被相続人の財産を使うときは証拠を残す

遺産争いが起きるケースとして非常に多いのが「相続人による生前の使い込み」です。

「何に使ったお金なのか」を明確にするため

たとえば、被相続人が入院した後、同居する子が被相続人の通帳の管理を行うことがあります。

このこと自体は問題ありません。

しかし、通帳から不当にお金を引き出して自分のために使い込むと、相続のときに争いの原因になります。

被相続人の生活費や病院の支払いなどに使うのであれば問題ありません。

しかし、いざ親が亡くなると、親のためにお金を使ったのか自分のために使ったのか、見分けるのが難しくなります。

その意味から、親のお金を使うときは「何に支払ったか」という情報を領収書などできちんと残しておきましょう。

１円単位で記録を取る必要はありませんが、少なくとも10万円以上のお金を動かすときは情報を残してください。

こうした書類がないと、ほかの相続人から「自分で使い込んだのでは？」とあらぬ疑いをかけられてしまいます。

相続財産を隠しを疑われる可能性があるため

また、いずれ相続税の税務調査が行われた場合も、こうした使い込みが「意図的に相続財産を隠そうとしたのでは」と疑われる原因になる可能性もあります。

親の死期を前にして預金を引き出すときも要注意です。

葬儀費用などのために、口座が凍結される前に預金を引き出すことはよくありますが、引き出した現金が相続開始時点で現金として残っていれば、遺産分割の対象となります。

そういった意味で、親のお金を相続人の１人だけが管理する状況は避けたほうがいいでしょう。

とくに、親の生前から特定の相続人が財産を一人占めする兆候があれば、相続開始後も情報を隠す可能性があります。

親の財産は、いずれ相続人全員で分けるものとして、一人占めを避ける対策を講じることが重要です。