メニュー

閉じる
無料相談0120-211-084
メール

最終更新日:2024/4/25

相続放棄の必要書類・取得方法を解説!手続き・費用・注意点もまとめてチェック

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

相続放棄の必要書類・取得方法を解説!手続き・費用・注意点もまとめてチェック

この記事でわかること

  • 相続放棄をするときの手続き
  • 相続放棄をするときの必要書類
  • 相続放棄するときの注意点
  • 相続放棄をすべきかの判断基準

相続が起こる際、遺産の中に負債があれば、当然返済をしていく必要があります。

このような場合、相続人の中には、どうしても遺産を相続したくない人がいるでしょう。

相続人が遺産の承継を拒否する相続放棄は、一体どのような手続きが必要なのでしょうか。

そこで今回は、相続人が相続放棄をする場合の必要書類や取得方法、手順についてご紹介します。

目次

相続放棄とは?

相続放棄とは、相続人が亡くなった方の財産を引き継ぐ意思が全くない表明をする行為です。

人が死亡して相続が始まると、亡くなった方に属するすべての財産は一定範囲の親族関係にある人が承継します。

財産とは、預貯金や不動産だけでなく、借金など負の財産も含みます。

ときには負の財産が多額になるケースもあるため、相続人には承継を拒否する権利が認められているのです。

ただし、負の財産のみを放棄できず、原則としてすべての相続を放棄しなければなりません。

また、相続放棄は裁判所を通じた厳格な手続きで行うと定められています。

もし不正な手段で他の相続人から勝手に相続放棄をさせられてしまった場合、重大な不利益を受ける可能性があるためです。

相続放棄と財産放棄の違い

相続放棄とは別に、財産放棄があります。

財産放棄とは、裁判所を通じた手続きによらず、他の相続人へ財産を相続しない旨を意思表示することです。

相続放棄と財産放棄の違いは、相続人としての権利を失うかどうかです。

財産放棄は、法律上は相続権を失っておらず、あとから財産が見つかったケースなどで相続権を主張できます。

一方、亡くなった方に借金があり、債権者から弁済請求があれば自己の相続分に応じて返済しなければなりません。

相続放棄では、相続権を完全に失い「初めから相続人ではなかった」扱いになります。

借金の返済義務などを相続したくない場合は、相続放棄の手続きを行いましょう。

相続放棄の流れ

相続放棄の流れ

相続放棄は、次のステップで行います。

相続放棄の流れステップ1.費用を確認し、用意

費用は、戸籍謄本の取得や収入印紙代が3,000円~5,000円ほど、弁護士への依頼料が5万円~10万円ほどかかります。

ステップ2.必要書類を用意

裁判所に提出する書類を用意します。
後述の通り、相続人の続柄によって用意する書類が異なります。

ステップ3.家庭裁判所に申述

相続放棄申述書を、亡くなった方が最後に住んでいた住所地の家庭裁判所へ提出します。
申述書は「相続を知った日から3カ月以内」の提出が必要です。

ステップ4.照会書に返送

相続放棄申述書の提出後、7日~10日ほどで家庭裁判所から相続放棄の照会書と回答書が届きます。
届いたら必ず3カ月以内に回答書を返送しましょう。

ステップ5.相続放棄申述受理書が届く

相続放棄が認められると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理書」が届きます。
これで相続放棄の手続きは完了です。

相続人が相続放棄をする際の必要書類

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかった扱いになります。

相続人は、配偶者のほかに、第一順位の子、第二順位の親、第三順位の兄弟姉妹のうち、最も順位の高い人が対象となります。

自分にあった相続権は、放棄すると次の順位の人に回っていきます。

また、相続放棄の場合、第二・第三順位相続人と順番が後の相続人になると、提出書類が増えていきます。

ここからは、第三順位の相続人が相続放棄をする場合の必要書類をご紹介します。

相続放棄で全ての相続人に共通する必要書類

相続放棄で全ての相続人に共通する必要書類

第三順位の相続人の相続放棄で必要な書類を紹介する前に、まずは相続放棄するすべての相続人に必要な書類をご紹介します。

【すべての相続人に共通する必要書類】

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄をする人(申述人)の戸籍謄本
  • 収入印紙
  • 郵便切手

