

東京弁護士会所属。東京都出身。
労働問題は、ひとたび対応を誤れば、金銭的損失だけでなく企業の社会的評価をも大きく傷つける要因となります。私は弁護士になる前、公務員として自治体業務に従事してきました。そこで培われた「公正な判断力」と「ルールに対する厳格な姿勢」は、現在、使用者側の弁護士として企業のコンプライアンスを守る上での強力な基盤となっています。
私の信念は、常に「申し開きのできる仕事」をすることです。労働紛争においても、単にその場をしのぐ解決ではなく、企業の将来を見据えた透明性の高い解決策を提示いたします。複雑な法律の仕組みも、あたかも「複雑な迷路を解きほぐす地図」のように、経営者様に分かりやすく整理してお伝えします。
弁護士は敷居が高いと思われがちですが、私は常に話しやすいパートナーでありたいと考えています。労働問題という正解のない課題に対し、経営者様と密にコミュニケーションをとり、共に最適な解決策を見出していくことをお約束します。

目次
ストレスチェックとは、従業員のストレスの程度を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。
労働安全衛生法に基づき一定の事業場で実施が義務付けられており、令和10年4月からは50人未満の事業場にも義務化の対象が拡大されます。
ストレスチェックの目的は、従業員が自分自身のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。
ストレスは自覚しにくい場合も多く、気付かないうちに心身の不調を抱えてしまうケースも少なくありません。ストレスチェックを実施することで、従業員が自身の状態を客観的に把握でき、必要に応じて医師による面接指導や適切なケアにつなげることができます。
また、ストレスチェックは個人の健康管理だけでなく、集団分析によって職場全体のストレス要因を把握し、職場環境の改善につなげることも目的としています。
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法に基づく制度です。
会社は、法令で定められた対象となる事業場において、原則として年1回ストレスチェックを実施しなければなりません。また、実施者として医師や保健師などを選任し、高ストレス者から申し出があった場合には医師による面接指導を実施する体制を整える必要があります。
一方で、会社に実施義務があるからといって、従業員に受検を強制することはできません。ストレスチェックを受けるかどうかは本人の意思に委ねられており、受検しなかったことを理由として解雇や降格などの不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。
これまでストレスチェックの実施義務があったのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場でした。一方、50人未満の事業場については努力義務とされていました。
しかし、労働安全衛生法の改正により、令和10年4月1日からは50人未満の事業場についてもストレスチェックの実施が義務化されます。
これにより、小規模事業場でも実施者の選任や実施体制の整備、従業員への周知などを進める必要があります。制度の運用に不安がある場合は、産業医や外部の実施機関を活用しながら、法令に沿った体制を整備することが重要です。
ストレスチェックの対象となるのは、正社員だけではありません。パート・アルバイトや契約社員、派遣社員、外国人労働者であっても、一定の要件を満たせば対象となります。
主な従業員ごとの対象可否は、次のとおりです。
| 従業員の種類 | ストレスチェックの対象 | 補足 |
|---|---|---|
| 正社員 | ○ | 原則として対象 |
| 契約社員 | ○ | 契約期間が1年以上見込まれる場合など |
| パート・アルバイト | ○ | 週の所定労働時間が通常の労働者のおおむね4分の3以上の場合 |
| 派遣社員 | ○ | 原則として派遣元事業者が実施する |
| 外国人労働者 | ○ | 国籍に関係なく対象要件を満たせば対象 |
| 短期間のアルバイト | △ | 契約期間や労働時間によっては対象外となる |
ストレスチェックの対象となるのは、一般的に次の要件を満たす労働者です。
