賃貸アパートが古くなってきたから立て替えたい、賃貸アパートを取り壊して親の介護をするため住宅を建築したい、そんな賃貸住宅のオーナーもいることでしょう。
しかし、「まだ入居者世帯が何組もいるため、すべての入居者が自主的に出ていくのを待っていては何十年もかかってしまいそうだから、やめておこう」と考えていませんか?
入居者の退去は、きちんとした理由を説明し、立ち退き料を支払うことにより退去させることができます。
「立ち退きは難しいのでは?」という言葉が聞こえてきそうですが、きちんと立ち退きの方法を把握しておけば、立ち退きさせることも可能です。
本記事では、賃貸アパートの入居者の立ち退きを検討しているという方向けに、立ち退き料が必要なケースや立ち退き料の計算方法、立ち退きまでの流れを解説します。
目次
そもそも立ち退き料とは、賃貸物件の賃貸人の都合で賃借人に退去を求めるときや、賃借人の損害などを補填するために支払われる費用のことです。
立ち退きをするときには、引越し費用や転居先の家賃といったさまざまな費用がかかります。
そのため、賃貸人の一方的な事情で貸借人に退去を求める場合は、それらの費用を貸主が負担しなければなりません。
立ち退き料は、法律で必ず支払わないといけないと決まっているわけではありません。
したがって、賃借人の退去時に必ず支払わなければならないものではありませんし、いくら払わなければならないという決まりもありません。
立ち退き料は賃借人を退去させるときに、賃貸人の事情の正当性を補完するために支払われる料金です。
基本的には、賃貸人から立ち退きを求める場合、正当事由が必要とされています。
その正当事由が強いほど立ち退き料は安く済み、正当事由が弱いほど高い立ち退き料が必要となるのが一般的です。
つまり、立ち退き料の金額は、正当事由の内容によって大きな影響を受けるということです。
賃貸住宅を立ち退きさせるまでの流れは、大きく5つに分かれます。
立ち退きを求めるときは、全体の計画を立案したうえで、賃借人に対して打診を行います。
最初に立ち退きを打診する際は、書面によって行うのが適切でしょう。
また、スムーズに立ち退きに応じてもらうためには、代替物件を提案することも大切です。
立ち退き料や退去の時期、転居先など、立ち退きに関する条件について最終交渉が終わったら、実際に立ち退きを完了させて立ち退き料を支払います。
計画の立案から立ち退き完了まで、だいたい1年程度かかるケースが多いでしょう。
立ち退き料が必要なケース、不要なケースとはどのようなときなのか、具体例を挙げて解説します。
立ち退き料は、法律によって必ず支払わなければならないと決められているものではありませんが、上記のようなケースにおいては支払うべきとされるのが一般的です。
例えば、賃貸住宅を建て替える場合は賃借人に対して立ち退き料を支払う必要があります。
また、賃貸人が賃貸物件を壊して自宅を建てるといったケースや、再開発などにより建物を壊すケースもよくありますが、このような場合も立ち退き料を支払う必要があります。
賃貸人から立ち退きを要求する場合、立ち退き料が必要となるのが一般的ですが、中には立ち退き料が不要なケースもあります。
例えば、賃借人による契約違反があった場合は、賃貸人は立ち退き料を支払わずに立ち退きを求めることができるでしょう。賃借人が家賃の滞納を続けているケースなどが該当します。
また、契約当初から建物に入居できる期限が定められていた場合のように、予め退去することが分かっていた場合も、立ち退き料を支払う必要はありません。
ほかにも、建物に入居を続けると非常に危険な状態であると判断できるような重大な問題が発生した場合も、立ち退き料が不要となる可能性があります。
立ち退きを求めるときは、立ち退きによって賃借人が被る損害を補填しなければなりません。
この損害を補填するには、およそ家賃の6ヶ月分から8ヶ月分が必要とされています。
つまり、賃貸住宅の立ち退き料の相場は、おおよそ家賃の6ヶ月分から8ヶ月分ということになります。