それでは、1つずつ確認しましょう。

相続放棄の申述書

まずは、相続放棄の申述書を用意します。

申述人(相続放棄する人)についての記載欄のほか、被相続人(死亡した人)の名前や生年月日・本籍地・住所などの情報を記入していきます。

記載事項は、見本を見ながら記入しましょう。

被相続人の住民票除票または戸籍附票

被相続人の住民票除票、もしくは戸籍附票が必要です。

これらは、被相続人が最後にどこを住所としていたのかわかる書類です。

相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行われるため、この書類が必要になります。

被相続人の住民票除票は被相続人の住民票のある自治体で取得し、戸籍の附票は被相続人の戸籍のある自治体で取り寄せてください。

そもそも、どこの自治体に被相続人の住所があるのか不明で戸籍があるのかもわからない場合は、自分の戸籍を取得して、そこから辿っていくのが可能です。

戸籍調べは手間のかかる作業のため、行政書士や司法書士などに依頼して調査してもらうのをお勧めします。

相続放棄をする人(申述人)の戸籍謄本

相続放棄をする人の戸籍謄本が必要です。

本籍地の自治体から取り寄せることができます。

収入印紙

収入印紙は800円分必要です。

郵便局などで購入できます。

郵便切手

相続放棄の手続きに必要な郵便切手の額は裁判所によって異なるため、必ず申述書の提出先の裁判所に問い合わせをしてください。

参考までに、さいたま家庭裁判所のホームページによると、郵便切手は申述人1人につき470円(内訳:84円5枚、10円5枚)が必要です。

【相続人別】相続放棄の必要書類

次に、相続人別に必要となる書類を確認していきましょう。

基本的に、自分の相続人としての立場を証明する書類を用意します。

特に第二・第三順位や特殊な条件で相続人となった場合、自分に相続順位が回ってきたのを証明する書類が必要です。

相続人が配偶者の場合

民法では、配偶者は必ず相続人になると定められています。

配偶者の必要書類は次の通りです。

  • 前述の【すべての相続人に共通する必要書類】
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

配偶者の場合、婚姻の事実は被相続人の戸籍謄本で確認できます。

戸籍は夫婦とその子で編成されており、夫の戸籍謄本と妻の戸籍謄本は同じになるからです。

なお、離婚した元配偶者には相続権がありません。

離婚の事実も被相続人の戸籍謄本に記載されるため、相続人となる配偶者がわかるようになっています。

相続人が子・孫の場合

子の必要書類は、配偶者と同じです。

  • 前述の【すべての相続人に共通する必要書類】
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本

孫は、原則として相続人になりません。

しかし、本来相続人となる子が先に亡くなっていると、子の立場を承継した孫が相続人となります。

これを、代襲相続といいます。

孫の相続には、子の相続の必要書類に加え、次の書類が必要です。

  • 被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本

なお、代襲相続は、被相続人の子から孫、ひ孫、玄孫と法律上は何代でも続けることができます。

養子縁組した子から生まれた孫も、代襲相続は可能です。

ただし、養子縁組後に生まれた孫に限られます。

相続人が親・祖父母の場合

親が相続する場合、必要書類は次の通りです。

  • 前述の【すべての相続人に共通する必要書類】
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

第一順位である子や代襲する孫がいない事実を証明する書類が必要です。

また、親が祖父母よりも先に亡くなっている場合、親の立場を承継した祖父母が代襲して相続人となります。

祖父母の場合、親の相続の必要書類に加え、次の書類も必要です。

  • 相続放棄する者より下の代の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本

戸籍謄本により、代襲の事実や範囲を確認します。

相続人が兄弟姉妹・甥姪の場合

兄弟姉妹の相続には、次の書類が必要です。

  • 前述の【すべての相続人に共通する必要書類】
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の子と孫が亡くなっている場合、その子と孫の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍謄本

