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最終更新日:2024/11/8

相続人の一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書式や書き方を解説

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

東京弁護士会所属。
相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。
お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/

相続人の一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書式や書き方を解説

この記事でわかること

  • 一人で全て相続する場合に遺産分割協議書が必要か
  • 一人で全て相続する場合の遺産分割協議書の書き方

相続人が複数いるにも関わらず、相続人間の話し合いや遺言書の指定で一人が全ての遺産を相続するケースがあります。
この場合、遺産分割協議書の要否はケースによって異なります。

遺産分割協議書は、相続人全員の合意で遺産の分割方法を定め、証拠として記録するための書類です。
必要であるにも関わらず作成をしていない場合、思わぬトラブルにつながるケースもあるため注意しましょう。
ここでは一人で全て相続する場合の遺産分割協議書の要否や具体的な書き方などを解説します。

一人が全ての遺産を相続するときは遺産分割協議書は必要?

一人が全ての遺産を相続するときに遺産分割協議書が必要かどうかは、ケースによって異なります。

ここからは、遺産分割協議書が必要なケースと不要なケースを見ていきましょう。

遺産分割協議書が必要なケース

次のケースでは、遺産分割協議書が必要です。

相続人間の話し合いで決まった

話し合いで一人が全ての遺産を相続する場合、遺産分割協議書を作成し、相続人全員で記名捺印します。

遺留分を主張する相続人がいる

たとえば遺言書の指定で相続人の一人が全て相続する場合、遺産分割協議書は不要です。
ただし他の相続人は遺留分を請求できます。
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)に認められた最低限の相続分です。
請求される可能性がある場合、遺産分割協議書を作成しましょう。

遺産分割協議書が不要なケース

次のケースでは、遺産分割協議書は不要です。

相続人が一人しかいない

全ての遺産を一人が承継するため、遺産分割協議書は不要です。

他の相続人全員が相続放棄した

相続放棄をすると、元より相続人でなかったとして扱われます。
他の相続人全員が相続放棄をした場合、遺産分割協議書も必要ありません。

遺言書で指定されている

遺言書で遺産の相続を特定の一人のみに指定できます。
前述の通り、他の相続人は遺留分を請求できますが、関係が良好であり請求がない場合は不要です。

【書式付き】一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書き方

ここからは、一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書き方を見ていきましょう。

一人で全て相続するときの遺産分割協議書の書式

一人で全て相続するときの遺産分割協議書の書式は、以下の通りです。
一人が全てを相続するときの遺産分割協議書の書式と書き方
続いて、一人の相続人が全ての遺産を相続する場合に作成する遺産分割協議書の書き方を解説します。

表題、被相続人の情報

遺産分割協議書を作成したら、この書面が遺産分割協議書であると明示するために表題をつけます
誰の遺産について記載しているのかがわかるように、まずは被相続人の情報を記載しましょう。
記載する情報は、氏名、生年月日、死亡日、本籍地、最後の住所地などです。

遺産分割協議書

相続人の情報

遺産分割協議の結果、実際に遺産を相続する人は一人になるケースがあります。
ただし、冒頭には全ての相続人の氏名や続柄を記載してください。
全ての法定相続人が遺産分割協議へ参加した事実を明示するためです。

〈例文〉

被相続人相続太郎(以下「被相続人」という)の遺産相続につき、被相続人の妻相続花 子(以下「甲」という)、被相続人の長男相続一郎(以下「乙」という)、被相続人の長女分割桃子(以下「丙」という)、被相続人の次男相続次郎(以下「丁」という)の相続人全員が遺産分割協議を行い、本日、下記のとおりに遺産分割協議が成立した。

実際に相続した人と遺産の内容

どの相続人がどの遺産を相続したのか、相続した人と遺産の内容を誰が見てもわかるように記載します。
全ての遺産が、登記事項証明書や通帳の内容と相違ないように記載しましょう。
全ての遺産について記載しなければならないため、漏れがないように確認してください。
遺産分割協議書

あとから遺産が見つかった場合の対処法

遺産分割協議を行った時点で、全ての遺産を相続人が把握しているとは限りません。
あとから遺産が見つかり、誰が相続するのかを決めなければならない場合、再び相続人全員が集まるのは労力と時間がかかります。
そこで、改めて遺産分割をするのではなく、遺産分割協議書にあらかじめ誰が相続するのかを決めておきましょう
一人ですべての遺産を相続する場合、その人が相続できるように記載しておく必要があります。

〈例文〉

本協議成立後に新たに遺産が見つかった場合は、全て甲が取得する。

債務の負担

被相続人の相続財産に債務がある場合、原則として法定相続分に応じて相続人全員に分割して承継されます。
相続人の負担割合を遺産分割協議で決め、相続人のうちの一人に債務を相続させる方法も可能です。
一人に相続させる際は、債務を相続した相続人が他の相続人に法定相続分に従った負担分を求償するかどうか記載しておいた方がよいでしょう。
なお、遺産分割協議で債務を相続する人を決定しても債権者が承諾しない限り対抗できず、それぞれの相続人が法定相続分に従って負担しなければなりません。

