生前の贈与や寄与は情報共有しておくべき
相続をきっかけに、被相続人からの援助を「不公平だ」として、不満が噴出することもあります。
「お兄ちゃんは私立に行ったのに、私は公立しか行けなかった」「あいつは豪華な結婚式の費用を出してもらった」「仕送りが私だけ少なかった」といった話が出てくるのです。
このような不公平感が原因で、遺産分割がまとまらなくなることは少なくありません。
特別受益とは
「生前贈与が「特別受益」と判断されるポイントとは-もめない遺産分割Vol11」で説明したとおり、被相続人からの生前贈与は「特別受益」として相続財産に含めて考えられます。
生前贈与を受けていない相続人は、生前贈与を受けた相続人よりも多めに遺産を相続するといった調整が必要です。
そのため、被相続人から多くの援助を受けた相続人は、「生前贈与があったことは隠しておきたい」と思うかもしれませんが、ここはきちんと説明しておくのが無難です。
贈与は、あげる人(贈与者)ともらった人(受贈者)の合意で成立するので、贈与の時点でほかの相続人が口を出すことはできません。
しかし、相続のときに特別受益として問題になる可能性がある点は、留意する必要があります。
生前贈与を親子2人だけの秘密と考えていても、意外なタイミングでほかの兄弟に知らされるケースは少なくありません。
また、裁判などで発覚して遺産争いがさらにひどくなる可能性もあります。
こういった意味から、生前贈与の事実があれば、ほかの相続人にも伝えておくことが無難なのです。
寄与分とは
「寄与分」も早めに考えておきたい問題です。
法的には、被相続人の療養看護を行った相続人が仕事を辞めて介護をしたり、介護サービスなどの費用を負担していたりすると、特別に貢献したとして寄与分が認められます。
そして、こうした貢献をした人は、寄与分に応じて財産を取得することができます。
さらに、平成31年(2019年)の法改正では、寄与分が認められていなかった相続人以外の人も、「特別寄与料」を請求できるようになりました。
たとえば、被相続人の子の配偶者などにも、権利が認められる可能性が出てきたのです。
昨今は高齢化社会が進み、多くの家庭で介護の負担が増えていますから、寄与分について考える必要があります。
寄与分の有無や金額について考えが対立すれば、遺産争いにつながる可能性があるからです。
特別受益や寄与分が相続争いの要因となるわけ
特別受益や寄与分が遺産分割の争いにつながりやすいのは、「親への貢献や愛情」という数値化しにくいものであることに関係します。
そのため、被相続人が亡くなった後、相続人同士が話し合いで合意形成するのは簡単ではありません。
ときには訴訟に発展することもあるでしょう。
特別受益や寄与分は、主張すれば必ず認められるものではありません。
生前の情報共有を心がけるとともに、ほかの相続人も納得させられる証拠を残すことが大切です。
- ・贈与については、親子でも贈与契約書を残す
- ・介護をしたのであれば、日誌をつける
- ・金銭の支払いが発生するときは、領収書やレシートを取っておく
このようなことを意識するだけで、相続開始後の無用なトラブル防止につながります。
▼もめない遺産分割の進め方 シリーズ
- もめない遺産分割Vol1-何のために遺産分割するの?必要性とスムーズに進めるポイント
- もめない遺産分割Vol2-遺産分割でもめるケース|問題の長期化を避けるべき理由とは?
- もめない遺産分割Vol3-なぜ遺産分割を急ぐべき?不公平を生まないために
- もめない遺産分割Vol4-遺産分割でもめる理由とトラブルパターンを紹介
- もめない遺産分割Vol5-遺言書の内容は絶対?相続人全員が納得する遺産分割の必要性
- もめない遺産分割Vol6-遺産分割の基礎知識|法定相続人の範囲と順位
- もめない遺産分割Vol7-【誰がどれくらい相続する?】法定相続分の割合と計算方法
- もめない遺産分割Vol8-代襲相続はどこまで続く?相続欠格・相続廃除に該当する相続人を確認
- もめない遺産分割Vol9-養子は実子と同じく相続人になる?「特別養子」「普通養子」の違い
- もめない遺産分割Vol10-遺留分を侵害する遺言はNG!相続トラブル防止のために
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