第一順位の子、第二順位の親がいない事実をそれぞれの戸籍謄本で証明します。

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(甥や姪)も代襲相続は可能です。

この場合、次の書類も必要です。

  • 被代襲者の死亡の記載がある戸籍謄本

なお、兄弟の代襲相続が続けられるのは1代限りとなっています。

つまり、甥・姪は代襲可能ですが、それ以降は再代襲できないため注意しましょう。

相続放棄の必要書類の取得方法・提出方法

相続放棄をするのに必要な書類の取得方法についてご紹介します。

相続放棄に必要な申請様式は裁判所のサイトにある

まず、相続放棄申述書の様式についてですが、裁判所のサイトで公開されています。

裁判所のサイトで公開されている様式には見本もついているため、間違わないように落ち着いて記入していきましょう。

もし、家にプリンターがない場合は、家庭裁判所で様式を取得できます。

相続放棄のための戸籍は自治体から取り寄せる

相続放棄のための戸籍や住民票は、自治体から取り寄せてください。

郵送で対応してもらえますが、取得までに日数がかかるため、早めに収集をはじめてください

1回取り寄せるのにかかる期間は、1週間程度です。

書類は郵送で家庭裁判所に提出可能

相続放棄申述書は、郵送でも提出できます。

家庭裁判所のどこの部署に送ったらいいのか、事前に問い合わせをしましょう。

相続放棄申述書と照会書の書き方

相続放棄申述書には、申述人と被相続人の住所や氏名などを記載します。

被相続人の本籍、最後の住所、死亡年月日は、住民票の除票や戸籍謄本を参照して記載しましょう。

照会書とその回答書は、相続の経緯や相続放棄の意思を確認する書面です。

回答書の該当する項目にチェックをして、必ず3カ月以内に返送しましょう。

相続放棄申述書「放棄の理由」の書き方・例文

相続放棄申述書には、「放棄の理由」を次の中から選択する欄があります。

  • 被相続人から生前に贈与を受けている。
  • 生活が安定している。
  • 遺産が少ない。
  • 遺産を分散させたくない。
  • 債務超過のため。
  • その他

どの理由を選んでも相続放棄に影響はありません。

「その他」の項目には、理由を自由に記入できる枠があります。

選択肢に理由がない場合は、「その他」を選び、自由記入欄に「被相続人とは疎遠であったため」など理由を記入しましょう。

照会書の書き方・例文

相続放棄照会書と回答書には、相続放棄の制度に関する理解や、本当に相続放棄をするか意思を確認する項目が並んでいます。

意思が変わらない場合、「相続放棄をする」の項目にチェックを入れて返送しましょう。

なお、被相続人の財産を処分・消費したか確認する項目がありますが、「ある」にチェックを入れると相続放棄が認められない可能性があります。

また「自分が相続人になったことを知った日」が申述の3カ月以上前だと同様に認められない可能性があるため、注意しましょう。

相続放棄するときの注意点

相続放棄は裁判所を通じた厳格な手続きであり、重大な効果を発生させるため、注意すべき事項が多くあります。

相続放棄をした後はもう取り返しのつかない場合もあるため、特に次の事項は事前にしっかり確認しておきましょう。

相続放棄の撤回はできない

相続放棄が認められた後は、撤回ができません。

ただし、次のようなケースで例外的に取り消しが認められる可能性があります。

被相続人に多額の借金があると誤解していたような場合です。

ただし、十分な財産調査をしていたなど、誤解に重大な過失がないことが前提です。

単なる誤解などでは認められず、一般的に立証は難しいといえます。

騙されたり脅迫を受けて強制的に相続放棄をさせられた場合も、取り消しを主張できます。

ただし、詐欺や脅迫を受けた事実の立証が必要です。

ほかの相続人に迷惑がかかる可能性がある

相続放棄をすると、財産の承継が次順位の相続人に移ります。

借金の返済義務などが承継されてしまった場合、次順位の相続人が相続放棄をしていないと負担を背負わせてしまう場合があります。

法的に義務を免れても、親族間でトラブルを抱えてしまう可能性があるといえます。

この場合も、次順位以降の相続人も相続放棄をすれば承継されません。

相続放棄をするときは、次順位以降の相続人にあらためて伝えておくとトラブルを避けられるでしょう。

子が相続放棄すると孫は代襲相続できない

前述の通り、孫よりも先に子が亡くなっていた場合、孫は子の立場を承継して代襲相続人になれます。

ほかに、子が相続欠格や相続廃除で相続人ではなくなった場合、同様に代襲できます。

ただし、子が相続放棄をしたときは、孫は代襲相続人になれません

相続放棄は「初めから相続人でなかった」扱いであり、代襲する相続権自体がなくなってしまうためです。

相続放棄により代襲相続がされなかった場合、相続権は次順位の相続人に移ります。

相続放棄には期限がある

前述の通り、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月」以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。

