この記事でわかること
- 兄弟姉妹でも相続トラブルが起きることがわかる
- 兄弟姉妹でよくある相続トラブルの事例がわかる
- 相続トラブルの対処法がわかる
目次
相続トラブルは兄弟姉妹間でも起こる
相続問題は、自分たちにとっては無縁のことだと考えていませんか?
「うちの兄弟姉妹は、仲が良いから大丈夫!」と思っていると、意外なところで落とし穴にはまってしまう可能性があるので、注意が必要です。
相続トラブルの解決方法
相続というものは、これから生きていく中でそれほど多く起こるものではありませんが、多かれ少なかれ誰もが経験することでしょう。
いざ相続に直面すると、想像以上に狼狽してしまい、適切な行動をとれないこともあります。
遺産相続トラブルをうまく解決する方法としては、以下の2つがあげられます。
- (1)よくある遺産相続のトラブル事例を知る
- (2)相続が生じた際に、法律の専門家に相談する
まずは兄弟姉妹間で起きやすい遺産相続トラブルの事例を確認しましょう。
兄弟姉妹の遺産相続トラブルの事例
兄弟姉妹の遺産相続トラブルで、よく問題となる事例をいくつかご紹介します。
すでに起こった遺産相続トラブルの事例について確認することで、これから起こりうる相続問題を円満に乗り切ることができるでしょう。
親の世話をしていた兄弟姉妹がいる
例えば、あなたが地元から東京に就職して以来ずっと東京で暮らしていて、その間、あなたの姉と妹がご両親の世話をずっとしてきたとしましょう。
そして、ご両親が亡くなった時、あなたが今までご両親の世話をしてこなかったことを理由に、相続をする権利がないと言われたらどうでしょうか?
このようなケースにおいて検討されるのは、民法の寄与分という制度です。
これは、被相続人の療養や看護、その他被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与をした者に認められ、通常の相続割合に対してプラスして評価されるものです。
しかし、被相続人であるご両親のお世話をしていなかったからといって、相続人の相続分を奪うことはできません。
この寄与分の具体的な割合を決める方法は、原則として相続人同士の話し合いによるものであり、ある相続人から一方的に決定されるものではないのです。
万が一、話し合いで決定されない場合は家庭裁判所に申し立てを行い、判断が下されます。
しかしながら、上記のようなケースであなたが姉と妹の主張を素直に認めてしまうと、あとで「やはり自分にも相続分があるのだから財産を譲ってほしい」と主張しても、簡単に解決できる問題ではなくなってしまいます。
この場合、相続に関する紛争が予想されるので、弁護士に依頼して解決の道を検討しなければなりません。
また、上記のケースでは、お世話をしていた兄弟姉妹の立場を尊重しながらうまく交渉をすることが求められるので、少しでも交渉が難しいと感じた場合は、弁護士に相談するのが良いでしょう。
連絡が取れない兄弟姉妹がいる
家を出て長らく連絡を取っていない兄弟姉妹がいる、あるいは会ったことのない兄弟姉妹がいる場合には、相続手続きに少々苦労することになります。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければいけないため、連絡が取れなかった相続人をのけ者にして、自分たちだけで遺産分割をしてはいけないというルールがあります。
もし仮に、連絡の取れた相続人だけで遺産分割協議をして、各種財産の名義変更の手続きを申請してしまった場合、あとから連絡の取れなかった相続人に「それはおかしい」と言われると、もう一度遺産分割協議をやり直さなければいけなくなります。
兄弟姉妹間でこのようなケースにならないよう、相続人調査の手続きをかける必要があるのですが、素人ではなかなかうまく確認できない可能性もあるので注意が必要です。
万が一、勝手に相続手続きを進めてしまったとなると、連絡の取れなかった兄弟と争いになる可能性があります。
スムーズに遺産分割協議を進めることが困難になってしまうので、以降の手続きを穏便に済ませるためにも、弁護士を活用することを検討しましょう。
兄弟姉妹の配偶者が相続分を要求
