借金の返済が困難になり、持ち家や土地が競売にかけられ、立ち退きを要求されることがあります。
しかし、さまざまな事情で競売後すぐに立ち退くことが難しい場合もあるでしょう。
競売で落札者が決まっても立ち退きをしないでいると不法占拠となり、強制執行が実施されてしまいます。
そのため、所有している不動産が競売にかけられた場合、競売から強制執行までどれくらいの猶予期間があるのかを把握しておくことが重要です。
ここでは、競売から強制執行までの流れ・期間、競売による強制執行を回避する方法を解説します。
目次
借金の返済に行き詰った人に対して、債権者は強制的にその借金の返済を行わせることができます。
借金を返済できない人が不動産を所有している場合、その債権者は、不動産に対する強制執行を行うこととなります。
強制競売となる場合は、不動産を差押えて売却し、お金に換えるという手続きです。
一方、強制管理は不動産を差し押さえた後、管理人にその不動産を管理させ、収益を借金の返済にあてる手続きとなります。
競売にはさまざまな手続きがあるため、競売開始から立ち退き・強制執行が行われるまで時間がかかります。
ここでは、競売開始から立ち退き・強制執行までの流れや期間を紹介します。
不動産の所有者が不動産を担保にして借りていたローンなどを滞納すると、債権者が裁判所へ競売の申立てをします。
手続きに問題がなければ競売開始決定通知が出されます。
裁判所からの競売開始決定通知が不動産の所有者(債務者)に届いてから1〜2週間後に、裁判所の執行官が競売予定の不動産を確認に来ます。
これは、競売に出す価格を決定するための状況確認です。
裁判所の執行官が競売物件の確認に来たあと、約3~5ヶ月の間に、競売の期間入札の通知が来ます。
競売の期間入札の通知が届くと競売の公告がなされ、全国に競売物件の情報や競売の開始時期などが開示されます。
競売が開始されると約1ヶ月の競売期間があり、期間が終了したときに一番高い額の入札者が落札します。
債務者は落札されたあとも居住しているとすぐに不法占拠になりますが、原則として落札後6ヶ月間退去までの猶予を受けられます。
ただし、落札者の落札目的や事情がある場合は、猶予が認められない可能性もあるため注意しましょう。
不動産を購入した人が代金を納付した日に、それまでの不動産の所有者(占有者)は立ち退きとなります。
ただ、占有者はすんなりと立ち退きに応じる場合ばかりではありません。
この場合、強制的に追いだすことはできないため、不動産を購入した人は強制執行を行って不動産の明け渡しを求める必要があります。
強制執行の申し立てを行う前に、不動産を買い受けた人は裁判所の引渡命令を得て、占有者を退去させる権利を示す債務名義を得ます。
債務名義のほか、執行文や送達証明書といった書類をそろえたら、裁判所に強制執行の申し立てを行います。
裁判所に強制執行の申し立てを行うと、2週間ほど経過した後に裁判所より催告が行われます。
催告とは、1か月後に強制執行が行われるため、その間に対処する必要があることを裁判所の執行官が占有者に対して伝えることです。
催告により示された期間内に退去しない場合、強制執行により占有者は排除されます。
家財道具なども建物の中においておくことはできないため、一緒に撤去されることとなります。
抵抗して居座り続けると、公務執行妨害となり、最悪の場合逮捕されてしまいます。
競売を落札した人からすると、物件の所有者は多くの場合、猶予期間後に退去してくれるため、立ち退き料を支払う必要はありません。
しかし、落札者が立ち退き料を払ってくれることもあります。
落札者が立ち退き料を払ってくれるのは、次のケースが考えられます。
まず、考えられるのが猶予期間を待たずに退去して欲しい場合です。
落札者の中には、落札した不動産を再販売することがあります。
落札した物件を空き家にすることを条件に、高く購入してくれる顧客がいる場合、すぐに資金回収をするために立ち退き料を支払ってでも退去してもらいたいと考えるでしょう。
また、強制退去の手続きをしたくない場合も、立ち退き料を払ってくれることがあります。
落札者は強制退去をさせる権利がありますが、強制退去をさせるには費用や手続きが必要です。
猶予期間を過ぎても立ち退きをしなさそうな所有者の場合、立ち退き料を支払ってすぐに退去させたいと考えることがあり得ます。
なお、競売による立ち退き料相場は、数万円程度です。
競売が実行されると、それまでの所有者は2か月程度の間に新たな住居を探し、自宅を明け渡す必要があります。
強制的に退去させられるという点でも、精神的な負担が大きく、できれば強制執行にならないようにしたいところです。
競売による強制執行を回避するために、任意売却や個人再生などの債務整理の方法が使えないか、検討する必要があります。
任意売却や個人再生を行うことができれば、自宅を手放す必要はなくなり、強制執行とも無縁となります。
また、任意売却ができれば、競売より高い金額で売却できる可能性もあります。
買主から自宅を賃借することもできる可能性があり、競売が行われる前にほかの選択肢を探る必要があります。
競売時には、落札者から「立ち退き料を支払うから立ち退いて欲しい」という要望はまず出ません。
立ち退き料交渉は、落札者に対して高圧的にならないように進めていくことが大事です。
落札者が立ち退き料を支払うのは、強制執行の費用を払いたくない、早く賃借人を立ち退かせたい理由がある場合だけといえます。
高圧的な態度で交渉すると、落札者はますます立ち退き料を払いたくないと考えてしまうため、支払ってほしいとお願いをする姿勢の方がスムーズにいく可能性が高くなります。
また、落札日より1ヶ月以内の退去を条件に立ち退き料を要求することも、交渉を成功させるコツのひとつです。
1ヶ月以内という期間を設定することで、落札者が強制執行手続きを行う手間や費用を減らせるため、交渉の条件に加えるといいでしょう。
所有する不動産が競売にかけられた場合、約6ヶ月~1年くらいで競売物件が落札されます。
競売物件の落札後は、原則、退去までに6ヶ月の猶予が与えられます。
しかし、猶予があるからと言ってそのまま猶予期間ぎりぎりまで居座ってしまうと、落札者から立ち退き料をもらうことはできません。
落札者は立ち退き料を支払わなくても強制執行ができるため、落札者に有利な条件を提示して立ち退き料交渉を行っていきます。
強制執行の手続きを開始する前に退去することを条件にする、あるいは高圧的な交渉をしないことが重要です。
競売による立ち退きで立ち退き料をもらうためにはコツが必要になるため、落札者との打ち合わせは慎重に行いましょう。