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相続放棄がトラブルの種になることも
相続放棄等をすると、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。
これもメリットの1つと言えるでしょう。
相続放棄のメリット
遺産分割協議では、何かと親族間でもめごとが起こりがちです。
しかし、相続放棄等をすることで、その相続に関する一切のもめごとから解放されます。
たとえば、過度に権利を主張する相続人との話し合いが円滑に進まず、決着がつくまでに何年もの期間を要するとしたら、その間に多大な精神的ストレスを受けてしまいます。
手間や費用の負担も悩ましいです。
このような場合は、相続放棄等をすればただちに相続争いから解放されます。
もちろん、財産の相続を希望するのに、無理に相続放棄等をする必要はないのですが、1つの手段として覚えておくといいでしょう。
プラスの財産が多い場合でも、相続人間でもめごとが起こり、そのトラブルから解放されたい場合は相続放棄等をしたほうがよいかもしれません。
相続放棄のデメリット
一方で、デメリットもあります。
プラスの財産も相続できなくなる
まずは、繰り返しになりますが「プラスの財産も相続できなくなる」という点です。
被相続人に500万円の借金があったとしても、プラスの財産が1000万円あれば、全体的に見て500万円のプラスとなります。
この場合に相続放棄をすれば、借金を返済する必要もありませんが、プラスの財産も受け取ることはできなくなり、結果的に損になります。
ほかの親族に迷惑をかける可能性がある
次に、ほかの親族に迷惑をかける可能性がある点です。
相続放棄をしても借金そのものがなくなるわけではなく、ほかの相続人に移転します。
先ほどのケースでは、妻が相続放棄した場合、子どもが1人あたり500万円ずつ返済しなければならないことになります。
こういった意味から、相続放棄は相続人が単独で手続きができるものの、放棄した事実を別の相続人に速やかに知らせてあげることをおすすめします。
ほかの相続人に知らせずに行うと、争いの原因になりかねません。
場合によっては、相続人全員がそれぞれ相続放棄をして、被相続人の一切の返済義務から免れるという選択もあります。
相続放棄をした人に、次順位の法定相続人がいる場合、その人が相続人となる点も要注意です。
この場合、次順位の人が被相続人の借金の存在を知らずに相続してしまい、親族間でトラブルになるおそれがあります。
事例
たとえば、被相続人が多額の借金を抱えて亡くなった場合、妻と子どもは借金の存在を知り、相続放棄をしたとしましょう。
被相続人に父母がいれば、父母が相続人となります。
この父母が借金の存在を知らなかったとしても、単純承認してしまうと借金も引き継いでしまうのです。
親族の構成によっては、相続放棄をすることで、遠い親戚が知らず知らずのうちに借金を相続してしまうケースが起こります。
「遺産分割の基礎知識|法定相続人の範囲と順位-もめない遺産分割Vol6」で説明したように、相続人は妻子や両親、兄弟姉妹、さらには代襲相続人まで広がる可能性があります。
したがって、ほとんど接点のないような甥や姪が、被相続人の借金を相続する事態になることもあり、トラブルになるのは明らかです。
相続放棄は撤回できない
しかも、いったん相続放棄をすると、その相続放棄を撤回することはできません。
被相続人に借金があると勘違いして相続放棄をした場合や、ほかの親族に迷惑がかかることを知らなかった場合でも、撤回は認められません。
これは、撤回を認めるとほかの相続人や被相続人の債権者、遺産を譲り受けた人などの立場が不安定となり、混乱を招くからです。
状況によっては相続放棄を取り消せる場合もありますが、実際に取り消しが認められるケースはまれです。
相続放棄の取り消しができるのは、たとえば被相続人に多額の借金があるとほかの相続人にだまされたり、あるいは脅されたりしてやむを得ず相続放棄をしたような場合に限定されます。
もしだまされたとしても、普通に調査をすれば真実が判明するような場合には、取り消しは認められません。
また、詐欺や強迫があったとして取り消しが認められるためには、その詐欺や強迫があったことを根拠資料とともに裁判所に示す必要がありますが、何の資料もなければ、取り消しが認められるのは難しいです。
相続放棄は検討する価値のある制度ですが、申し出をするときは慎重さが求められます。
そもそも相続放棄をすべき状況なのか、相続放棄をしたとしてどのような影響があるのかをしっかり確認した上で行ってください。
相続放棄が認められないケース
相続放棄や限定承認をせずに3カ月の期限が過ぎてしまうと、自動的に被相続人の財産と債務のすべてを相続することになります。
そのため、まずは3カ月の期限を意識する必要がありますが、期限が到来する前に単純承認せざるを得なくなる可能性もあります。
遺産に手をつけると相続放棄が認められなくなる
「遺産に手をつけると相続放棄が認められなくなる」というルールがあるからです。
たとえ被相続人の借金の存在を知らなかったとしても、相続財産の一部でも手をつけてしまうと単純承認したものとみなされます。
具体的には、次のようなことが行われた場合が該当します。
- ①遺産である不動産の名義変更や自動車の売却をしたとき
- ②遺産である預貯金を引き出して相続人の生活費に充てたとき
- ③相場よりも豪華な葬儀を行って遺産のなかから葬儀費用を支払ったとき
- ④相続財産のなかから被相続人の借金の一部でも支払った場合
このうち見落としがちなのが④です。
被相続人が亡くなった後に債権者から借金の支払い催促を受けると、慌てて支払いたくなるかもしれませんが、ここは落ち着いてください。
相続財産のなかから被相続人の借金を支払うと、相続財産を処分したことになります。
したがって、相続財産を使って少しでも借金を支払ってしまったら、もはや相続放棄や限定承認はできなくなり、被相続人の借金を相続しなければならなくなります。
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- もめない遺産分割Vol3-なぜ遺産分割を急ぐべき?不公平を生まないために
- もめない遺産分割Vol4-遺産分割でもめる理由とトラブルパターンを紹介
- もめない遺産分割Vol5-遺言書の内容は絶対?相続人全員が納得する遺産分割の必要性
- もめない遺産分割Vol6-遺産分割の基礎知識|法定相続人の範囲と順位
- もめない遺産分割Vol7-【誰がどれくらい相続する?】法定相続分の割合と計算方法
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