そのため、フルタイムに近い勤務をしているパート・アルバイトや契約社員は、正社員と同様にストレスチェックの対象となるケースが多いでしょう。一方、短期間のみ雇用されるアルバイトや勤務時間が短い従業員などは、対象外となることがあります。
また、派遣社員については、ストレスチェックを実施する義務を負うのは派遣元事業者です。ただし、実際の勤務状況を踏まえて適切に実施できるよう、派遣元と派遣先が連携することが求められます。
対象者の判断に迷う場合は、労働契約の期間や所定労働時間などを確認したうえで、厚生労働省の指針や専門家へ相談しながら適切に判断することが重要です。
ストレスチェックは、質問票を配布して終了するものではありません。実施者の選任から結果の通知、高ストレス者への面接指導、実施後の報告まで、一連の手順に沿って実施する必要があります。
ここでは、ストレスチェックの一般的な実施手順を4つのステップに分けて解説します。
まずは、ストレスチェックを実施する体制を整えます。
最初に行うのが、実施者の選任です。実施者になれるのは、医師と保健師です。加えて、厚生労働大臣が定める研修を修了していれば、看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師も実施者になれます。いずれの場合も、会社の人事担当者や上司が実施者になることはできません。
あわせて、実施事務従事者の選任や実施時期、対象者、結果の保存方法など、制度運用に必要な事項を決定します。
ストレスチェックで使用する質問票は、厚生労働省が示している調査票を使用するのが一般的です。企業の実施目的や運用方法に応じて、質問項目数の異なる複数の調査票から選択できます。
質問項目には、仕事の負担や心身の自覚症状、上司・同僚からの支援状況などが含まれており、従業員のストレス状態を多角的に把握できる内容となっています。
【厚生労働省の質問票サンプル】
実施体制が整ったら、従業員へ制度の内容を周知し、ストレスチェックを実施します。
周知する際には、制度の目的だけでなく、結果は本人の同意がなければ会社へ提供されないことや、受検しなかったことを理由に不利益な取り扱いを受けないことも説明すると、安心して受検してもらいやすくなります。
ストレスチェックは、紙の質問票だけでなく、Webシステムを利用して実施することも可能です。受検率を高めるためにも、従業員が回答しやすい方法を選択するとよいでしょう。
ストレスチェックの実施後は、結果を本人へ通知します。
結果は実施者から直接本人へ通知され、本人の同意がない限り会社へ提供されることはありません。
また、高ストレスと判定された従業員が希望した場合には、会社は医師による面接指導を実施する義務があります。
面接指導では、長時間労働や業務内容、心身の状態などを確認し、必要に応じて就業上の措置について医師から意見を聴取します。その内容を踏まえ、労働時間の見直しや業務内容の変更など、必要な対応を検討することが重要です。
ストレスチェックを実施した後は、対象となる事業場では実施状況を労働基準監督署へ報告します。報告には、所定の報告書を使用し、ストレスチェックの実施状況などを記載して提出します。
報告を怠った場合には罰則の対象となる可能性もあるため、実施後は忘れずに手続きを行いましょう。
ストレスチェックは、法令上の義務を果たすためだけに実施するものではありません。結果を適切に活用することで、従業員のメンタルヘルス不調を予防し、働きやすい職場づくりにつなげることができます。
ここでは、ストレスチェックを有効活用するためのポイントを解説します。
ストレスチェックを実施したら、個人の結果だけでなく、部署や職場単位で集団分析を行うことが重要です。
集団分析を行うことで、「特定の部署だけ仕事量が多い」「上司からの支援が不足している」「人間関係に課題がある」といった職場全体の傾向を把握できます。
分析結果をもとに業務分担の見直しやコミュニケーションの改善などを行えば、職場環境の改善につながり、メンタルヘルス不調の予防にも効果が期待できます。
ストレスチェックを効果的に運用するためには、産業医との連携が欠かせません。
産業医は、高ストレス者への面接指導だけでなく、ストレスチェックの結果を踏まえた就業上の措置や職場環境の改善について専門的な助言を行います。
また、休職や復職の判断、長時間労働者への対応など、企業のメンタルヘルス対策全般について継続的にサポートを受けられるため、定期的に情報共有を行うことが重要です。
高ストレスと判定された従業員が安心して相談できる環境を整えることも重要です。
