この記事でわかること
- 現金手渡しでも贈与税がかかる理由について理解できる
- 生前贈与を行うときの注意点について理解できる
- 贈与税がかからない方法5つがわかる
現金を生前贈与する場合、贈与税について心配される方は少なくないでしょう。
贈与税がかからない方法を活用すれば、大きな金額の贈与であったとしても、贈与税を支払う必要はないケースもあります。
この記事では、贈与税を払わなくてよい方法について詳しく説明します。
また、贈与税を払わなくてよい方法を利用する上で注意すべき点なども解説します。
目次
現金手渡しでも贈与税がかかる
ここでは、現金手渡しのポイントについて説明します。
現金手渡しでも法的に問題はないが税務調査のリスクも
生前贈与は、贈与者(贈る人)と受贈者(受ける人)の合意によって成立します。
贈与税において暦年贈与の非課税枠は年間110万円です。
この金額を超える贈与を受けた場合には、受贈者は贈与税の申告と納税を行う必要があります。
生前贈与を行う場合、贈与契約書の作成や銀行での振り込みのように、証拠が残する方法で行うのがおすすめです。
口頭での合意や現金手渡しは法的には問題ありませんが、税務調査が行われた場合に問題が生じる可能性が高まります。
たとえば、子どもや孫に現金を手渡しした場合、贈与契約書が存在しなければ、贈与の事実に関する証明が難しくなります。
さらに、贈与契約書がある場合でも、現金手渡しの場合では「本当に契約書どおりにお金を贈与したのか」と疑われる可能性があります。
このように、税務調査に備えるために、生前贈与をどのように行うかについては慎重に考えなければなりません。
現金手渡しでも生前贈与を隠すのは難しい
現金手渡しで行う生前贈与でも、税務署に隠すのは簡単ではありません。
税務署職員が贈与事実を総合的に調査し、発見できる可能性は決して低くないからです。
現金手渡しのために預金を下ろした場合、何に使われたのか、現金として残っているのか、他の人に渡ったのかなどの可能性を検討しその行方が調査されます。
その結果として、贈与事実を明らかにされると想定されますし、実際に贈与から数年後に贈与事実が発覚するケースも少なくありません。
相続税の調査では、被相続人の口座だけでなく、相続人の口座も調査対象となるため、贈与者が亡くなり、相続税の調査が行われる際に、生前贈与の事実が発覚するケースもあります。
贈与税がかからない方法5つ
ここでは、贈与税がかからない方法について説明します。
贈与税には暦年課税と相続時精算課税の2つ課税方式があり、税額計算に際して適用できる控除が存在します。
その他、贈与税には様々な「特例」や「非課税制度」が設けられており、特定の条件を満たす場合、一定の金額までの贈与について贈与税が課されません。
具体的に説明していきましょう。
年間110万円以下の贈与による暦年課税
暦年課税制度とは、毎年1月1日から12月31日までの期間における贈与財産の合計額から、基礎控除(年間110万円以下)を差し引いた価額に対して贈与税が課されるしくみです。
つまり、基礎控除である年間110万円以下の贈与については、贈与税がかからず、また、申告の必要もないという仕組みをいいます。
暦年課税における贈与者と受贈者は、親子、夫婦、祖父母孫、兄弟などの親戚関係だけでなく、他人である場合もありえます。
また、贈与者が相続発生前の7年以内に行った暦年贈与は、相続財産として相続税が課されます。
相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税は、通常、贈与者(贈与を行う人)が「60歳以上の親(祖父母)」から「18歳以上の子ども(孫)」への贈与を行った場合に適用される税制です。
この場合、特別控除(最高2,500万円まで)が適用され、超過分に対して一律20%の税率で贈与税が課されます。
重要なのは、相続時精算課税を選択すると、特定の贈与者から受けた贈与について暦年課税方式には戻せない点です。
なお、2024年度の税制改正により、相続時精算課税に基礎控除(年間110万円)が導入されました。
この基礎控除を超える金額については特別控除の上限額(2,500万円)まで控除可能です。
夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除(おしどり贈与)
おしどり贈与として知られるのが、夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除です。
これは結婚してから20年以上経過した夫婦の間で「住居用不動産」や「住居用不動産の取得に関連する資金」を贈与する場合、一定の条件を満たすと、最大で2,000万円まで贈与税から免除される特例制度です。
このおしどり贈与を利用して行われた贈与については、贈与者が亡くなった際も相続財産とする必要はありません。
教育資金の一括贈与
教育資金の一括贈与は、親や祖父母が30歳未満の子どもや孫に対して、教育資金を一括で贈与する場合の制度です。
特定の条件を満たすと、受ける側1人あたり最大1,500万円(習い事などの場合は最大500万円)まで贈与税がかからない特例制度です(2026年3月31日まで適用)。
