財産が多くあると、将来、相続が発生した際に相続税の支払を避けては通れません。また、財産が多くないと思っている人も、実際に相続が発生した時に相続税の負担に悩まされる可能性があるため安心できません。ここでは、相続税額を少しでも減らすための方法について解説します。ぜひこの記事を参考にして、自分にあった相続対策を考えてみましょう。
相続財産を減らすため贈与を計画的に実行しよう
相続対策は財産を持っている被相続人が生きているうちでなければできません。そのため、相続税の負担を減らしたいと考える方は、少しでも早く相続対策を考えて実行することが大事です。
相続対策を考えるうえでのポイントは、1:相続財産自体を減らす、2:相続財産の評価額を下げる、3:納税資金を確保する、の3点となります。
まず1:相続財産自体を減らすのは、相続する財産が少なくなれば相続税も少なくなるからです。ただ、だからといって散財しても意味がありません。もっとも簡単かつ確実な方法は、生きているうちに相続人に贈与しておくことです。
贈与税には、受贈者一人あたり110万円の基礎控除があるため、その金額内であれば贈与を行っても贈与税はかかりません。また、教育資金や住宅取得の資金などについては、贈与税がかからない特例もあります。このような制度を上手に利用すれば、相続財産を減らすことができます。
財産のかたちを変えたら相続税額も縮小できる
次に2:相続財産の評価額を下げる方法を説明します。相続財産の評価額はその財産の種類によって変わります。現金や預金を相続する際はその残高が評価額となりますが、不動産や株式の評価額はそれぞれ計算方法が定められており、購入金額や取引価格とは異なります。
一般的に、不動産の相続税評価額は取引金額の8割程度になります。例えば、1億円で購入した土地の相続税評価額は8000万円程度になるため、多額の現金を持っている人は、現金を土地に変えるだけでも相続財産の評価額を下げることができるのです。
また、購入した土地に賃貸アパートを建てると土地の評価額はさらに下がります。例えば、先ほどの土地にアパートを建てたとします。その土地の借地権割合が70%、借家権割合が30%の場合、土地の相続税評価額は8000万円×(1-70%×30%)=6320万円となるのです。さらに建設した建物の評価額も30%減額することができるため、土地と建物の評価額は現金として保有していた場合に比べて数千万円単位で減少します。また、賃貸物件を保有していれば家賃収入を得られるメリットもあります。
相続税は納税までが重要 納税資金の準備方法も考えよう
相続対策を考えるうえで欠かせないのが3:納税資金の確保についてです。というのも②のように、現金や預金を不動産などに変えるのは相続財産の評価額を下げるのには有効ですが、現金や預金の残高を減らすこととなるため、いざ相続が発生した際に相続税が支払えないことにもなりかねないのです。
相続財産の評価額を下げるのは重要ですが、現金や預金を確保しておくのも忘れてはなりません。また、生命保険契約を利用すれば、相続人1人あたり500万円までは相続税がかからないため、確実に納税資金を確保することができます。相続税は、被相続人が亡くなってから10か月以内に相続税を一括で納付するのが原則です。相続が発生してあわてることのないようにしましょう。
遺産を小分けにしてトラブルは回避しよう
相続の際にトラブルになる一番の原因は、相続人全員が納得のいく遺産分割ができないためです。遺産分割でもめる可能性を少しでも減らすためには、遺産を分割しやすくしておく必要があります。現金や預金を不動産に変えるのであれば、大きな物件を1つ購入するのではなく複数の物件を購入すれば、遺産分割の際にもめる可能性を下げられます。また、逆に不動産を売却して現金化しておくこともトラブルの回避には有効です。
まとめ
相続税の負担を少なくしたいと誰もが考えますが、相続対策を計画的に行わないと、相続税が支払えなくなったり、遺産分割の際にもめる原因になったりします。また、相続対策として生前贈与を活用すれば相続財産を減らせますが、贈与税の税率は相続税の税率より高いため、トータルの税負担がかえって増えてしまうこともあります。相続人と被相続人がコミュニケーションをとって、長期的な視点で相続対策を行うようにしましょう。