相談窓口がわかりにくかったり、「相談すると評価に影響するのではないか」と不安を感じたりすると、必要な支援につながらないおそれがあります。
そのため、相談先や面接指導の申出方法をわかりやすく周知するとともに、相談内容やストレスチェックの結果は適切に管理され、本人の同意なく人事評価などへ利用されないことを従業員へ十分に説明しておくことが大切です。
管理職向けのラインケア研修を実施することも、メンタルヘルス対策として有効です。
ラインケアとは、管理監督者が部下の変化に気付き、適切な声掛けや業務上の配慮を行いながら、必要に応じて産業医や人事担当者へつなぐ取り組みをいいます。
管理職がメンタルヘルスに関する正しい知識を身につけることで、従業員の不調を早期に発見しやすくなり、休職や離職の防止にもつながります。また、ストレスチェックの結果を踏まえた職場改善にも取り組みやすくなるでしょう。
ストレスチェックを拒否した従業員がいる場合は、まず拒否した理由を確認しましょう。たとえば、「結果が人事評価に利用されるのではないか」「個人情報が漏れるのではないか」といった不安から受検をためらっているケースも少なくありません。
そのような場合は、ストレスチェックの結果は本人の同意なく会社へ提供されないことや、受検結果を理由として解雇や降格などの不利益な取り扱いは行われないことを丁寧に説明すると、受検への理解が得られることがあります。
それでも受検を希望しない場合は、本人の意思を尊重する必要があります。受検を拒否したことだけを理由に懲戒処分や人事上の不利益な取り扱いを行うことは適切ではありません。
一方で、会社としては制度の趣旨や目的を継続的に周知し、相談窓口の設置や産業医との連携など、従業員が安心してメンタルヘルス対策を利用できる体制を整えることが重要です。受検率の向上は、制度への信頼を積み重ねることで実現していくことが望ましいでしょう。
ストレスチェックの実施義務がある事業場にもかかわらず、適切に制度を運用しなかった場合には、法令違反となるだけでなく、企業経営にもさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
ここでは、ストレスチェックを実施しなかった場合に考えられる主なペナルティやリスクについて解説します。
ストレスチェック制度には、労働安全衛生法に基づくさまざまな義務が定められています。
特に、ストレスチェック実施後に提出が必要となる「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を労働基準監督署へ提出しなかったり、虚偽の報告をしたりした場合には、労働安全衛生法により50万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、ストレスチェックそのものを実施しなかったことに対する直接の罰則はありません。しかし、法令上の義務に違反している状態となるため、労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける可能性があります。
会社には、従業員が安全かつ健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。
ストレスチェックを実施しなかったことだけで直ちに損害賠償責任を負うわけではありません。しかし、メンタルヘルス対策を怠った結果、従業員がうつ病などの精神疾患を発症した場合には、安全配慮義務違反が問題となる可能性があります。
特に、長時間労働やハラスメントなどの問題を認識しながら十分な対応を取らなかった場合には、企業の責任が問われる可能性があるため注意が必要です。
ストレスチェックを適切に実施しない企業は、従業員の健康管理を軽視しているという印象を与えるおそれがあります。
従業員のメンタルヘルス不調や労働問題が表面化すると、企業イメージの低下につながるだけでなく、人材採用や人材定着にも悪影響を及ぼす可能性があります。
また、労働環境への関心が高まるなか、取引先や株主などのステークホルダーからの信頼を失うリスクも否定できません。
ストレスチェックを適切に実施し、その結果を職場環境の改善へ活用することは、法令遵守だけでなく、従業員が安心して働ける職場づくりや企業価値の向上にもつながる重要な取り組みといえるでしょう。
ストレスチェック制度は、実施するだけでなく、個人情報の適切な管理や高ストレス者への対応、就業上の措置など、法令に沿って運用することが重要です。
