この記事でわかること
- 兄弟や親戚間でよくある、遺産相続トラブルのパターンを理解できる
- どうしたら親戚同士でもめなくて済むのかが分かる
親や祖父母を介したつながりである親戚関係は、何かあったときに助け合える関係と思っている人も多いのではないでしょうか。
実際、困ったときは助け合い、冠婚葬祭などでも顔を合わせることが多いです。
ところが、もめて一番厄介なのも親戚です。
とくに、親戚間の遺産相続トラブルはしばしば泥沼化してしまいます。
なぜ、そこまでもめてしまうのでしょうか。
今回は親戚間の遺産相続トラブルについてよくあるパターンをご紹介します。
目次
骨肉の争い(こつにくのあらそい)とは
相続が発生し、遺産をめぐる親戚間の争いのことを、骨肉の争いと表現することがあります。
骨肉の争いとは、血のつながっている人どうしの争いのことをいいます。
家族や血縁関係にある親戚との争いを指す言葉ですが、現代では親戚どうしの争いというと、ほとんどのケースは相続による争いをいいます。
「骨肉相食む」といわれるほど、激しい争いになることもあります。
親戚間で起こる遺産相続トラブルのよくあるパターン
兄弟姉妹間
同じ屋根の下で育った兄弟姉妹でも、遺産相続でトラブルになってしまうことはよくあります。
なぜなら、いくら兄弟姉妹とはいえ、大人になってしまうとそれぞれの家庭や事情を抱えることになり、利害が対立してしまうためです。
さらにもめる原因となってしまうのが不動産と、兄弟姉妹の誰か一人に多く相続させたいという親の意思です。
不動産は換金しない限り分割することが難しいため、もめる原因になってしまいます。
更地であれば、分筆するということも不可能ではないかもしれません。
しかし、多くの場合、不動産は土地と、その上の建物です。
しかも、兄弟姉妹の数だけ家があるのではなく、多くの場合は親が生前住んでいた一軒だけというパターンが多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹のうち、誰か一人がその家を相続するとしたら、他の兄弟姉妹の相続分が少なくなり、不公平だと感じてしまいます。
共有名義にすることもできますが、もし兄弟姉妹のうちの誰かが既にその家に住んでいたとしたら共有名義を嫌がるかもしれません。
共有名義にすると、共有者全員が同意しない限り売却ができず、単独で自由に貸すことも不可能です。
現実的なことを考えると、家を誰か一人が相続することになるでしょう。
次に、親と子との関係性と相続分についてです。
例えば、生前に親が子供のうちの一人に遺産をたくさんあげたいと思って遺言を書いたとします。
他の兄弟姉妹はそれを知らずに、自分たちの相続分が少ないとは思っていませんでした。
当然、相続分が一人だけ多いとなると不満が出るでしょう。
本来は、親の財産は親のものです。
したがって、親が誰により多くの遺産を相続させたいと思うかは親の自由なのです。
一方、子どもとしては親の愛情が偏っている気がして、偏りのある遺産分割を認めたくないでしょう。
親が、子供のうちの誰かに多く遺産を相続させたいと思う理由はさまざまです。
単純に子供の中でも好き嫌いがあったり、子供のうち一人が障害を持っていて将来が不安なのでその子の分だけは多く残したいとか、介護などで世話になったからという理由であったりします。
甥や姪との間
甥や姪の場合、その親世代とは交流があっても、本人たちとはなかなか交流がないという人が多いのではないでしょうか。
親世代の間でなんとなく決まっていたことでも、甥や姪は把握していない可能性があります。
また、実際の兄弟姉妹であればなんとなく合意してきたことでも、甥や姪となるとなんとなくと言う感覚は通じにくいでしょう。
内縁関係者
内縁関係者も、もめやすい傾向にあります。
外から見て、被相続人との関係がよくわからないためです。
遺族からすれば、単なる他人かもしれません。
