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最終更新日:2024/1/12

親の遺産は長男・長女が独り占めできる?相続トラブルや遺産相続の割合・遺留分について

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 親の遺産を相続する時に長男や長女が優先されることはないことがわかる
  • 長男や長女に優先的に遺産相続させるための方法があることがわかる
  • 長男や長女に多くの遺産を相続させる際の注意点がわかる

親が亡くなって相続が発生すると、親の遺産を相続人である子供が相続します。

子供が何人かいる場合、誰がどれくらいの遺産を相続するかでトラブルになることがあります。

特に、長男や長女がより多くの遺産を相続すべきとして、兄弟間で揉めることも少なくありません。

ここでは、長男や長女が遺産相続で優先されるわけではないこと、そして長男や長女に遺産を多く残したい場合の方法を解説します。

遺産相続で長男・長女が優先されることはない

親の遺産を相続する際に、長男や長女が、長子であることを理由に多くの遺産を相続したいと主張するケースがあります。

しかし、遺産相続において長男や長女が優先されることはありません

遺産を相続するのが誰であるか、また、相続する財産の割合については、法律で定められています。

法定相続人の決め方

被相続人との関係に基づいて、法定相続人になる人が決定されます。

まず前提として、被相続人の配偶者は常に法定相続人となります。

その上で、下記の順に該当する人がいるかどうかを確認し、該当する人が法定相続人となります

法定相続人になる人がいた場合、それ以後の順位に該当する人は、たとえ被相続人との関係が密接でも法定相続人にはなりません。

  • 第一順位 被相続人の子供
  • 第二順位 被相続人の直系尊属(親など)
  • 第三順位 被相続人の兄弟姉妹

法定相続分の決め方

法定相続人となる人が決まったら、各相続人の法定相続分の計算ができます。

配偶者を含めた法定相続分の計算は、どの順位の人が相続人になったかにより異なるため、間違えないようにしましょう。

  1. 第一順位の子供が法定相続人になる場合
    配偶者が1/2、残りの1/2を子供で均等に分ける
  2. 第二順位の直系尊属が相続人になる場合
    配偶者が2/3、残りの1/3を直系尊属で均等に分ける
  3. 第三順位の兄弟姉妹が法定相続人になる場合
    配偶者が3/4、残りの1/4を兄弟姉妹で均等に分ける

配偶者とそれ以外の相続人では、法定相続分に違いがあります。

一方、子供同士や兄弟姉妹同士では、生まれた順番による違いはありません。

遺留分

法定相続分は、各相続人がどれだけの遺産を相続できるかの目安となります。

これに対して、全ての財産を特定の者に相続させるといった内容の遺言があった場合であっても、兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分という遺産に対する最低限の権利があります

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に対して発生します。

  1. 第一順位の子供が法定相続人になる場合
    配偶者が1/4、子供が全員で1/4の遺留分を有する
  2. 第二順位の直系尊属が法定相続人になる場合
    配偶者が1/3、直系尊属が全員で1/6の遺留分を有する
  3. 第三順位の兄弟姉妹が法定相続人になる場合
    配偶者が1/2の遺留分を有する(兄弟姉妹は遺留分なし)

なお、法定相続人が配偶者だけの場合、あるいは配偶者がいない場合にも遺留分は発生します。

遺留分についても、子供同士の間では、生まれた順番による金額の差はありません。

長男・長女に遺産を相続させる方法

子供が何人かいる場合、遺産を相続する時には、すべての子供は均等に遺産を相続する権利を有しています。

ただ、親が子供に遺産を引き継がせる時に、長男や長女が多めに相続してほしいと考えることがあります。

この場合、何もせずに相続が発生しても、長男や長女に多くの遺産を相続させることはできません。

生前に対策をしておくことで、はじめて長男や長女に遺産を多く残すことができます。

ここでは、長男・長女に多く遺産を渡す方法についてご紹介します。

生前贈与を行う

多くの財産を残したいと考える人がいる場合、その人に対して財産を贈与することができます

財産を贈与すれば、自身が亡くなった後、残された相続人がどのような話し合いを行ったとしても、確実に財産を渡すことができます。

ただし、生前贈与の場合には、相続が発生した際に、相続財産の前渡しを受けたものとして(特別受益)、生前贈与を受けた者の相続分が減らされる場合があるので注意が必要です。

