アパートやマンションなどの物件を借りる際は、「賃借人(ちんしゃくにん)」と「賃貸人(ちんたいにん)」の違いを理解しておく必要があります。
特に賃借人は、入居時だけでなく退去時にも注意しなければいけない点も多く、なおかつ賃借人の義務も把握していないと契約違反に該当する可能性も高まります。
この記事では、賃借人の意味と3つの義務、不動産を借りる時の契約書の確認事項について紹介します。
目次
不動産において「賃借人」とは、他人が所有しているアパートやマンションなどを借りる人を指します。
「借主」「入居者」「契約者」などとも呼ばれています。
一方、反対に物件を貸し出す人のことを「賃貸人(ちんたいにん)」と呼びます。
「貸主」「大家」などとも呼ばれています。
賃貸借契約書においては以下の通り「甲乙」で記載されている場合が多いです。
<賃貸借契約書のサンプル>
どちらが賃借人で、どちらが賃貸人であるのかを確認しておきましょう。
賃借人には以下の3つの義務を背負うことになります。
上記の義務は民法で定められているため、ひとつずつ確認しておきましょう。
賃貸借契約書に記載されている賃料は、物件を借り続ける限り支払続けなければいけません。
賃料の支払い義務は、民法601条で定められています。
賃料支払い義務とは、いわゆる家賃を大家に支払うことです。
契約書に明記された期日までに支払いをしないと家賃滞納となり、最終的には立ち退きさせられる可能性も高まるため、注意が必要しましょう。
賃借人は退去する際、入居した時と同じ状態で物件を返却する原状回復義務があります。
原状回復義務は、以下の民法621条で定められています。
原状回復は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で以下が原因の損耗・毀損を復旧するよう定義されています。
つまり、日常生活をしている上で自然に発生した汚れや損傷は、入居者の責任ではないということです。
一方で、入居者の故意・過失で破損した場合は原状回復の範囲に該当するとされています。
たとえば、子どもが壁に穴をあけてしまった、無断でクロスを張り替えた、あるいは過度の喫煙による壁の汚れなどの場合は、元の状態に戻して返却する義務があります。
賃借人は、賃貸借契約書に明記されている内容を遵守する義務があります。
契約内容は大家によって異なりますが、一般的には民法594条に沿って定められています。
たとえば、ペット不可物件であるにもかかわらずペットを飼育するや、第三者に物件を貸し出して賃料を得る行為などは、禁止されています。
契約違反が発覚した場合は退去させられる可能性も高まるため、契約内容をしっかり確認しておきましょう。
賃借人が独自の判断でできないことは、大きく分けて4点挙げられます。
賃貸人の許可なく上記の項目を行うと、契約違反になります。
ひとつずつ具体的に確認しておきましょう。
自分が借りている物件を第三者に貸し出して収入を得ることは禁止されています。
民法594条で定められているのはもちろん、大家と不動産会社との信頼関係が崩れる上、第三者が問題を起こした時に責任は賃借人が追うためです。
ほとんどの物件で転貸は禁止されている行為であるため、行わないように注意しましょう。
ペットの飼育が許可されていない物件であるにも関わらず、ペットの飼育はできません。
ペットを飼うことで壁や床に傷や匂いがついてしまうので、次の入居者にも影響をきたす可能性が高いためです。
爬虫類や鳥類など、犬や猫と比べると比較的行動が制限されているペットであっても、賃貸人へ確認して許可を取ることをおすすめします。
原状回復ができないリフォームやDIYはできません。
先述した通り、賃借人は原状回復して物件を返却しなければいけません。
柱を壊して部屋の間取りを変更する、勝手に住宅設備を変更する行為などは、原則できないため、無断で行わないようにしましょう。
ただし、トイレの便座をウォシュレットに変更するといった機能性を向上させる内容であれば、次の入居者にもつながるため、賃貸人から許可が出る場合があります。
居住用として借りた物件を事務所として使用することは原則できません。
事務所として使用すると、不特定多数の人が出入りし、騒音や防犯面の点から他の入居者からクレームが来る可能性も高まるためです。
たとえ個人事業主で来客がない状態であっても、許可されない可能性も高いため、独断で事務所登録しないように注意してください。
賃貸借契約を締結する際は、事前に以下の3点の内容について確認しておかなければいけません。
退去やお金に関する事項となります。
ひとつずつ具体的に確認しましょう。
賃貸借契約書には特約事項や禁止事項が記載されているため、契約時に確認しておきましょう。
敷金の返還方法や原状回復費に関する事項、その他禁止する事項は、賃借人独自で定めることができ、物件によって異なります。
上記の事項を無視すると契約違反となり、退去させられる可能性も高いため、賃貸借契約時に確認しておきましょう。
賃貸物件を解約して退去する際は、一般的に1カ月前の告知です。
仮に3月31日に退去する場合、2月28日までに大家に退去する旨を伝える必要があります。
しかし、物件によって解約予告期間は2カ月前に定められているケースもあります。
この場合は基本的には退去したくても住む予定のない1カ月分の賃料を無駄に支払うことになるでしょう。
大家との交渉次第では日割計算となる場合もあり得ますが、賃貸借契約書に記載されている解約予告期間は確認しておきましょう。
一般的な賃貸借契約期間は2年間と定められており、その都度更新料を賃貸人へ支払わなければならないと定められていることが多いです。
更新料の家賃の1カ月分が相場となっています。
しかし、物件によっては契約期間を3年、更新料は家賃の2カ月分などと定めている場合もあるため、契約時に確認しておきましょう。
なお、賃貸借契約期間外で解約する場合は、途中解約時の違約金を支払う場合があるので、更新料と一緒に確認しておきましょう。
賃借人は物件を借りる人のことを指し、毎月契約書で定めた賃料を支払います。
さらに原状回復義務や契約内容遵守義務などもあるため、事前に把握しておくことが大切です。
賃貸借契約書を締結する際には、特約事項や禁止事項の確認を忘れないようにしましょう。