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最終更新日:2022/12/9

揉めない相続VOL4 愛人の子にも相続権?非嫡出子や養子の扱いは?あまり知られていない相続のケース

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

被相続者(亡くなった人)に子どもがいる場合、子どもは原則相続人になります。

その子が配偶者との間に産まれた血のつながった実子であれば、相続人であるかどうかについて問題になることはまずありません。

しかし、愛人の子や隠し子であった場合には、相続権があるかどうかケースごとに判断が必要です。

愛人の子にも相続権があるのか、非嫡出子や養子の扱いはどうなるのかなど、あまり知られていない相続のケースについて詳しく解説します。

子どもは必ず相続人になる

子どもがいる人が亡くなって相続が発生した場合、子どもがすでに死亡しているなどの例外を除いて、子どもは必ず相続人になります

子どもは被相続人との血のつながりがもっとも濃い血族であり、故人の財産を引き継ぐのにもっともふさわしい立場だからです。

胎児や未成年の子どもも、一人前の子どもとして1/2ないしは財産すべての相続権があります。

たとえその子が他の遺族に知られていない子であっても、関係ありません。

被相続人の子どもであることが確認できたなら、愛人の子でも隠し子でも同じ相続権があります。

子どもであることの確認

その子が被相続人の子どもであるかどうか、あるいは被相続人に子どもがいるかどうかを確認するためには、まず戸籍を調べます

戸籍というのはその人のこれまでの家族関係を記録したものです。

子どもであることを確認する際には、相続開始時点の戸籍だけでなく、原戸籍や除籍も調査しなくてはいけません。

戸籍の移転や改製があった場合に、新戸籍には古い事項が記載されないことがあるためです。

また、以前結婚したときの子どもが婚姻した後に戸籍の移転や改製があった場合には、新戸籍にはその子の記載がなされません。

そのため、古い戸籍もさかのぼって調べないことには、子どもに関する確認は難しいのです。

相続権がある子どもの存在の有無は遺族にとって重要な事実ですが、子どもの確認作業は結構面倒くさく、家族関係のややこしさからプロでも困難を極めるケースもあります。

子どもの存在を隠すために、わざわざ戸籍の移転を行う人もいます。

とはいえ、相続において子どもの存否は必ず確認が必要です。

慎重に戸籍を調べ、あとから「実は私も相続権のある子どもなのに財産をもらっていない!」などと言い出す人がいないように注意しましょう。

認知された子どもは相続人となる

夫婦の間に産まれた子どもは夫婦の子どもと推定され、嫡出子として当然に相続人になります。

しかし、愛人関係や事実婚のカップルなど、婚姻届を提出していない男女の間に産まれた子どもは嫡出子とはなりません。

非嫡出子は父親が「認知」の手続きをとって初めて、法律上の親子関係が認められて相続人となります

認知は遺言や届け出によって行なわれ、戸籍に記載されます。

そのため、たとえ遺族が認知された子どもの存在を知らなかったとしても「知らなかった」という言い訳は通用しません。

戸籍を調査することで知ることが可能だからです。

相続が終わってから認知された子どもの存在が明らかになった場合には、遺産分割協議からやり直さなくてはいけません

認知された子どもが相続開始を知らなかった場合、相続権の侵害を知ってから5年間は相続回復請求権により相続権を求めることができます

5年が過ぎると相続回復請求権は時効によって消滅します。

相続侵害から20年の除斥期間が過ぎた場合も、同様に権利がなくなります。

時効もしくは除斥の期間が経過した以降は相続権を主張できません。

なお、法律上は母親も認知が可能です。

しかし母親の場合、出産によって親子関係が明らかなため、認知に関しては原則として父親のみの問題となります。

認知されていない子どもの場合

なかには認知をしてもらえない子どももいます。

認知されていないということは、親子関係が法的に認められていないということです。

そのため、基本的には、認知されていない子どもには相続権がありません

認知をしてもらえないケースとしては、父親が子どもの存在を知らなかった場合やなんらかの事情によって故意に認知しなかった場合などが考えられます。

どのような理由で認知されなかったのだとしても、子どもには無関係でありかわいそうなことです。

そのため、子どもは父親の死後3年間、認知の訴えを起こすことができます。

裁判によって認知が認められれば、認知された非嫡出子となり、相続権が発生します。

養子も相続人

養子は養子縁組が成立した日から養親の嫡出子となり、実子とまったく同じ扱いをうけます

そのため、被相続人である養親が亡くなった場合には、養子も実子と同様の相続権を持ちます。

しかし実親の相続は養子の種類によって異なるため、注意が必要です。

養子とは

養子とは血縁にはない者同士が手続きをとり、法律上の親子関係を結ぶことです。

現在の日本には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類の養子制度があります。

普通養子縁組は一般的な養子のことで、年齢制限なく行うことができます