賃借人に補填しなければいけない項目の内訳は具体的に下記です。
賃借人が移転する費用とは、引っ越し業者の利用代金や、荷物を運ぶためのレンタカー代などのことです。
新居に入居する費用とは、新居となる物件の契約金が該当します。具体的には、敷金や礼金、仲介手数料、火災保険料、保証会社利用料などが含まれます。
これに加えて、電話やインターネットなどをはじめとした新居の設備費用についても、補填する必要があるといえるでしょう。
また、賃貸人の都合で立ち退きを要求するにあたって、賃借人に対しての迷惑料や慰謝料も、立ち退き料に含まれます。
立ち退き料を計算するには、内訳で紹介した移転の費用、新しい住まいへの入居費用、固定電話などの整備費用を合計します。
例として、現在の賃料を8万円、新居の家賃を9万円と想定して計算してみましょう。
まず、賃借人が移転する費用としては、平均的に13万円程度の引っ越し代がかかると想定できます。
そして、新居に入居する費用は、だいたい家賃の3〜4倍程度の金額がかかるのが一般的なので、家賃9万円の物件なら30万円前後となる可能性が高いでしょう。
さらにまた、電話やインターネットなどの設備費用として2〜3万円程度が必要と考えると、立ち退き料は次のように計算できます。
これに迷惑料や慰謝料をプラスし、50万円程度の立ち退き料が必要であると想定計算できるでしょう。
このような費用が退去する人にかかると想定した場合、費用の合計は46万円です。
この合計金額に迷惑料などを足した金額が、立ち退き料のおおよその金額になります。
現在の賃料が8万円のため、現在の家賃の約6ヶ月分の金額になります。
このように計算すると、現在の家賃のおおよそ6ヶ月分から8ヶ月分が立ち退き料に相当することが分かります。
立ち退きを要求する賃貸人としては、支払う立ち退き料をできるだけ安く抑えたいと考えている人も多いでしょう。
ここでは、アパートなど賃貸の立ち退き料を安くする方法を2つ紹介していきます。
最も基本的なことではありますが、賃借人に対して誠意をもって対応するということは、立ち退き料を抑えるための非常に重要なポイントといえます。
一方的に意見を主張し、入居者の意見や事情を何も考えず強引に交渉を進めてしまうと、入居者の反感をかってしまうことに繋がってしまうでしょう。
入居者の反感をかってしまうことになれば、より高い金額の立ち退き料を請求されてしまうことになるかもしれません。
立ち退き料をできるだけ安く抑えたいのであれば、初めから誠意をもった対応を心がけ、お互いに歩み寄りながら交渉を進めていくことを意識することが大切です。
立ち退き料を安く抑えるためには、賃貸人としての許容範囲を作っておくことも重要なポイントです。
例えば、退去時の原状回復を免除するというのも1つの方法でしょう。
通常であれば、退去する際に物件を元の状態へ戻すための費用を賃借人が負担するのが一般的ですが、賃貸人から立ち退きを要求している状況を踏まえて免除することで、立ち退き料を安くすることに繋がります。
ほかにも、賃借人の再入居を確約したり、退去までの賃料を免除するなど、ある程度の許容範囲や譲歩できる範囲を作っておくようにするとよいでしょう。
ここまで、賃貸アパートの立ち退きについて解説してきました。
立ち退きの手続きについて入居者に理解してもらえれば、立ち退きは不可能ではありません。
立ち退きを計画する場合、立ち退き料は根拠を持って計算し、立ち退き完了までの期日を明確にすることが大切です。
計画内容に沿って入居者に誠意をもって適切な説明をし、新居の代替物件を探すなどの配慮を欠かさないようにしましょう。
ただし、立ち退き料の相場や計算方法についての専門的な知識が不足していると、入居者が納得する立ち退き料を提示できない可能性もあります。
そのため、立ち退き計画を立てるときには、弁護士などの専門家に必ず相談するようにしてください。
専門家に相談することで、立ち退き計画がより一層スムーズに進んで行くことでしょう。