この制度では、金融機関との「教育資金管理契約」を結び、金融機関が税務署への報告や資金の管理を行います。
受贈者が30歳に達した際など、管理された残額についてはその年の贈与税の課税対象となります。
また、贈与者が途中で亡くなった場合、管理残額は相続税の課税対象となることがありますが、一定の条件を満たせば非課税となります。
結婚・子育て資金の一括贈与
結婚・子育て資金の一括贈与は、親や祖父母が18歳以上50歳未満の子どもや孫に対して、結婚や子育てにかかる資金を一括で贈与する場合の制度です。
特定の条件を満たすと、受ける側1人あたり最大1,000万円(結婚資金の場合は最大300万円)まで贈与税がかかりません(2025年3月31日まで適用)。
この制度も、金融機関との「結婚・子育て資金管理契約」を結び、金融機関が税務署への報告や資金の管理を行います。
受贈者が50歳に達した場合など、管理された残額についてはその年の贈与税の課税対象となります。
また、贈与者が途中で亡くなった場合、管理残額は相続税の課税対象となることがあります。
生前贈与を行うときの注意点
現金の生前贈与で税金がかからない方法を紹介しましたが、これらを利用すれば必ずしも100%非課税とされるわけではありません。
以下の注意点の確認が重要です。
贈与した証拠を銀行振り込みや契約書などで残す
贈与は口頭で合意するだけでも法的には有効ですが、後で税務署などに対して誰が誰にいついくら贈与をしたのかを証明するのが難しい場合があります。
そのため、「贈与契約書」を作成すると後々役立つ場合があります。
贈与契約書には厳格な形式は必要ありませんが、最低限以下の情報を含めるとよいでしょう。
- 贈与の日時
- 贈与者の氏名と住所
- 受贈者の氏名と住所
- 贈与される財産
- 贈与される財産の引き渡し方法
- 受贈者が贈与を受諾したと確認する内容
もし特別な条件がある場合、それらも記載が大切です。
贈与契約書は、公証役場で贈与契約書に確定日付を取得もできるため、客観的な証拠として利用できます。
通常、贈与契約書は2通作成し、一方を贈与者が、もう一方を受贈者が保管します。
また、実際の贈与を銀行振り込みなどで行うと記録が残るため、望ましい方法といえるでしょう。
名義預金にはしない
父母や祖父母が子どもや孫の名義で預金をしている場合には、注意が必要です。
これは一般的に「名義預金」と呼ばれ、その預金が誰の財産であるか、課税の対象になるかはよく問題となります。
子や孫が預金の存在を知らない場合や預金の管理を親や祖父母がしている場合、それは親や祖父母の財産とみなされ、生前贈与とは認識されません。
そのため、親や祖父母が亡くなると相続税が課せられる可能性があります。
このリスクを未然に防ぐためには、まず名義預金を作らないのが重要です。
子や孫の名義で口座を作った場合でも、通帳やカードなどは子や孫に渡して管理を委ね、できれば贈与契約書を作成について検討をおすすめします。
また、親や祖父母が口座を開くのではなく、子ども自身が口座を開設してそこに入金する方が、より確実な方法です。
相続が始まる一定期間以内に生前贈与を受けた場合
相続開始前の7年以内に贈与を受けた場合、その贈与は相続財産に含まれ、結果として相続税が課される可能性があります。
以前は生前贈与を通じての相続税の節税が簡単には行われないように、3年の期限が設けられていましたが、
2024年1月1日以降、この期間は段階的に7年まで延長されました。
なお、既に支払った贈与税額は相続税額から差し引かれるため、同じ対象に対して二重に課税されません。
また、相続開始前3年以内に受けた贈与であっても、相続税の対象外となるケースもあります。
たとえば、贈与契約書を交わしたが財産をまだ全額受け取っていない場合や、贈与税が軽減される特例が適用されていた場合です。
「現金で直接渡して無申告」は避けるべき
たとえば「300万円の現金で直接手渡してもバレないだとう」と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、税務調査が入った場合には、贈与者の銀行口座履歴が徹底的に調査されます。
もし銀行記録に使途不明な300万円の出金が記録されていたら、それが贈与税の対象とされる可能性があります。
また、無申告加算税も発生する恐れがあります。
さらに、不正な文書作成などの行為があれば、無申告加算税の代わりに重加算税が課せられます。
納税が遅れた場合には延滞税も課せられ、滞納日数に応じて追加料金が発生します。
「現金で直接渡して無申告」は避けるべきであると言えます。
まとめ
贈与税を払わなくてよい方法はいくつか存在しますが、どの方法が最適かは贈与の目的、金額、贈与者と受贈者との関係性によって変わります。
それぞれの特例や非課税制度には異なる要件がある上、併用できるものと併用できないものがあります。
そのため、贈与税を払わなくて済むようにしたい場合は、税理士などの専門家からアドバイスを受けましょう。
最適な生前贈与のプランを提案してくれます。