〈例文〉

甲が相続する遺産には被相続人の債務も全て含まれる。また、甲は、被相続人の債務の弁済について乙及び丙に対して求償しない。

締めの言葉と署名、押印

相続人全員の合意により遺産分割協議が成立した事実を明らかにするため、相続人全員が署名し、実印を押印します。
遺産分割協議書

一人が全ての遺産を相続するときの注意点

一人の相続人が全ての遺産を相続する場合、遺産分割協議書の作成だけではなく、遺産分割の際に以下のような注意点があります。

  • 相続人や遺産の調査は慎重に行う
  • 他の相続手続きの期限内に遺産分割協議書を作る
  • 相続放棄するときは相続権の移動を確認する
  • 相続税と控除を確認する

それぞれの注意点について詳しく解説します。

相続人や遺産の調査は慎重に行う

被相続人の配偶者や子どもが一人で相続する場合、相続人の血縁関係や遺産の内容を詳しく調べないまま遺産分割を進めているケースがあります。

被相続人の血縁関係を調査すると、隠し子や前妻との子など、想定していなかった法定相続人がいる場合もあります
また、相続人の誰もが知らなかった遺産や借金があとから発覚するかもしれません。
この場合、遺産分割協議のやり直しや、想定していなかった借金の返済が必要になる可能性があります。
相続人の血縁関係や遺産の内容に不明な点がある場合、専門家に調査を依頼しましょう。

他の相続手続きの期限内に遺産分割協議書を作る

法律上、遺産分割協議書の作成に期限はありません。
ただし次の手続きをする場合などは遺産分割協議書の提出が必要です。

  • 相続税申告:相続税の開始を知った日から10カ月以内
  • 相続登記:不動産の相続を知った日から3年以内
  • 特別受益、寄与分の請求:相続の開始後10年以内
  • 自動車の名義変更:所有者の確定後15日以内
  • 預金口座の凍結の解除:金融機関の規定による

遺産分割協議書の作成には時間がかかるケースもあるため、期限がある場合は余裕をもって準備を進めましょう。

相続放棄するときは相続権の移動を確認する

相続人全員が相続放棄をした場合、遺産分割協議書は不要です。
ただし、相続放棄によって後順位の法定相続人へ相続権が移るケースがあります。
民法上、法定相続人は次の①と②です。

  • ①配偶者
  • ②次のうち最も高順位の者
    第1順位:子供
    第2順位:父母
    第3順位:兄弟姉妹

たとえば配偶者が全て相続するため、共同相続人の子が相続放棄した場合、もし父母が存命であれば相続権が移ります。
この場合、配偶者が全てを相続するには、配偶者と子による遺産分割協議が必要です。

相続税と控除を確認する

相続税を計算するには、まず課税される遺産から基礎控除を差し引き、課税遺産総額を算出します。

  • 課税遺産総額=課税財産-基礎控除
    (※基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数)

相続人が一人の場合、課税遺産総額に相続税率(10%~55%)を乗じて計算します。
課税遺産総額がゼロの場合、相続税の申告は不要です。
相続人によっては次のような各種特例が適用されるため、事前に確認しましょう。

  • 配偶者の税額軽減
  • 障害者控除
  • 未成年者控除

一人が全ての遺産を相続するときによくある質問

一人が全ての遺産を相続するときによくある質問は、以下の通りです。

  • 遺産分割協議書は何通必要?
  • 一人で全てを相続すると決まった後に遺留分は請求される?

それぞれの質問について詳しく解説します。

遺産分割協議書は何通必要?

遺産分割協議書は、次の通数を原本として作成しておきましょう。

  • 遺産分割協議に参加した相続人の数+原本が必要となる提出先の数

相続人が複数いる場合、それぞれの控えとして原本を作成します。
相続の手続きで遺産分割協議書を提出するとき、一般的に原本が必要ですが、提出先によっては原本を返却してもらえます。
たとえば法務局で相続登記をする場合、原本と「原本と相違ない」旨を記載した写しを両方提出して、原本還付の手続きを行います。

一人で全てを相続すると決まった後に遺留分は請求される?

遺留分は、遺産分割協議により相続人全員で合意した後は請求できません。

遺言書の指定で一人が全ての財産を相続する場合、他の相続人は遺留分を請求できるため、遺産分割協議が必要なケースがあります。
ただし遺留分には時効が定められているため、次の期間を経過した後は遺言書の指定による場合も遺留分を請求できなくなります。

  • 相続開始と遺留分の侵害があるのを知ってから1年を経過したとき
  • 相続開始後10年を経過したとき

まとめ

一人で全ての遺産を相続する場合、相続手続きは簡易になる傾向にあります。
ただし遺産分割協議書を作成しておかないと相続手続きが進まない場合もあるため、事前に確認をしておきましょう。

相続手続きは一般的になじみのない方も多く、不安がある場合は専門家へ依頼するのも一つの方法です。
たとえば遺産分割協議書の作成は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士などへ依頼できます。
報酬は発生しますが、作成にかかる時間や手間を削減し、相続手続きを円滑に進められるでしょう。

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