養子は相続人になる
養子縁組とは、血縁関係のない人同士が、法律上の親子関係になることを言います。
養子縁組をして親になった人は「養親」、子どもになった人は「養子」です。
被相続人が養子縁組を行っていた場合、その養子は相続人となるため、ほかの相続人の法定相続分に影響します。
たとえば、配偶者と実子1人が相続人なら、実子の法定相続分は2分の1ですが、1人の養子がいた場合、実子と養子はそれぞれ4分の1が法定相続分となります。
養子縁組に人数の上限はなく、手続きをすれば何人でも養子にすることは可能です。
しかし、養子が増えれば、相続人の数が増えるわけですから、遺産分割協議の合意形成が難しくなります。
相続人が増えると相続税が減る
養子縁組を行う場合、相続税のルールも確認しておきましょう。
相続税は「相続人が増えるほど、相続税が減る」という仕組みです。
相続税の基礎控除や生命保険金・死亡保険金の非課税枠が、相続人の人数に応じて増えるからです。
したがって、養子縁組をすれば、相続人が増えることにより相続税の節税につながることになりますが、無制限に節税できるわけではありません。
相続税の計算上、「実子がいない場合は養子2人まで」「実子がいる場合は養子1人まで」が相続税法上の恩恵を受けることができる上限です。
この上限を超えて養子縁組を行って相続人を増やしても、相続税の節税効果はありません。
また、たとえ上限を超えなくても、税務署から「明らかに税金対策としての養子縁組である」と判断されると、相続税法上の恩恵を受けられないこともあります。
例外的に養子が実子扱いになるケース
ただし、例外として、次の場合は相続税上も養子は実子扱いとなり、人数の制限を受けません(図表2−3)。
- 被相続人の「特別養子」であるケース
- 被相続人が配偶者の連れ子を養子にしたケース
- 実子または養子の代襲相続権を所有するケース
▲図表2−3
「特別養子」と「普通養子」の違い
養子には「特別養子」と「普通養子」の2種類があります(図表2−4)。
▲図表2−4
子どもが実の親に虐待を受けたり、親がなんらかの事情で子どもの監護をできなかったりする事情により、子どもをきちんと育てられる人が養親となるのが特別養子です。
特別養子になると、実父母との親子関係が解消され、実父母からの相続権がなくなります。
その代わりに、養父母からの相続は相続税法上も制限を受けず、実子扱いとなります。
この特別養子には高いハードルがあり、家庭裁判所の審判を経なければなりません。
養子が養親より先に亡くなったときには、その養子の子どもが代襲相続人になることができる場合と、できない場合があります。
養子と実子に相続分の差はありませんが、代襲相続に関しては違いが生じる可能性があります。
養子縁組をした後にその養子に子どもが生まれた場合、その子どもは代襲相続が認められます。
事例再婚相手の子どもを養子にした場合
たとえば、再婚相手の子どもを養子にした場合に、養子縁組の後に養子の子(孫)が生まれれば、孫は代襲相続人となることができます。
一方、養子縁組する前に養子に子がいた場合、その子と養親の間には血縁関係が生じません。
そのため、その子は養子の代襲相続人になれません(図表2−5)。
▲図表2−5
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