相続が生じた場合、その相続分を分配される権限は法定相続人にありますが、場合によっては、この法定相続人の配偶者が相続に口をはさんでくることが考えられます。
法律のルールに則ると、相続分をもらい受ける権利はあくまで相続人にあるのであって、相続人の配偶者にはありません。
しかし、相続人が相続分をもらうということは、自分の家庭にお金が入ることになるため、配偶者は少しでも多く貰えるように口をはさんでくることがあります。
このような場合には、法律のルールを説明することが一般的な解決方法となります。
しかし、あまりにも配偶者が強い要求をしてくる場合には、相続人同士の関係も悪くなってしまうので、弁護士に相談して間に入ってもらうのがおすすめです。
弁護士に依頼すると、弁護士があなたの代理として遺産分割協議の手続きに入るため、強い要求をしてくる配偶者と関わりを持つことなく、相続手続きを終了できます。
遺言書の相続分割に兄弟姉妹で偏りがある
遺言書に従って遺産分割を行うとき、仮に兄弟間で遺産の相続分に偏りがある場合でも、その遺言書に書かれたとおりに遺産分割しなければなりません。
ただ、それでは納得がいかない人がいる場合は、あまりにも相続分が少なくならないようにする制度が設けられています。
これを遺留分侵害額請求といいます。
遺言書による遺産分割を行う際に、相続分が少なくて不公平だと感じた場合、遺留分を満たしているかどうか、確認しましょう。
もし、自身の相続分が遺留分に満たない場合は、不足分をほかの相続人に請求できます。
遺留分侵害額請求が認められると、他の相続人から金銭による支払いを受けることができるので、不公平感をいくらか解消できるでしょう。
不動産など分割しにくい財産がある
不動産が相続財産に含まれている場合、その不動産は簡単に分割できません。
一方で、不動産の評価額は他の財産より高額となるため、不動産を相続すると他の財産を相続できなくなることも少なくありません。
そのため、不動産などの財産があると、遺産分割で揉めるケースが多いのです。
不動産が相続財産に含まれている場合スムーズに遺産分割を行うには、遺言書を作成しておくのが一番良い方法です。
ただ、亡くなった後では遺言書は作成できないため、代償分割を行って不動産を相続した人がお金を支払う、あるいは分筆して土地を2つに分けるなどの方法も検討しておきましょう。
兄弟姉妹の相続トラブルを避ける方法
兄弟姉妹という身近な関係で相続トラブルが発生すると、その後の関係が悪化する可能性があります。
相続トラブルに発展しないよう、被相続人が生前にできる対策をご紹介します。
生前からコミュニケーションをとっておく
相続が発生した後には、相続人と相続に関して話すことはできません。
生前に配偶者や子供とコミュニケーションをとっておくようにしましょう。
相続に関する話を、子から切り出すことはなかなか抵抗があります。
まずは、親の方から子に対して話をするべきです。
また、子が何人かいる場合には、そのうちの1人とだけ話しても意味がありません。
年末年始やお盆など、できるだけ多くの子が集まった時に一緒に話をするようにしましょう。
財産目録の作成
相続が発生すると、相続人はどのような遺産があるのかを一から調査しなければなりません。
財産を所有している本人は財産の内容をよく分かっているでしょうが、本人以外の人は家族であってもほとんど分かりません。
そこで、相続が発生した際に、相続人が相続に関する手続きをスムーズに開始できるよう、財産目録を作成しておきましょう。
作成する財産目録は、預貯金、不動産、有価証券、車や骨董品など、様々な財産を網羅した内容にする必要があります。
遺言書の作成
相続が発生した際に一番問題になるのは、相続人のうち誰がどの財産を相続するのかを決定する時です。
相続した財産の分配を決定するのが、遺産分割協議です。
遺産分割協議を行うと、相続人同士の争いになる可能性があり、最悪の場合には裁判沙汰になってしまうこともあります。
そこで、遺産分割協議をしなくてもいいように、遺言書を作成しておきましょう。
遺言書でどの財産を誰が引き継ぐのかを遺言書で決定しておけば、相続人間のトラブルを避けることができます。
家族信託や後見制度を利用
