相続財産の名義変更などの各種手続き
遺産分割協議で、誰が財産を相続するかが確定したら、速やかに名義変更の手続きをしましょう。
預貯金は銀行に、金融資産は証券会社や信託銀行に、不動産は法務局に、というように財産ごとに名義変更の手続きをします。
これらの名義変更に期限はありません。
しかし、名義変更をしないといつまでも口座は凍結されたままですし、許可なく土地を売却されるといったトラブルに発展する可能性もあります。
できるだけ速やかに手続きをしてください。
主な財産ごとの手続きを見ていきましょう。
預金
▲図表6−3
遺産分割協議が成立し、被相続人の財産を引き継ぐ人が確定すれば、凍結されていた被相続人の銀行口座から預金を払い戻せるようになります。
ただし、実際に預金の名義変更や払い戻しをするのに早くても2~3カ月かかる可能性があります。
預金の払い戻しなどを行うには被相続人の死亡戸籍や相続人全員の現在の戸籍、相続人の印鑑証明書、実印、そのほか金融機関が指定する書類の提出が必要です。
これには準備に時間がかかります。
有価証券
▲図表6−4
株式などの有価証券は、証券口座のある窓口で手続きします。
基本的に銀行と同じ流れですが、有価証券を換金して相続人で分けるときは、代表者相続人口座をつくって名義変更した上で、売却後に現金を分配します。
売却のタイミングによって値動きがありますから、できるだけ値段の高いタイミングを狙うといいでしょう。
不動産
遺産分割協議に基づいて所有権移転登記を申請する場合、登記申請書類には、相続人全員の署名と押印が必要です。
また、以下のような添付書類を提出します。
添付書類
- 被相続人の戸籍謄本
- 遺産分割協議書
- 相続人それぞれの現在の戸籍謄本
- 遺産分割協議書に押された相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票の写し
遺産分割協議では合意したのに、不動産の所有権移転登記手続きに際して押印を拒む、または必要な書類を提供しない共同相続人がいる場合もあるかもしれません。
そうした場合でも、遺産分割協議書に実印が押されていて、その実印の印鑑証明書があれば登記申請手続きを進めることができます。
ほかの相続人から提供された書類に不備がある場合は、通常の調停や訴訟で名義変更手続きを求めます。
このとき、遺産分割協議は成立しているため、確実に作成された遺産分割協議書があれば、書類の不備を正すことは難しくありません。
不動産の場合、提出物が多く、相続登記の際に登録免許税を支払うことになるため、つい後回しにしたくなるかもしれません。
しかし、名義変更の手続きをしないままで放置するのは避けるべきです。
相続人であった人が亡くなったり、認知症になったりすると、ますます手続きが複雑になっていきます。
本来は所有権を持たないはずの相続人が勝手に共有持分を売却するような問題も起き得るので、早めの手続きが肝要です。
また、2024年に施行が予定されている「相続登記の義務化」にも注意が必要です。
相続登記が義務化されると、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に相続登記を求められ、期限までに手続きをしなければ10万円以下の過料の対象となります。
なお、遺産分割がまとまらず、相続登記できないときは、相続人であることを申告すれば一時的に相続登記の義務を免れます。
ただし、遺産分割がまとまった日から3年以内に相続登記をする必要があります。
▼もめない遺産分割の進め方 シリーズ
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- もめない遺産分割Vol4-遺産分割でもめる理由とトラブルパターンを紹介
- もめない遺産分割Vol5-遺言書の内容は絶対?相続人全員が納得する遺産分割の必要性
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