この期間を、熟慮期間といいます。

「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは、基本的に被相続人が死亡した日です。

例外的に、被相続人が亡くなった事実を知らず、数年後に初めて知った場合などはその時点から3カ月が熟慮期間となります。

3カ月を過ぎてしまうと、単純承認といって財産の承継を承認したとみなされてしまうため注意しましょう。

相続放棄の申し立ての期限は延長できる

例外的な扱いとはなりますが、事情によっては相続放棄の申し立ての期限は延長できます。

事情とは「相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるとき」などです。

たとえば、被相続人とほとんど交流がなかった場合や、権利義務を証明する書類が破棄されていた場合などで認められる可能性があります。

この場合、裁判所に相続放棄が遅れたのはやむを得ない事情があった事実を説明し、認められなければなりません。

期限内でも相続放棄が認められないことがある

前述の通り「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3カ月を過ぎると単純承認となります。

この単純承認は、期間経過以外でも次のような行為により成立します。

  • 被相続人名義の借金の督促状が届いていたため、被相続人の預貯金から支払った。
  • 被相続人の腕時計が欲しかったため、他の相続人には内緒で自分のものにした。
  • 被相続人の住んでいた家を売却したり取り壊したりした。

主に相続を前提とした行為をすると、単純承認に該当する可能性があります。

土地は相続放棄しても管理義務がある

「相続放棄をしたのだから、財産には一切関わらなくていい」と思われるかもしれませんが、例外があります。

相続放棄され、誰も承継する人がいなくなった財産は最終的に国庫に帰属します。

相続財産管理人が選定され、売却処分を行いますが、相続財産管理人が選定されるまでは相続放棄した人に管理義務が残ります。

特に土地や建物などの不動産は注意が必要です。

放火や倒壊などで被害が出た場合は損害賠償責任が発生する可能性もあるため、相続財産管理人の選定までは管理を続けましょう。

相続放棄を選択すべきケース

これまで見てきた通り、相続放棄によって生じる効果には様々なメリット・デメリットがあります。

メリット・デメリットを踏まえた上で、特に次のようなケースでは相続放棄が適しているといえるでしょう。

プラスの財産よりもマイナスの財産が多いとき

被相続人にプラスの財産が少なく、むしろマイナスの財産により損が出てしまいそうなときは相続放棄が適しています。

被相続人の財産が明確である場合は問題ないでしょう。

ただし、前述の通りいったん相続放棄をすると撤回は容易にできません。

取り消しをする場合でも、錯誤の立証は非常にハードルが高く、重大な過失がないと証明しなければなりません。

あとからプラスの財産が見つかったときに後悔しないよう、財産調査は十分に行った上で判断をしましょう。

相続トラブルに巻き込まれたくないとき

被相続人の財産を巡り、相続人間で争いが起きてしまうケースがあります。

相続人間以外でも、被相続人が事業を行っていた場合は取引先など関係者が多く、手続きも煩雑になる可能性があります。

相続後に関係者が現れて、トラブルが発生する懸念もあるでしょう。

金銭やその他のトラブルを防ぐため、相続放棄を利用するのは有効な手段といえます。

相続放棄をすれば、「初めから相続人ではなかった」立場になるため、トラブルに巻き込まれる可能性も低くなるでしょう。

特定の相続人に財産を継がせたいとき

相続放棄を利用して、次順位以降の相続人に財産を承継してもらうこともできます。

ほかにも、配偶者のみに財産を承継させたい場合、他の相続人が全員相続放棄すると配偶者のみへ自動的に承継されます。

遺産分割協議を行う方法もありますが、遺産分割協議書や財産目録の作成など時間や労力もかかるでしょう。

特定の相続人に財産を承継してもらうと決まっている場合は、ほかの相続人全員で相続放棄をした方がスムーズに承継できます。

相続放棄すべきか悩んだら?