相続が発生する前に判断能力が低下してしまい、自身で財産の維持管理や処分をすることが難しくなる場合があります。
そこで、判断能力が低下する前に家族信託を利用して、財産の管理を家族に依頼することを検討しておく必要があります。
また、後見制度を利用して、財産を本人以外の人が管理できるようにしておきます。
判断能力が低下する前であれば、任意後見制度で自由な制度設計で財産管理を任せることができます。
また、判断能力が低下した後であれば、法定後見制度を利用することができます。
相続トラブルが起こった時の対処法
相続の手続きを進める中で、相続人同士のトラブルが発生することがあります。
相続が発生する前にどれだけ対策をしていたとしても、完全にトラブルを避けることはできません。
もし相続トラブルが発生した場合には、弁護士などの専門家にトラブルの解決を依頼するようにしましょう。
相続に関して、ほとんどの人は知識や経験がありません。
弁護士などの専門家であれば、そのようなトラブルを解決するノウハウを持っています。
相続トラブルの解決を弁護士に依頼するメリット
相続トラブルの解決を弁護士に依頼すると次のメリットも得られます。
適切な遺産の範囲を把握できる
相続が発生した際には、すべての遺産において相続する人を決定しなければなりません。
ただし、遺産と思っているものの中には、実際は特定の人に帰属する固有の権利もあり、遺産分割協議を行う必要のない財産も含まれています。
そのような区別は、知識のない人には難しく、またあいまいにしてしまうと遺産分割協議を始めることもできません。
そこで、専門家に遺産の区分を確認し、適切な遺産分割が行えるようにしましょう。
遺産分割協議の交渉を任せられる
遺産分割協議は、すべての相続人が参加し、全員が納得してはじめて成立するものです。
遺産分割に関する話をしていて、意見が合わない場合には、何度も話し合いを繰り返すしかありません。
しかし、兄弟同士である相続人が何度も話し合いを行うと、その関係が悪化してしまうこととなりかねません。
そうならないためにも、交渉の仲介役を弁護士に任せるようにしましょう。
心理的な負担を軽減できるだけでなく、専門家としての法律に基づいた正しいアドバイスを受けることもできます。
適切な遺留分侵害請求ができる
遺留分とは、相続人が最低限相続することが保証されている財産の割合です。
遺言書に基づいて財産を引き継ぐ場合に、遺留分に満たない相続人がいると、遺留分侵害額請求を行って、遺留分に満たない金額を請求することができます。
弁護士に依頼すると、正確な遺産の金額を把握し、正確な遺留分の金額を計算することができます。
また、その流れで遺留分侵害額請求を依頼することもできます。
調停や審判・訴訟などの手続きを依頼できる
遺産分割協議では、成立するまで何度も話し合いを重ねる必要があります。
しかし、遺産分割協議が不調に終わった場合、遺産分割調停や遺産分割審判、さらには訴訟などの手続きに進み、解決しなければなりません。
調停や審判、訴訟などの手続きは、すべて裁判所で行われます。
一般的には弁護士のサポートが不可欠であり、法律上の知識がなければこれらの手続きを行うことはできません。
弁護士に依頼することで、遺産分割調停以降の手続きを進めていくことができます。
まとめ
兄弟姉妹という身近な関係で生じる相続トラブルは、決して他人事ではありません。
兄弟姉妹の仲が良いから問題ない、とは言い切れない可能性があります。
もちろん、普段から綿密にコミュニケーションをとっている関係であれば、多少のトラブルは解決できるでしょう。
しかし、兄弟姉妹の周りの人が口をはさんでしまい、ややこしいトラブルに発展する可能性がないわけではありません。
せっかく仲の良かった兄弟と相続トラブルになってしまうのは、悲しいものです。
そんなときは、専門家である弁護士に任せてみることも考えてみてはいかがでしょうか?
弁護士は人間関係に関するトラブルを多く経験しているため、プロとしてのノウハウから、酷い争いごとに発展する可能性を抑えられます。
今回ご紹介した事例で当てはまりそうなケースがあれば、今からご自身でできる対策を行い、最悪の場合には弁護士に解決を依頼できるように準備しておくと良いでしょう。