分譲マンションの老朽化によって、建て替えを行うマンションも出てきました。
まだまだ分譲マンションでの建て替え実績数はかなり少ないですが、これから建て替えをする分譲マンションが増えてきてもおかしくはありません。
分譲マンションの建て替えが決まった場合、引っ越し費用や仮住まい費用などが必要になるため、立ち退き料はもらえるのか、もらえるとしたらいくらもらえるのか、気になる人も多いでしょう。
本記事では、分譲マンションの建て替えで立ち退き料は発生するのか、立ち退きする際の流れや対処法を解説していきます。
目次
分譲マンションに住む人は、そのマンションにいつまでも住んでいたいと考えているかもしれません。
しかし、マンションにも寿命はありますし、震災などで建物に破損が生じることもあるため、立ち退かざるを得ないケースは考えられます。
本人が希望しない状況で、マンションからの立ち退きを求められる場合、その後の展開によって立ち退き料に相当する金額をもらえる場合と、そうでない場合があります。
立ち退いた後、立て替えを行ったマンションに再入居する場合は、立ち退き料に相当する金額を受け取ることはできません。
一方、立ち退きのタイミングで別の場所に転居するのであれば、立ち退き料に相当する金額を受け取ることができます。
ただ、この時に受け取る金額は、正式には立ち退き料ではなく、自身のマンションを売却したことによる収入となります。
また、それまでに積立していた修繕積立金についても、その一部が返金されることがあります。
分譲マンションの老朽化で建て替えが決まった場合、建て替え後のマンションに再入居するか、立ち退きをするかという選択肢があります。
分譲マンションの建て替えの決議に賛成した場合は、立て替えた後の新しい分譲マンションに再入居をします。
ただし、建て替えた新しい分譲マンションに無料で入居できるわけではなく、建て替え費用や仮住まいに必要な費用は再入居する人が支払わなければなりません。
分譲マンションの建て替えのために修繕積立金が貯められていますが、日々の修繕に利用してしまい、ほとんどのマンションでは修繕積立金で建て替え費用がまかなえることはありません。
マンションの建て替えには1戸あたり約1,800万円かかると言われており、マンション建設中にどこかに仮住まいをすると200万円ほどかかります。
そのため、再入居するには約2,000万円の費用が必要になります。
分譲マンションの建て替えに対して反対する場合は、今住んでいる住居から立ち退きをします。
この場合、建て替えに賛成した人で構成される組合から、売渡請求権が実行されます。
売渡請求権とは、マンション建て替えに反対している人の住居の持分を確定し、時価でその持分を売り渡すようにと請求できる権利です。
また、立ち退きの際には今まで積み立ててきた修繕積立金の返還請求ができるため、この修繕積立金の清算金と、前述した持分の売却金額をもらい立ち退くことになります。
あくまでマンション持分の売買のため、賃貸物件のような立ち退き料とは内容が異なります。
分譲マンションを立ち退くときには、立ち退き料は受け取ることができないため注意しましょう。
分譲マンションの建て替えが決定した場合、組合から売渡請求権を実行される前にマンションを売却してしまうのも1つの方法です。
建て替えが決まっているマンションのため、相場での売却は難しい可能性はありますが、マンション持分売買より値段がつく可能性があります。
建て替えをするような築年数の経過したマンションは、都心部に多く、新築マンションを手に入れるのがすでに難しい地域の場合など、どうしてもその地域で新築マンションが購入したいという方にマンションを購入してもらえるチャンスがあります。
購入した方はマンション売買費用とマンション建て替え費用を支払うデメリットよりも、マンション持分売買のお金がもらえること、建て替えられた新しいマンションに住むことができるメリットの方を大きいと考える人もいます。
ここからは分譲マンションが建て替えで立ち退きをするときの流れを解説していきます。
分譲マンションの建て替えがマンション組合で決定すると、各住戸の住民に対して新しい分譲マンションに再入居するのか、立ち退きをするのか確認の連絡がきます。
組合からの通知には回答期限が決められており、回答期限内に建て替えに参加するのか、建て替えに反対し立ち退きをするのか決めなければなりません。
なお、回答期限内に回答しなかったときには、もう一度、建て替えに参加するのか確認の通知がきて、2回目の通知に対して2ヶ月以内に回答しない場合、建て替えに反対とみなされます。
組合から通知が来た場合には、すぐに返答をするようにしましょう。
マンションの建て替えに対して反対する人に対して、組合が売渡請求権を実行します。
組合より売渡請求権が実行されると、建て替えに反対している人が持っているマンションの持分を組合が買い取ることになります。
この売渡請求権というのは、権利者である組合の代表者などが権利の実行を決めた場合、マンションの持分を売却しないと決めていても自動的に売買が成立するという形成権です。
マンション持分を売却することに反対はできないので注意しましょう。
売渡請求をされた人は、マンションの持分を時価で売却し、立ち退きを行います。
分譲マンションには、賃貸物件のような立ち退き料はなく、持分を売却し受け取った金銭で新しい住宅の費用や引っ越し費用を捻出します。
ここからは、分譲マンションの建て替えが組合の決議で決まったとき、立ち退くために準備しておくべきことを項目ごとに紹介していきます。
組合から売渡請求権を実行されると、時価でマンション持分を売買したことになります。
通常の時価は、組合がデベロッパーや不動産鑑定士に依頼し計算をしてもらった金額を提示してきます。
そのため、組合から来た売買金額の時価が正しい計算をされているのか知っておくことが重要です。
時価の計算方法は、次のとおりです。
マンション持分の売買金額算出には根拠があるものの、組合と立ち退きをする人との意思が合致するのは難しく、双方の調整が必要です。
時価がいくらになるかはマンションや建替えの状況によって異なるため、組合と争いになりそうなときには、民事裁判により価格を決定することになります。
分譲マンションから立ち退く場合、新居を探さなければなりませんが、その新居に移るための費用総額を把握しておかないといけません。
新居を購入する場合、マンション持分の売却金額よりも購入金額と購入諸経費の総額の方が大きくなることが多く、どのくらいの金銭を負担しなければならないのか、住宅ローンを借りる必要があるのかなどを確認します。
新居に移るための費用の方がマンション持分売買金額より大きくなることがわかれば、費用を捻出する行動を取ることができます。
分譲マンションを建て替える際、管理者に立ち退き料の支払い義務はありません。
そのため、分譲マンションの立ち退きの話が持ち上がったら、立ち退き料は出るのか、出るとしたらいくらもらえるのかを必ず確認しましょう。
また建て替え予定の分譲マンションに住んでいる人は、建て替え後の分譲マンションに再入居するか、マンションを売却して立ち退くかを選択する必要があります。
再入居する場合はマンションの建て替え費用を負担しなければなりませんし、立ち退く場合は新居に移る費用を負担しなければなりません。
どの選択肢も費用負担が大きいので、立ち退き料や立ち退きに必要な費用がいくらになるのかを確認し、慎重に検討しましょう。
老朽化した分譲マンションが増えてきているため、建て替えという万が一のことに備え、あらかじめ流れや対処法を知っておくことが大切です。