

この記事でわかること
従業員の離職理由が「会社都合か自己都合か」は、助成金の受給可否や労務トラブルの発生に直結する重要な論点です。
しかし実務では、会社の意向どおりに区分を決められるとは限らず、ハローワークの判断によって後から判断が変わるケースも少なくありません。
企業は、なぜ会社都合退職がリスクをもたらすのかを把握した上で退職手続きを進めましょう。
この記事では、企業が会社都合退職を避けたい背景を解説し、該当する具体的なケース、解雇が制限される場面、手続きの進め方を解説します。
目次
会社都合退職は、単なる離職理由の区分にとどまらず、企業経営に直接的な影響を与える要素です。
ここでは、企業が会社都合退職を避けたい主な理由を解説します。
雇用関係助成金の多くには「会社都合退職者を一定期間出していない」という支給要件が設定されています。
会社都合退職は、雇用の維持・安定を目的とする雇用保険の制度趣旨に反していると評価されるためです。
たとえば、2026年度のキャリアアップ助成金では、1人あたり最大80万円支給されるコースがあります(2026年4月28日時点)。
10人分の計画・申請期間中に会社都合退職者が1名でも出ると、合計800万円が不支給となります。
特に、将来の申請だけでなく、既に受給済の助成金についても返還が求められる可能性があるため、注意が必要です。
会社都合退職は、解雇や不十分な労務管理が前提となっているケースが多く、従業員との紛争に発展しやすい性質があります。
特に解雇の場合は「客観的合理性」と「社会通念上の相当性」が求められ、これを欠くと無効と判断される可能性があります(労契法第16条[注1])。
不当解雇と判断された場合、復職や未払い賃金の支払いに加え、紛争対応コストも発生するため、企業経営に大きなダメージとなりかねません。
[注1]労働契約法/e-Gov
労働契約法第16条
会社都合退職の代表例は、解雇や倒産、雇い止め等が挙げられますが、理由はこれらに限られません。
特に、従業員の責任によらない事情で就業継続が困難となった場合は「特定受給資格者」として会社都合退職に分類されます。
特定受給資格者の該当例は、次のとおりです。
会社が自己都合退職として扱った場合でも、ハローワークの判断により会社都合と認定されるケースがあります。
労基法第19条[注2]では、次に該当する従業員の解雇を禁止しています。
さらに、解雇を含む不利益取扱いが禁止されるケースは、次のとおりです。
これらに該当する場合は、不当解雇と判断される可能性が高まります。
[注2]労働基準法/e-Gov
労働基準法第19条
[注3]労働基準法/e-Gov
労働基準法第104条2項
[注4]労働組合法/e-Gov
労働組合法第7条1号
[注5]男女雇用機会均等法/e-Gov
男女雇用機会均等法第9条
[注6]育児休介護休業法/e-Gov
育児介護休業法第10条
[注7]育児休介護休業法/e-Gov
育児介護休業法第16条

会社都合に該当し得る場面では、手続きの進め方が重要です。
ここでは、手続きの進め方とポイントを解説します。
直ちに解雇に踏み切るのではなく、退職勧奨による合意形成を検討しましょう。
あくまでも任意の合意が前提となるため、高圧的な言動や即時回答の強要を避けます。
後のトラブルを防ぐために、面談記録を残す点も重要です。
また、会社都合を避けて自己都合の合意を得る交渉材料として、解決金の支払いや有休消化の取り扱いを優遇する方法もあります。
有休については、退職日までに全日程を消化させる、あるいは消化しきれない分の買い取り等が検討できます。
これらの条件は口頭で済ませず、合意書を作成しましょう。
離職票は、ハローワークの様式に沿って、適切な内容を記載します。
形式的な処理は避け、退職に至る経緯や社内記録と整合するよう慎重に行いましょう。
記載内容は、不当解雇トラブルにおいて重要な証拠となります。
会社都合と記載した場合、会社が雇用終了の主体であったという認識の裏付けとして扱われます。
その結果、解雇権濫用の主張を補強する材料となる恐れがあるため、注意が必要です。
会社都合退職の判断ミスは、助成金の受給停止や不当解雇トラブルに直結し、数千万円規模の損失や法的紛争を招く恐れがあります。
安易に解雇や雇い止めを進めると、離職理由が決定的となるため、事前に対策や手続きを見直す視点が重要です。
退職手続きにお悩みの企業様は、弁護士のリーガルチェックを受け、リスクの低い退職パッケージを構築してください。
VSG弁護士法人への早めの相談が、予期しない損失を防ぐための最善策となるでしょう。