相続人に失踪者がいた場合
遺産分割協議は相続人全員で行うべきものですが、相続人のなかに音信不通になっている人がいるかもしれません。
行方がわからない相続人がいれば「不在者財産管理人の選任」
まずは戸籍などをたどって連絡先を調べますが、どうしても居場所がわからなければ、家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任」を申し立てることができます。
この手続きをすると、裁判所が不在者財産管理人を選任し、選任された人は不在者に代わって遺産分割協議を進められるようになります。
ただし、この不在者財産管理人は、あくまでも不在者の財産を管理できるというものです。
遺産分割協議を終えた後、不在者が相続することとなった財産を処分するときは、改めて家庭裁判所の許可が必要です。
不在者財産管理人を申し立てるためには、裁判所に納める予納金が必要になります。
これは、不在者財産管理人の報酬に充てられ、通常20万円〜100万円です。
不在者の財産管理が終了した際に予納金が残っていれば、申立人に返還されます。
ただし、予納金は残らないこともあるので、その場合は1円も返還されません。
予納金を納付する場合は、戻ってこないことを覚悟する必要があります。
死亡した者とみなす「失踪宣告」
また、音信不通で行方不明が長期間にわたる場合、「死亡した者とみなす」失踪宣告があります。
これには「普通失踪」と「特別失踪」があり、普通失踪は行方不明になってから7年間、生死が不明の場合にできる宣告です。
一方、特別失踪は沈没した船中にいた場合や、その他生命の危険のある危難にあった場合など、それぞれ1年間生死が不明な場合にできる宣告です。
一般的には特別失踪にあたるケースは少ないと考えられます。
家庭裁判所が普通失踪の宣告をした場合、7年間の失踪期間が満了したときに死亡したものとみなされます。
故人が亡くなった時点で、不在者が死亡していたことになれば、相続人には該当しません。
このときは、不在者を省いた形で遺産分割協議を開始することができます。
ただし、この場合においても不在者の家族構成を調べ、代襲相続が発生していないかどうか必ず確認しましょう。
失踪宣告が取り消されるケース
また、失踪宣告をして死亡したとみなされた者の生存が後で判明した場合、宣告は取り消されることも覚えておいてください。
宣告が取り消された場合の影響は、相続人がその宣告を受けた者の生存を知っていたのか、知らなかったかによって異なります。
相続人の生存を知らずに失踪宣告をした場合は、その相続人は遺産分割で取得した遺産のうち、残っている財産を返すことで問題なしとされます。
しかし、相続人がその生存を知っていた場合、その相続人に対する遺産分割は無効になり、取得した遺産をすべて返さなければなりません。
こうなると遺産分割をやり直す必要があります。
以上のルールがあるため、相続人のなかに生存がわかっているけれど音信不通の人がいる場合、失踪宣告をするのはふさわしくありません。
このような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることを検討しましょう。
相続人のうちの1人または複数で、家庭裁判所に申立てをすれば、裁判所は相続人全員を集め、遺産分割に向けた調停を行います。
もし、遺産分割調停を申し立てても相続人に出席してもらえなければ、「遺産分割審判」に移行することになり、裁判所が遺産分割方法を指示します。
調停や審判について詳しくは「遺産分割協議がまとまらなければ調停、そして審判へ-もめない遺産分割Vol45」で説明しますが、失踪者や音信不通の相続人が絡む場合、遺産分割協議を進めることはとても難しくなります。
専門家である弁護士に相談して進めるのがいいと思います。
▼もめない遺産分割の進め方 シリーズ
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- もめない遺産分割Vol2-遺産分割でもめるケース|問題の長期化を避けるべき理由とは?
- もめない遺産分割Vol3-なぜ遺産分割を急ぐべき?不公平を生まないために
- もめない遺産分割Vol4-遺産分割でもめる理由とトラブルパターンを紹介
- もめない遺産分割Vol5-遺言書の内容は絶対?相続人全員が納得する遺産分割の必要性
- もめない遺産分割Vol6-遺産分割の基礎知識|法定相続人の範囲と順位
- もめない遺産分割Vol7-【誰がどれくらい相続する?】法定相続分の割合と計算方法
- もめない遺産分割Vol8-代襲相続はどこまで続く?相続欠格・相続廃除に該当する相続人を確認
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- もめない遺産分割Vol10-遺留分を侵害する遺言はNG!相続トラブル防止のために
- もめない遺産分割Vol11-生前贈与が「特別受益」と判断されるポイントとは
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