さらに、内縁の場合は法律上の地位がないため、本来であれば遺産分割はできません。
ただし、内縁の妻との間に生まれた子供などについては相続権があるので、相続人の一人になります。
親戚からしてみれば今まで知らなかった人が遺産を受け取る可能性が出てくるため、もめる原因になるでしょう。
離婚と再婚を繰り返した場合
離婚と再婚を繰り返し、それぞれで子供がいるケースなど、複雑な家族関係の場合は相続関係も複雑になります。
しかも、前の結婚でできた子供と、後の結婚でできた子供とはなかなか連絡を取らないでしょうから、お互い知らないままということが多いのではないでしょうか。
例えば、離婚した両親のうち父親が亡くなり、実はその父親は二回目の結婚をしていて、そちらでも子供ができていたとしましょう。
遺産相続は二回目の結婚でできた子供たちにも相続の権利があるため、一回目の結婚でできた子供としては納得がいかない場合もあるかもしれません。
また、前妻が生命保険金の受取人になっていてもめる場合があります。
前妻と結婚していた頃に入った生命保険の受取人の欄を変えないままでいると、実際に本人と暮らしているのは後妻であったとしても、前妻に保険金が支払われます。
このようなケースでは、保険金が支払われてしまえば、契約に基づくものなので取り返しようがありません。
心当たりがある方は、一度保険契約をご確認ください。
親戚間でトラブルになりやすい遺産相続の特徴
財産がさほど多くない
親戚間でトラブルになりやすい遺産相続の特徴の一つは、財産がさほど多くない場合です。
しかも、さほど多くない財産の中で、不動産が多くを占めていると、とくにトラブルが起こりやすくなります。
先ほども解説しましたが、不動産は複数の人数で分けにくい資産です。
誰か一人が不動産を相続して、その人の相続分がぐっと上がることで他の相続人は相対的に相続分が減ります。
財産が多いともめることを予測して生前に遺言を作成するなどして対処することがありますが、財産がさほど多くない場合には大した財産がないのだから遺言なんていらないだろう、と思い込み、生前に準備をしないことも多いのです。
財産がさほど多くない人こそ、トラブルになりやすいことを考慮して遺言書を作成しましょう。
相続分が極端
極端な遺産分割は、トラブルの元です。
例えば、被相続人が「遺産は全て長男に相続させる」という旨の遺言を書いたとします。
他の兄弟姉妹は、何ももらえなくなってしまうので長男に文句を言うでしょう。
文句をいうだけではなく、人間関係が壊れてしまうかもしれません。
実際のところ、このような極端な遺産の分け方については、何ももらえない側の人が遺留分を主張することで最低限は遺産を受け取れます。
もっとも、遺留分を主張しても聞き入れてもらえなかったときは、裁判で争うことになります。
親戚間で争うことになるので、関係が悪くなってしまうこともあるということを覚えておきましょう。
借金が多い(故人が親戚にお金を借りていた)
親戚にお金を借りていたことがあると、相続の時にトラブルになることがあります。
お金を貸していた親戚としては、お金を取り戻したいので相続財産の中から返済を求めるでしょう。
親戚とのお金のやり取りでよくあるのは、口約束です。
いくら借りたのか、記録が残っていないことがあります。
証拠がないものを返したくない、と相続人は思うでしょう。
相続人が周りからお金をよく借りる人だった場合は、注意が必要です。
人間関係が希薄
そもそも人間関係が希薄な場合も、トラブルが発生しやすいです。
家族関係が複雑な家庭の場合、親戚同士であっても連絡を取ることがないケースがしばしば見られます。
心理的な関係も複雑であると、なおさらマメな連絡は無いでしょう。
相続を進めるには、まずは戸籍の収集をして、相続人を確定する必要がありますが、慣れていない人の場合は養子や婚外子などを見落としてしまいがちです。
それでも、連絡を取ってきた相手であれば見落としに気がつくかもしれませんが、連絡もしたことがないし会った事もないとなれば、見落とす確率は上がるでしょう。