普通養子縁組をすると養親と養子の間に親子関係が生じますが、実親との親子関係は消滅せずそのまま継続します。

法的手続きでつながった親子関係と血でつながった親子関係が、同時に存在することになります。

特別養子縁組は特殊な養子のことで、6歳未満の未成年のみが対象です。

実親のもとでの養育が難しい場合に新しい親元で養育するという制度であり、幼い子どもの福祉を守るための特別な制度です。

そのため、特別養子縁組では養親と養子の間に親子関係が生じますが、実親との親子関係は消滅します。

普通養子縁組と特別養子縁組は実親との関係性で大きな違いがあるため、実親が亡くなった場合の相続権の存否にも違いがでてきます。

普通養子縁組の場合

普通養子縁組では実親との親子関係は継続しています。

そのため、養子は養親が死亡した場合にも実親が死亡した場合にも法定相続人となります。

普通養子縁組による養子は、実親と養親両方の財産を相続することができるのです。

特別養子縁組の場合

特別養子縁組では実親との親子関係は断絶されます。

そのため、養子は実親が死亡しても相続人にはなりません

特別養子縁組の養子と実親とは、もはやまったくの無関係同士だからです。

二重資格の相続人の問題

世の中には、祖父母が孫を普通養子縁組によって養子にするケースが少なくありません。

家を継がせるためだったり税金対策だったりと理由はさまざまですが、孫と普通養子縁組するということは、孫は「子ども」であり「孫」でもあるという二重の立場となります。

そのため、養親である祖父母が亡くなった場合には、「子ども」としても「孫」としても相続権が生じます。

孫の実親が健在であれば、孫は「子ども」の1人として実親と同等の相続権を持ちます。

しかし実親がすでに死亡している場合には、孫には「子ども」としての相続権と「孫」の立場としての実親の代襲相続権の2つが二重に生じます。

このようなケースを二重資格の相続人とよびます。

二重資格の相続人は相続の二重取りになってしまうようにみえますが、養子になったからといって孫としての相続権を失うのはおかしな話です。

孫は「子ども」としての相続権と「孫」としての相続権の2つを行使し、二重に相続をすることができます

戸籍上は実子でも血のつながりがない場合は?

夫婦の間に産まれた子どもが本当は夫婦の子どもではないというケースは、実はそう珍しくありません。

妻が不倫をして夫以外の子どもを産んだけれど世間体を気にして夫の実子と届け出るケース、夫が外で作った子どもをやむなく夫婦の間の実子として届け出るケース、赤の他人の子をもらうために夫婦の子どもとして届け出るケース……などが挙げられます。

さまざまな事情がありますが、このような偽りの出生届は有効なのでしょうか。

有効だとすれば偽りの出生届の子どもは当然に相続人になりますが、血のつながりのない実子に相続権が生じてよいのでしょうか。

また、出生届が無効だとしても養子縁組として処理し、親子関係を損ねないようにできないのでしょうか。

逆に他の遺族からみれば、血のつながらない偽りの出生届の子どもを相続から排除し、家族だけで相続することはできないのでしょうか。

偽りの出生届の子どもについてはさまざまな争いがあり、判例も分かれています

偽りの出生届は無効とした判例

昭和38年の判例では、偽りの出生届による戸籍上の親子関係は、それがどのような事情でなされたものだとしても、法律上の親子関係は発生しないと判断しました。

また昭和49年の判例では、これ戸籍の記載は実体を形成するものではないとして、偽りの出生届は無効であると判断しています。

昭和の時代はまだ血縁を重視していた時代であり、裁判所も実際の血縁関係が正しいという判断を下したと考えられます

しかし時代とともに、裁判所の判断もかわっていきます。

偽りの出生届は有効とした判例

平成3年の判例では、戸籍上の両親が親子関係を築くという意思で出生届を提出し、その後長期間に渡って嫡出子として親子の生活を営んできた場合に、突如として親子関係を否定することが信義則上不当と認められる場合は、例外的に出生届を養子縁組の届け出とみなすという判断をしました。

また最高裁も、一定の事実関係にある場合に親子関係の不存在確認請求を行うのは権利の濫用にあたると判断しています。

現在の裁判所は、血のつながりがなくても長年親子関係を築いてきた場合には、出生届を養子縁組の届け出として処理し、出生届が出された時点で養子になったと解しています。

通常の親子関係を築いてきたのであれば、偽りの出生届の子どもにも実子と変わらない相続権が発生するのです。

まとめ

認知された非嫡出子は、嫡出子と同様の相続権を持ちます。

認知されていない非嫡出子には相続権はありませんが、認知を請求することが可能です。

普通養子縁組の場合、養子は養親と実親の両方の相続人です。

祖父母が孫を養子し、実親が先に亡くなった場合、孫は子どもとしての相続権と孫としての代襲相続権の二重資格を持ちますが、どちらも適法に相続できます。

偽りの出生届の子どもも、出生届を養子縁組の届け出として処理することで実子と同様の相続権があると解釈されています。

相続権の有無について判断に迷う場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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