財産を贈与するには、財産を渡す人ともらう人の間で贈与契約を結ぶ必要があります。

子供と贈与契約を締結した上で、その取り決めにしたがって財産を子供に移転します。

また、一定の金額以上の場合には、贈与税が発生する場合があるため、贈与税の計算を行い、必要に応じて申告・納税します。

遺言書を作成する

自身が亡くなって相続が発生すると、相続人が遺産分割協議と呼ばれる話し合いを行います。

そして、遺産を誰がどれだけ相続するのかを決定します。

しかし、被相続人が遺言書を作成している場合は、遺産分割協議を行う必要はありません。

相続人同士の話し合いではなく、被相続人が作成した遺言に基づいて遺産を引き継ぐこととされるためです。

そこで、長男や長女に遺産を相続させたいと考える人は、遺言書を作成しその旨を記載しましょう。

こうすることで、長男や長女に多くの遺産を相続させることができます。

生命保険に加入する

生命保険の契約を行い、死亡保険に加入すると、亡くなった時には受取人に保険金が支払われます。

保険金の受取人は、相続人同士の話し合いで決定されるものではなく、生命保険の契約者が決定するものです。

そこで、長男や長女を死亡保険金の受取人とする生命保険に契約します。

すると、長男や長女は確実に死亡保険金を受け取ることができます。

死亡保険金は相続財産ではなく、原則として、法定相続分や遺留分の計算で考慮しなくていいことも、メリットといえます。

長男・長女に遺産を相続させるときの注意点

長男や長女といった特定の相続人に、多くの遺産を相続させる方法があることはわかりました。

これらの方法を組み合わせて実行すれば、思いどおりに遺産を相続してもらうことができるでしょう。

ただし、これらの方法を実行する際には、いくつか注意点があります。

元気なうちに実行する

生前贈与や遺言書の作成、生命保険契約はいずれも法律行為のため、亡くなってから実行することはできません。

相続対策と呼ばれるこれらの行為は、実際には相続が発生する前に実行する必要があるので、注意が必要です。

しかも、ただ生きていればそれでいいというわけではありません。

認知症などで判断能力が低下した人は、法律行為を行うことができない場合もあります。

そのため、元気なうちにこれらの対策を実行する必要があります。

判断能力が疑われる状態で相続対策を行うと、その行為の無効を主張されることもあり、トラブルの原因となってしまいます。

遺留分を考慮に入れる

法定相続人の中には、遺留分という最低限相続できる割合を有する人がいます。

この遺留分を無視して遺言書を作成すると、多くの遺産を相続する人がいる一方で、相続資産が遺留分に満たない人が現れることもあります。

遺留分に満たない人は、多くの遺産を相続した人に対して不足分を請求することができます。

しかし、多くの遺産を相続した人も、不足分を簡単には支払えないケースもあり、すんなり解決するとは限りません。

そのため、遺言書を作成する人は、それぞれの相続人の遺留分を考慮に入れておく必要があります。

その上で、遺留分がある人については最低でもその遺留分を下回らないようにしましょう。

こうすることで遺言がすんなりと成立し、相続人同士の対立を防ぐことができるはずです。

証拠書類を残しておく

生前贈与を行った場合、その贈与は贈与税の対象となります。

そこで、1年間に贈与する金額を基礎控除額の110万円以内に抑え、贈与税が発生しないようにすることがあります。

しかし、贈与を行った際に書類をきちんと作成していないと、税務署から贈与が成立していないと指摘されることがあります。

贈与が成立していない場合、贈与したはずの財産はすべて相続財産として相続税の課税対象となります。

そのため、長男や長女に多くの遺産を相続させることができる代わりに、多額の相続税が発生します。

また、贈与が行われたと示す書類がないと、被相続人のお金を長男や長女が引き出したのではないかと指摘される可能性もあります。

他の相続人からすれば、長男や長女が多くの財産を手にしている一方で、自身の取り分が減っているのは面白くありません。

余計な指摘を受けることのないよう、形式的な書類は必ず残すとともに、振込をして証拠が残るようにしておきましょう。

まとめ

遺産を特定の相続人が多く相続できるようにすると、他の相続人から不満が出る可能性は非常に高くなります。

そのため、他の相続人の権利にも配慮した形で、遺言を作成し、また贈与を行う必要があります

また、贈与は税務署からの指摘を受けることも多く、特に注意しなければなりません。

贈与契約書を作成する、贈与の証拠を残しておくなどの対策を行い、相続税の申告の際に指摘を受けないようにしましょう。

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