相続税は、基本的には被相続人(亡くなった人)の名義になっていたすべての(財産価値を有する)物にかかります。
しかし、例外的に「これに課税するのは適切ではない」と思われる物は「非課税財産」として相続税をかけないとされているのです。
では、具体的に何に相続税がかかり、何にかからないのかを見てみましょう。
相続税がかかる財産
相続税がかかる財産で代表的なのは不動産や預貯金、車両などです。
人によっては株式などの有価証券を持っていたり、高価な美術品やゴルフ会員権などがあったりする場合も考えられます。
一般的に見落としやすい相続財産として気をつけたいのが「債権(人に貸しているお金や商売をしていた人の売掛金など)」や、自宅以外で離れた場所にある「山林」などの不動産です。
もし相続対象として見落としていたものがあると遺産分割協議もやり直す必要が出てきますし、いったん行った相続税申告も修正しなければならなくなるので、最初の時点での調査を綿密に行うことが大切です。
相続税がかからない財産
一方で、相続税がかからない財産とはどのようなものがあるのでしょうか。
代表的なのが墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚、神具などの宗教に関わる道具です。
これらは財産として保有する意味合いより、神や祖先を祀るといった精神的、儀式的色合いが強いことから相続税の課税にはなじまないと考えられているのです。
ただし、仏具が非課税だからといって純金の仏像や仏具をやたらと揃えることは得策とはいえません。
あまりにも行き過ぎた豪華な仏具は税務署から非課税財産として認められなくなる危険性もありますし、仏像などの加工賃が節税額を上回ってしまえば意味がないからです。
みなし相続財産とは?
相続税における「相続財産」と、民法(遺産分割協議)における「相続財産」とは若干範囲が異なります。
相続人が受取人とされている死亡保険金や死亡退職金については、不動産や預貯金などとは異なり、遺産分割協議においては相続財産に含めないことになっています。
これは、被相続人(亡くなった人)が死亡した瞬間にそれらは特定の相続人の財産となるので、もはや遺産分割協議によって行先を決める余地がないという理由によるものです。
しかし、死亡保険金や死亡退職金については、遺産分割の対象にこそならないものの被相続人が死亡したことによって相続人に帰属する性質を持つことから、相続税においては「相続財産とみなす」とされています(本来の相続財産ではないことから「みなし相続財産」と呼ばれるのです)。
生前贈与には贈与税がかかることがある!
なるべく相続税を減らすためには、生前にどんどん相続人に財産を渡してしまった方がよいのでしょうか。
そのあたりは国もきちんと考えており、相続税逃れのためにやたらと贈与することを防ぐため「贈与税」を国税で最高レベルの税率に設定しているのです。
つまり減税、免税の要件を満たす条件をよく考えて行うようにしないと、とんでもない税金がかかってしまうことになります。
生前贈与を相続税対策として使うためには、たとえば「暦年贈与」(年間110万円までは非課税)を使ってこつこつ長期間で贈与したり、将来値上がりしそうな財産を「相続時精算課税」を使って贈与したりするなどが考えられます。
相続時精算課税においては贈与した財産につき「贈与当時の価額」を相続財産の中に戻して計算するため、相続時に明らかに値段が上がるものについては差額について節税効果があるのです。
つまり、あまり値段が変わらない財産については直接の相続税対策にならないことにも注意が必要です。
相続税対策は早めにすることが大切ですが、前提として相続税がどの範囲の財産までかかり、いくらくらいになりそうなのかというシミュレーションをしなければなりません。
対策にはかなりのバリエーションがあり、自分だけで考えると失敗して取り返しがつかないこともあります。
これ以上の財産には相続税がかかるという「基礎控除額」を超えそうな人は早めに税理士に相談することをおすすめします。