定期借家契約の期間が満了したら、賃貸物件から立ち退かなければなりません。
そして、定期借家契約期間が満了したときには、原則立ち退き料を受け取れません。
なぜ、定期借家契約では立ち退き料を原則受け取れないのでしょうか。
立ち退き料を受け取れない理由は、定期借家契約が借家する期間を明確に区切っている契約形態のためです。
本記事では、定期借家契約とは何か、なぜ定期借家契約では立ち退き料を受け取れないのか解説します。
そのほか、定期借家契約でも立ち退き料がもらえるケースや、その際の立ち退き料相場についてもみていきましょう。
目次
定期借家契約とは、賃貸借期間を決めて解約更新ができない特約を付けた賃貸借契約です。
定期借家契約は、通常の賃貸借契約と異なるところがいくつか存在します。
具体的には、次のような点が挙げられます。
なお、定期借家契約は公正証書で契約しなくても効力が発生します。
借地借家法に定められている定期借家契約は「公正証書等の書面により契約しなければならない」と定められ、借地借家法では公正証書「等」と表記されているため「書面であれば公正証書でなくてもかまわない」とされています。
定期借家契約では、正当な理由の有無に関わらず、立ち退き料をもらえません。
また、定期借家契約の場合は期間満了になると更新できないため、賃借人から立ち退き交渉なしで明け渡しを求められます。
立ち退き料とは、賃貸物件の貸主側の都合で借主に退去を求めるとき、借主の損害を補填するために支払われる費用です。
立ち退き料を受け取れない理由は、賃貸借契約で賃貸借期間を有限にする特約を認めているためです。
立ち退き料は一般的に、老朽化した建物の建替えや大規模修繕工事などの正当事由であると認められた場合に支払われますが、定期借家契約の立ち退きは原則立ち退き料をもらえません。
しかし、一部特殊なケースとして立ち退き料をもらえるケースが存在します。
特殊なケースとして挙げられるのが、定期借家契約の賃貸借期間の残存年数が多い場合です。
たとえば、定期借家契約の賃貸借期間を3年と定めて契約したにも関わらず、契約開始から1年で賃貸人から立ち退き請求された場合です。
この場合、賃借人には2年間居住する権利を放棄させるため、立ち退き料で清算しなければならないと判断される可能性があります。
定期借家契約で立ち退き料をもらえる場合の立ち退き料相場は、どのくらいの金額なのでしょうか。
「定期借家契約でも立ち退き料がもらえるケース」で取り上げた内容を元に、立ち退き料を計算していきます。
定期借家契約の立ち退き料相場【シミュレーション条件】
【立ち退き料計算】
立ち退き料は移転に必要な費用の補填と、現在の住居家賃・敷金と新居家賃・敷金との差額を補填します。
そのため、上記費用を計算して立ち退き料を算出します。
(1)24万円+ (2)50万円= (3)74万円
今回のシミュレーション条件で計算した立ち退き料は74万円です。
ただし、ケースによって立ち退き料は変動するため、正確な金額を知りたい方は弁護士などの専門家に確認しましょう。
定期借家契約の賃貸借期間が満了した場合、賃貸人は立ち退き料を払わず賃借人を立ち退きさせられるため、通常の賃貸借契約を定期借家契約に切り替えようとする賃貸人がいます。
この切り替えは賃借人側にメリットがほとんどないため、賃貸人から通常の賃貸借契約を定期借家契約に切り替えの連絡が来ても、安易に受けてはいけません。
安易に定期借家契約を受けてしまうと、定期借家契約満了時に立ち退き料を受けとれなくなります。
もし賃貸人から定期借家契約への切り替えを要求された場合は、定期借家契約になる不利益に対して、金銭的な要求などをしてみるとよいでしょう。
賃借人からの要求として一般的なのは、以下です。
また、切り替えを強く求められた場合には、弁護士に相談するのもよいでしょう。
切り替えを求められたときに、自分で交渉をすると不利になることがあります。
そのため、「賃貸人からの要求がやや強引だな」と感じたときには、弁護士に交渉を依頼しましょう。
定期借家に限定しない、一般的な立ち退き料についてのよくある質問を紹介します。
立ち退き料の支払い者や立ち退き拒否について説明していますので、参考にしてください。
立ち退き料を支払うのは、賃貸人です。
立ち退き料は賃借人側が原因で賃借人に明け渡しを求める場合、引越しをはじめ転居にかかる費用を補償する目的で支払う金銭のためです。
ただし、立ち退き料の支払いは通例として行われており、支払いの義務について、法律上の規定はありません。
賃貸人は賃借人を正当な理由なく強制的に追い出したり、無断で建物の工事を進めたりはできません。
そのため、賃借人は立ち退きを拒否できます。
立ち退きを拒否した場合、賃貸人は裁判を起こして賃借人を退去させようとするでしょう。
ただし、裁判所の判決によっては、入居し続けられる場合があります。
入居中に賃借人がルール・マナー違反を犯していると、立ち退き料がもらえない場合があります。
例えば、ペット禁止物件での生き物の無断飼育や近隣に対する迷惑行為、家賃の滞納などです。
家賃滞納の場合、1回では契約解除に至りません。
3カ月以上滞納している場合や、何度も支払いを催促しているにも関わらず対処されない場合は契約解除となり、立ち退き料をもらえない可能性が高いです。
定期借家契約とは、賃貸物件入居から一定期間後に賃貸物件から退去しなければならない賃貸借契約です。
定期借家契約は、一定期間経過後の立ち退きを了承した契約のため、期間満了に伴う立ち退きの場合は立ち退き料を受け取れません。
ただし、期間が残っている状態で立ち退き要求を受け立ち退く場合、立ち退き料を受け取れます。
この場合は、居住する権利がまだあるのにも関わらず退去する賃借人への補償の意味合いがあります。
また、定期借家契約を利用し、立ち退き料なしで賃借人を立ち退かせられるため、これを利用する賃貸人がいますが、定期借家契約に切り替える相談を受けた場合は、切り替えを受ける代わりとして、金銭的な要求をしてみましょう。
あまりに強い要求である場合や、交渉に自信がない場合は、早目に弁護士に相談して解決してもらうのをおすすめします。