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代償分割は「代償金をどうするか?」を考える
「親の自宅は、同居している長男が相続する」といったように、不動産を特定の誰かに相続させようとするときは、ほかの相続人にどう財産を分けるかを考える必要があります。
親が多くの預金などを持っていれば、「自宅は長男が相続するから、次男は多めに預金を相続する」といった調整が可能です。
しかし、相続財産に占める金融資産が十分になければ、このような遺産分割はできません。
こうした場合、選択肢に入れたいのが、「遺産分割の4つの方法|相続財産に不動産がある場合は要注意-もめない遺産分割Vol16」で説明した代償分割と換価分割です。
利用するにあたっては、それぞれのメリット・デメリットを理解する必要があります。
(1)代償分割
代償分割は、不動産などの財産を特定の人が相続する場合において、ほかの相続人に対して代償金を支払う形の分割方法です。
注意点:代償金をいくらにするか
たとえば、長男が被相続人から不動産を相続するとして、その代わりに長男からほかの相続人に、代償金として一定の金銭を支払います。
代償分割で気をつけたいのが、まずは「代償金をいくらにするか」という問題です。
「不動産は4000万円くらいの価値だから、代償金は2000万円にする」といったように、相続人同士で話し合って決める必要があります。
当然ながら、代償金を払う人はできるだけ少なく、代償金をもらう人はできるだけ多く、というように利害が対立します。
譲り合いの気持ちを持ちながら、双方が納得できる落としどころを探っていきましょう。
注意点:その代償金を支払えるのか
次に、代償金の金額について合意がとれたとして、「その代償金を払えるのか」という問題があります。
代償分割が行われるのは、主に相続財産に預金などの金融資産が不十分なケースです。
そのため、代償金を払う相続人は、自身がもともと持っていた預金などで支払うことになります。
ですから、代償金を支払えるだけの資金がなければ、資金の捻出法を考えなくてはいけません。
たとえば、収益不動産を代償分割するのであれば、分割払いでもいいでしょう。
収益不動産から毎月一定の賃料が入ってくるわけですから、ここから代償金の分割払いをすれば無理がありません。
しかし、代償金を支払うべき人が、年金収入だけが頼りという状態であれば、代償分割を選ぶのは難しいでしょう。
代償分割を選択するときは、遺産分割が終わった後のことも考える必要があります。
(2)換価分割
換価分割は、遺産となっている不動産を売却し、売却によって得た現金を全員で決めた割合によって分ける方法です。
「親が住んでいた不動産はもう使わないから、売却して現金化したい」「代償分割だと代償金が支払えない」といった場合、換価分割が選択肢に加わります。
換価分割にも、注意点がいくつかあります。
注意点:相続人同士で話がまとまらない
まずは、売却価格についての考えが相続人同士でまとまらない問題です。
早く売却してしまいたい人と、高い金額で売却できるまでじっくり買い主を探したい人とでは、売却価格に対する考え方が異なります。
実際に購入希望者が現れても、相続人同士で合意がまとまらなければ、契約成立は難しいでしょう。
こういった問題を避けるには、換価分割を選択する前に、最低限の売却金額を決めておくことです。
注意点:税金が発生する
次の注意点は、税金の問題です。
土地や建物を売却した場合、売却により生じた利益(譲渡所得)に対して所得税や住民税が課されます。
換価分割を行うには、相続財産となる土地や建物などを売却するわけですから、必ず譲渡所得の問題が起きます。
このようなルールを知らないと、換価分割を行った後に予想外の税金がかかり、「こんなはずじゃなかった」ということになりかねません。
譲渡所得にかかる税金についての詳しい説明は割愛しますが、譲渡所得には、被相続人が住んでいた空き家に使える3000万円控除の特例などがあり、さまざまなルールを考慮する必要があります。
換価分割を行うときは、あらかじめ税金にどのような影響があるのかを税理士に相談することをおすすめします。
▼もめない遺産分割の進め方 シリーズ
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- もめない遺産分割Vol4-遺産分割でもめる理由とトラブルパターンを紹介
- もめない遺産分割Vol5-遺言書の内容は絶対?相続人全員が納得する遺産分割の必要性
- もめない遺産分割Vol6-遺産分割の基礎知識|法定相続人の範囲と順位
- もめない遺産分割Vol7-【誰がどれくらい相続する?】法定相続分の割合と計算方法
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