に直接交渉すると双方が感情的になり、話し合いが進まないケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、弁護士法72条[注2]に基づく代理人として貸主との交渉を代行するため、自分の労力や精神的負担は大幅に軽減されます。
建物からの退去や合意書へのサインを急かされている場合は、早めに弁護士へ相談するのが望ましいです。
立ち退き料100万円を受け取った場合の税金は、合意書などの名目で一時所得と分類されるとき、まず立ち退き料から引っ越し代などの経費を差し引いた額を計算します。
引っ越し代などの経費が45万円だった場合、立ち退き料100万円から45万円を控除した55万円が一時所得です。
一時所得から特別控除最大50万円を差し引いた後の2分の1に相当する金額が他の所得と総合され、課税対象となります。
居住用物件の立ち退き料は、資産の対価ではなく不慮の損失補償や迷惑料とみなされ、所得税法34条[注3]の一時所得として優遇措置を適用できます。
立ち退き料100万円を受け取り、引っ越し費用などの経費が30万円かかったときの一時所得の計算例は以下の通りです。
一時所得の金額が他の所得と合算され、総所得金額に応じた累進課税の税率で納付額が決まります。
弁護士は、確定申告時の処理でどのような項目が経費として適法に認められるか、税理士と連携しながらアドバイスを行います。
店舗や事務所などの立ち退き料は、税務上どのように分類するかが極めて重要です。
売上減少への営業補償分などは、事業収益の代替とみなされるため、事業所得や雑所得として全額が課税対象です(所得税法27条[注3])。
一方で、内装の取り壊しなど資産の消滅に伴う補償などは一時所得や譲渡所得に分類でき、特別控除などの優遇措置を適用できます。
同じ100万円の立ち退き料でも発生する税金は異なる可能性があり、実務上は立ち退き料の合意書の文言や名目などから判断されます。
合意書の文言が重要なポイントとなるため、弁護士や税理士などの専門家には税金対策も含めて作成を依頼するとよいでしょう。
[注1]借地借家法/e-Gov
借地借家法
[注2]弁護士法/e-Gov
弁護士法72条
[注3]所得税法/e-Gov
所得税法
100万円の立ち退き料が妥当かどうかは、家賃や物件用途、立ち退き理由、転居で発生する費用などによります。
家賃6万円~10万円ほどの居住用物件では妥当なケースもありますが、営業店舗や高額賃料物件では不十分なケースがほとんどでしょう。
新居の契約費用や家賃差額の補償のみでなく、貸主側の正当事由が弱いときはさらなる増額交渉を求める余地があります。
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