もし相続人の一人に声をかけ忘れていてそのまま遺産分割協議をしてしまったら、遺産分割協議は無効になり、やり直しになってしまいます。
二度手間ですし、登記などの費用が何重にもかかってしまうなどのリスクがあるので注意しましょう。
遺産相続トラブルを防ぐ4つの対策
知識に勝るものはない
相続トラブルを避けるためには、相続に関する正しい知識を学んでおくことが大切です。
相続に関する正しい知識がないとトラブルに発展しやすく、万が一トラブルになったときに初動を間違えてしまい、余計にややこしい展開になることがあります。
法定相続分と遺留分について知っておく
法定相続分とは
法定相続分とは、法律で決められた遺産分割の割合のことを言います。
例えば、配偶者は常に相続人となり、その次の順位として子供、子供もいなければ両親、両親もない場合は兄弟姉妹というように法律で順位が決められ、さらに割合もそれぞれ決められています。
例えば、夫が亡くなって、妻とその子供二人が残された場合、妻の法定相続分は遺産の2分の1です。
子供二人は、二人で合わせて遺産の2分の1を相続することになり、一人当たりでは4分の1が法定相続分になります。
法定相続分は法律で決められてはいるものの、基本的に被相続人が遺言に残しているものがあれば遺言どおりに分け、遺言がなければ相続人同士で話し合って決めます。
法定相続分は絶対ではなく、目安のようなものと考えてください。
ただし、前述のとおり、相続人の誰か一人に財産を集中させて相続させるなど、極端な分け方のケースもあります。
そこで役立つのが、遺留分という概念です。
遺留分とは
遺留分は、最低限もらえる遺産のことをいいます。
法定相続分の半分が遺留分とされています。
相続人は、相続できる権利を持っています。
たとえ親や兄弟姉妹であったとしても、他人の相続の権利を侵害することはできません。
例えば、誰か一人だけに財産を多く相続させようという遺言のせいで、他の人の遺留分を侵害してしまったとします。
簡単に言うと最低限もらえるものも、もらえない状態になってしまったということです。
これは、他の人の遺留分を侵害していることになります。
侵害された側の人は、遺留分を支払えと主張できます(遺留分侵害請求)。
なんとなくの合意や口約束はしない
言った言わないのトラブルを避けるために、なんとなくの合意や口約束はしないようにしましょう。
親戚であっても、トラブルを避けるためにきちんと協議内容などは書類に残しておくべきです。
相続人同士で交流をできるだけ持つ
相続人同士で交流をできるだけ持つようにしてください。
物理的な距離や心理的な壁があって、なかなか交流できないという人は、せめて相続人を把握しましょう。
戸籍を辿ってみるなどして、相続人になりそうな人を事前にピックアップしておくのです。
もちろん、親戚の中でも誰が相続人になるのかは、その時々によって違います。
相続とは関係ないタイミングでも家系図を作成しておくなどして、親戚の人数や関係性を把握しておけば、相続が起きたときでもスムーズに対応できます。
弁護士や司法書士などの専門家を頼る
最後に、もめそうになったら、早めに弁護士に相談してください。
また、もめないために対策をしたいという場合は、司法書士に依頼して書類を作成してもらうといいでしょう。
もめてしまった、あるいはもうもめることが明らかであれば弁護士に依頼することがおすすめですが、そこまで事を荒立てたくないときは司法書士に相談すると安心です。
まとめ
今回は、親戚間でよくある相続トラブルについてご紹介しました。
親戚間での相続トラブルを100パーセント予防することは大変難しいですが、対策をしておくことでトラブルになりにくくすることは可能です。
また、トラブルになったとしても人間関係が壊れるほどの衝撃は避けられるでしょう。
事前の対策をきちんと取って、トラブルを予防してください。