この記事でわかること
- 新型コロナが原因の相続税納付延長について理解できる
- 相続税の納付期限延長手続きについてわかる
- 相続税申告や準確定申告の延長が認められるケースがわかる
新型コロナによる外出自粛などで、思うように相続手続きが進まないことがあります。
新型コロナの影響で相続手続きが難しいときや、相続手続きが遅れてしまっている場合は、相続税申告などの相続手続きを延長できる可能性があるのです。
この記事では、新型コロナが原因の相続税などの相続手続きの延長や、相続手続きの延長が認められる理由などを解説します。
目次
新型コロナウイルスが原因の相続税納付延長の概要
相続手続きの中でも、相続税の申告は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」という期限が定められています。
たとえば被相続人が1月5日に亡くなった場合、相続税の申告期限は11月5日です。
相続税の申告は、基本的に申告期限内におこなわなくてはいけません。
しかし、新型コロナという不測の事態により、相続税をはじめとした期限が定められている相続手続きを期限内におこなうことが難しいケースが考えられます。
期限内に相続税申告ができないと、加算税や延滞税などがかかる可能性があるため、相続人にとって新型コロナを理由に相続手続き期間の延長ができるかどうかは重要な問題です。
新型コロナを理由とした相続税申告などの相続手続き期間の延長は認められるのでしょうか。
新型コロナを理由に相続税申告・納付の延長は可能
新型コロナを理由とした相続税の手続き延長が認められています。
国税通則法には「災害その他やむを得ない理由がある場合は申請により期限の延長を認める」というルールがあります。
新型コロナは国税通則法の定める「やむを得ない理由」に該当すると考えられるため、相続税の申告や納付の期限延長を認めてもらえる可能性があるのです。
新型コロナを理由に相続税申告・納付の延長を認めてもらうためには、期限延長の手続きをする必要があります。
相続税の期限延長手続き方法
相続税の申告・納付を延長するときは、書面に相続税申告・納付の期間延長をする旨を記載する方法によっておこないます。
ただ、相続税申告・納付の場合は、事前に期間延長の手続きをするわけではありません。
新型コロナによる相続税申告・納付の期限延長は、相続税申告のときに申告用紙を使っておこなうのです。
新型コロナの流行により「やむを得ない」と相続人が判断し、相続税の申告を遅らせていたとします。
新型コロナが収束し、相続税の申告・納付ができるようになりました。
このときに相続税の申告用紙の右上の余白部分に「新型コロナの流行による相続税申告・納付の期限延長申請」と記載すれば、期限延長手続きは完了です。
専用の書面で期限延長を申請するのではなく、相続税申告の書面を期限延長の申請書としても活用するのです。
e-Taxで相続手続きをおこなう場合は、相続税の申告書等送信表(兼送付書)の「特記事項」という欄に同様の文言を記載して、期限延長の手続きをします。
複数の相続人が1通の相続税申告の書面で手続きする場合は、その申告書ですべての相続人が相続税申告・納付の期限延長申請が可能です。
相続人ひとりひとりが別々に相続手続きをする場合は、相続人それぞれが申告書に上記のような文言を記載して、新型コロナによる期限延長申請をしなければいけません。
相続税の申告・延長が認められるには
相続税の申告・納付の期限延長が認められるためには「やむを得ない理由」と認められる必要があります。
新型コロナに関するやむを得ない理由には以下のようなものがあります。
- ・新型コロナウイルスに感染してしまった
- ・新型コロナウイルス感染症の影響で体調が思わしくない
- ・自治体からの要請で在宅勤務をしている地域である
- ・新型コロナウイルスの感染対策として外出を自粛している
- ・この他に新型コロナウイルスの影響で相続手続きの期限まで申告や納付が困難である
このように、新型コロナに関する「やむを得ない理由」はかなり緩やかになっています。
相続税申告の延長期限は2カ月
相続税申告・納付の延長期限は「やむを得ない理由がなくなってから2カ月」です。
新型コロナなどの場合は、やむを得ない理由がなくなるのはいつかが問題になります。
新型コロナの場合は、各都道府県により対処や感染状況が違っています。
外出自粛などの状況も人や地域によって異なるため、何を持ってやむを得ない理由がなくなったかの判断が難しいのです。
新型コロナによる相続税申告・納付の期限延長については、客観的な判断基準はありません。
基本的に主観的な判断基準で差し支えないとされています。
たとえばAさんが「新型コロナの感染拡大により外出を控えている」ということであれば、Aさんが新型コロナの感染拡大の不安が解消した判断した時点から2カ月が期限です。
やむを得ない状況の判断基準は主観によるものなので、2カ月以内という延長した期限自体は定められていますが、期限は存在しないようなものです。
ただし、あまりに相続税申告を主観による判断で先延ばしにしていると、税務署から疑われる可能性も考えられます。
念のために税理士などに相続税申告・納付の期限延長について確認しておくことをおすすめします。
相続税申告・納付の延期限延長と納税猶予は別
相続税の申告・納付の期限延長の相続手続きと、相続税の納税猶予の手続きは別物です。
相続税申告・納付の期限延長の手続きをすれば自動的に納税猶予を受けられるわけではなく、あくまで相続手続きの期限が延長されるだけになります。
延長後の期限まで相続税を納付することが難しい場合は、あらためて納税猶予制度などの手続きを取る必要があるのです。
新型コロナの影響で相続手続きが難しい場合とは別に、相続税自体の納付が困難な場合などは、税理士に相談してみるといいでしょう。
相続税申告・納付の延期限延長時の特例に注意
相続税申告・納付の期限延長の際は相続税の特例に注意が必要になります。
相続税の負担軽減のために使える特例には、利用条件があるのです。
特例は利用条件に当てはまっていないと使えません。
新型コロナを理由に相続手続きの期限延長をするときは、延長した期限の間においても特例の条件を満たし続けなければならないと考えられます。
たとえば小規模宅地などの特例を利用する場合は、相続手続きの延長した期限まで被相続人の自宅に住み続けることや、保有を続けなければならないと考えられるのです。
新型コロナで相続税の申告・納付の期限を延長する場合は、相続手続きで使える特例などの条件をあらためて確認しておくことが重要になります。
税理士などの専門家にも相談しておくと安心です。
準確定申告も延長ができる
準確定申告とは、亡くなった人の確定申告のことです。
通常の確定申告は1月1日~12月31日までの収支を申告します。
年度の途中で亡くなった被相続人は自分で確定申告できず、1月1日~12月31日という区切りでの確定申告もできません。
そのため、相続人などが代わって亡くなった日までの収支を確定申告することを、準確定申告といいます。
準確定申告の期限は4カ月ですが、新型コロナを理由に期限の延長が可能です。
新型コロナによる準確定申告の期限延長も、相続税と同じ方法でおこないます。
準確定申告の申告書に右上の余白に「新型コロナによる申告・納付期限の延長申請」と記載して提出します。
まとめ
新型コロナを理由として、税金の相続手続きの期限延長が認められます。
しかし、認められるのはあくまで期限の延長で、納付自体をしなくてよいわけではありません。
相続税納付や相続税の計算、遺産調査などをしなくていいわけでもなく、期限にあわせて相続税申告・納付の準備を整えなければならないのです。
税金の相続手続きの期限は伸びても、準備を進めておくことが重要になります。
延長後の期限までに申告・納付できるよう、あらかじめしっかり準備しておきましょう。
相続税の申告・納付の手続きでわからないことがあれば専門家に相談して準備を進めることをおすすめします。