制度の運用方法を誤ると、労働トラブルや安全配慮義務違反につながる可能性もあるため、不安がある場合は労働問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
ストレスチェック制度には、実施者の選任や個人情報の管理、結果の取扱いなど、労働安全衛生法で定められたルールがあります。
弁護士に相談すれば、自社の実情に合わせて法令に沿った制度設計や社内規程の整備についてアドバイスを受けられます。
また、運用方法に問題がないか継続的に確認してもらうことで、法令違反や運用上のミスを未然に防ぎやすくなります。
ストレスチェックの結果を理由に不利益な取り扱いをしたり、高ストレス者への対応が不十分だったりすると、労働トラブルへ発展するおそれがあります。
弁護士は、メンタルヘルス不調者への対応方法や休職・復職の進め方、ハラスメントへの対応などについて法的な観点から助言を行います。
あらかじめ適切な対応方法を確認しておくことで、安全配慮義務違反や損害賠償請求などのリスクを軽減できるでしょう。
ストレスチェック制度では、高ストレス者への面接指導後も、就業上の措置や休職・復職への対応など、継続的な対応が必要になることがあります。
対応を誤ると、従業員とのトラブルや労務問題に発展する可能性があるため、状況に応じた適切な判断が重要です。
顧問弁護士などに継続的に相談できる体制を整えておけば、個別事案に応じたアドバイスを受けながら適切に対応できるため、企業は安心してメンタルヘルス対策を進められます。
はい。ストレスチェックの実施義務がある事業場では、原則として年1回以上実施する必要があります。
実施時期に法令上の指定はありませんが、毎年同じ時期に実施すると、従業員のストレス状態の変化を把握しやすくなります。
ストレスチェックの実施に必要な費用は、会社が負担します。質問票の作成やシステム利用料、外部機関への委託費用、高ストレス者に対する医師の面接指導にかかる費用などを、従業員へ負担させることはできません。
また、ストレスチェックの受検に要する時間についても、円滑な制度運用の観点から勤務時間内に実施する企業が一般的です。
派遣社員のストレスチェックを実施する義務があるのは、派遣元事業者です。
もっとも、派遣社員は派遣先で日常的に勤務しているため、職場環境や業務内容を踏まえた適切なストレスチェックを実施できるよう、派遣元と派遣先が連携することが重要です。
なお、高ストレス者への就業上の配慮が必要な場合には、派遣元だけでなく派遣先も協力して対応することが望まれます。
はい。在宅勤務(テレワーク)の従業員であっても、対象要件を満たす場合はストレスチェックの対象です。
テレワークでは、コミュニケーション不足や孤立感、仕事と私生活の境界が曖昧になることによるストレスが生じる場合があります。
そのため、Webシステムを活用したストレスチェックの実施やオンラインでの面接指導、相談窓口の整備など、テレワークに対応したメンタルヘルス対策を行うことが重要です。
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぎ、働きやすい職場環境を整えるための重要な制度です。実施義務がある事業場では、法令に沿って適切に運用するとともに、結果を職場環境の改善へ活かすことが求められます。
また、令和10年4月1日からは、50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が拡大されます。これまで対象外だった企業も、実施体制や社内ルールの整備を早めに進めることが大切です。
一方で、ストレスチェック制度には、個人情報の管理や高ストレス者への対応、不利益取扱いの禁止など、法令上注意すべきポイントが数多くあります。運用方法を誤ると、労働トラブルや安全配慮義務違反につながる可能性もあります。
ストレスチェック制度の導入・運用に不安がある場合や、従業員への対応について判断に迷う場合は、労働問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
「VSG弁護士法人」では、企業側の労働問題に豊富な実績があり、案件によっては初回無料相談も受け付けています。トラブルの予防から解決まで徹底的にサポートさせていただきますので、労務管理に関してお悩みごとがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。