一次相続だけでなく二次相続まで見据えて考える
遺産分割を行うときは、目の前の一次相続だけでなく二次相続まで考えることが大切です。
二次相続まで見据えた遺産分割が必要なわけ
たとえば、両親と子2人の家族の場合、両親のどちらかが亡くなると一次相続(残された配偶者と子どもへの相続)が行われます。
次に残された親が亡くなると行われるのが二次相続(子どもだけへの相続)です(図表4−6)。
▲図表4−6
一次相続と二次相続は、多くの方が経験します。
事故で両親ともに同時に亡くなるなどの特殊な状況ではない限り、一次相続、二次相続が行われることになるでしょう。
このときにまず考えたいのが、相続税への影響です。
相続税に影響があるから
配偶者が死亡し、残された側の配偶者が相続するときには配偶者の税額軽減を使うことができます。
ところが、親の財産を子どもが相続する場合においては、この特例を使うことはできません。
もし、相続税対策をしっかりして財産を守りたいのであれば、二次相続まで視野に入れた上で対策をする必要があります。
事例4人家族(両親と子2人)の場合
たとえば、先ほどの4人家族の例で、父親が最初に亡くなったとします。
配偶者が相続をすると、相続税の配偶者控除があるので、法定相続分もしくは1億6000万円まで相続税はかかりません。
そして、相続税の基礎控除額は、3000万円に法定相続人の人数×600万円を足した4800万円です。
二次相続になると、配偶者控除は使えず、相続人が1人減るので、基礎控除額の額も小さくなります。
このケースの場合であれば、4200万円です。
一次相続のことだけを考えれば、残された配偶者に多くの財産を相続してもらい、相続税の配偶者控除を使って相続税の支払い額を小さくすることが可能です。
ただし、二次相続まで考えると必ずしも得策とは言えません。
というのも、ほとんどの財産を残された親が相続するとして、その親が亡くなったときの相続財産は、前の相続で引き継いだ分とその人個人の財産になるからです。
このケースであれば、母親が亡くなったときには、父親から相続した財産に加えて母親の財産も相続財産になり、子どもたちで相続します。
二次相続ではそもそも基礎控除額が少ないのと、親から子への相続の場合は相続税の配偶者控除が使えないので、二次相続で相続税をかなり納めなければならないことになります。
もし、相続税を納められなければ、相続財産を売却する可能性も出るでしょう。
遺産分割がまとまりやすくなるから
二次相続で困らないために、一次相続の時点で二次相続まで視野に入れた遺産分割や相続税対策をすることが重要です。
このように節税効果を考えることで、遺産分割がまとまりやすくなるという副次的効果を期待できます(図表4−7)。
▲図表4−7
「分割割合には少し不満があるけれど、相続税を節税できるなら仕方ない」といった形で、助け舟になるのです。
二次相続まで視野に入れると、遺産の分け方によってトータルの税額が変わってきます。
もちろん、遺産の金額が大きければ大きいほど、遺産分割方法が税額に与える影響も大きくなります。
さらに、節税効果だけでなく、財産をどのように使っていくかという点も考えてください。
節税の意味では子どもが自宅を相続したほうがいいとしても、その自宅に配偶者が住むつもりであれば、考え直す必要があります。
配偶者居住権を活用する(「遺された配偶者を守る「配偶者居住権」-もめない遺産分割Vol18」)などして、各相続人が快適に生活を続けられるように配慮しつつ、節税効果も考えるといいでしょう。
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