相続では、被相続人の財産が相続の開始時点でははっきりとわからない場合も多くあります。

特に借金がある事実はわかっているものの、総額が不明瞭な場合、相続放棄をすべきかどうか迷ってしまうのではないでしょうか。

そういった場合に検討できる手段として、限定承認があります。

限定承認に一部財産を残せる可能性も

限定承認とは、相続人が相続財産から借金など負の財産を清算し、もしプラスの財産が残った場合のみ承継する方法です。

相続放棄はすべての財産を一切承継しない手続きですが、限定承認では一部の財産を残せる可能性があります。

なお、相続放棄は各相続人が個別で行う手続きですが、限定承認は必ず相続人全員が共同で申述しなければなりません。

限定承認ができる期間は、相続放棄と同じく「相続人であることを知ったとき」から3カ月以内です。

手続きが非常に複雑で時間もかかるため、実務上で行われるケースは少ないものの、メリットもある手続きです。

限定承認が有効なケース

限定承認は、たとえば次のようなケースで有効です。

まずは、正の財産もあるが負の財産もあり、マイナスの方が大きくなってしまう可能性があるときです。

借金の総額だけでなく取引先も多い場合や、連帯保証などもある場合、督促がきてはじめて借金の存在がわかることもあります。

限定承認をすれば、相続したプラスの財産の範囲に弁済が限定されます。

次に、相続財産の中で、住宅や株式などどうしても残したい資産があるときです。

会社の株式を相続した場合など、相続財産の中でどうしても残しておきたい財産があるとき、負の財産を清算すれば手元に残せます。

相続放棄にかかる費用

相続放棄にかかる費用は、主に裁判所に提出する必要書類の取得費用と、弁護士・司法書士への依頼費用が必要です。

相続人の数や相続関係の複雑さにもよりますが、それぞれの費用の目安はおおよそ次の通りになります。

必要書類の一覧と取得費用

必要書類の一覧は、前述の「相続放棄の必要書類一覧」表の通りです。

それぞれの書類にかかる取得費用はおおよそ次のようになります。

  • 被相続人の住民票除票(1通300円)
  • 被相続人の死亡の記載のある除籍謄本(1通750円)
  • 相続放棄をする申述人の戸籍謄本(1通450円)
  • 収入印紙800円分(1人分)
  • 郵便切手(500円ほど)

親や兄弟姉妹が相続人となる場合、必要な戸籍謄本の数が増えるため、費用もより多くかかります。

郵便切手は裁判所からの連絡に必要なもので、運用や必要な枚数は各裁判所により異なっているケースがあるため確認が必要です。

弁護士・司法書士への依頼費用の目安

弁護士に依頼する場合、費用相場は5~10万円ほどです。

弁護士事務所によって異なりますが、相続人の数や続柄で費用が増減するケースが多いです。

司法書士に依頼する場合、費用相場は3~5万円ほどです。

司法書士には、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書の作成から、戸籍謄本など必要書類の取得も依頼できます。

ただし、相続人間で紛争があるなど訴訟事件の代理人にはなれません。

事務所によってもサービスは異なるため、無料相談などを利用して事前に確認しておくとよいでしょう。

相続放棄に不安がある場合の対処法

本当に相続放棄できるのかどうか心配になったら、弁護士や司法書士に相談しましょう。

弁護士や司法書士に依頼するお金がない場合は、まず自治体や弁護士会・司法書士会で実施している無料相談に行ってみてください。

相続放棄申述の仕方を教えてくれます。

まとめ

今回は、相続人が相続放棄をする手順や、必要書類についてご紹介しました。

相続放棄をした場合、亡くなった人の負債を返済する義務は無くなります。

しかし、資産があった場合も引き継げなくなるため注意しましょう

相続放棄に必要な書類は続柄によって異なるため、しっかりと確認した上で手続きを行う必要があります。

手間のかかる戸籍調べ等は、早めに行政書士や司法書士などに依頼して調査してもらうのをおすすめします。

テーマから記事を探す

弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所ならではの専門性

多数の相続案件の実績のノウハウで、あなたにとって一番の頼れる味方となります。
ご自身でお悩みを抱える前に、ぜひ一度お気軽にご連絡ください。親切丁寧な対応を心がけております。

当サイトを監修する専門家

弁護士 川﨑 公司

弁護士 川﨑 公司

相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。

弁護士 福西 信文

弁護士 福西 信文

相続手続等の業務に従事。相続はたくさんの書類の作成が必要になります。お客様のお話を聞き、それを法律に謀った則った形式の文書におとしこんで、面倒な相続の書類を代行させていただきます。

弁護士 水流 恭平

弁護士 水流 恭平

民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

弁護士 山谷 千洋

弁護士 山谷 千洋

「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。 初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。

弁護士 石木 貴治

弁護士 石木 貴治

メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

弁護士 中野 和馬

弁護士 中野 和馬

弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。 お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。 お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。