この記事でわかること
- 公共工事の概要
- 公共工事と民間工事の違い
- 公共工事のメリット・デメリット
公共工事とは、官公庁が発注者となって道路や橋などの社会資本の建設や維持管理を行う工事です。
一般的に大規模なプロジェクトとなるケースが多く、施工後は実績として社会的な信用を得られるなどのメリットがあります。
民間工事よりも品質や安全性には高い基準が求められ、資格審査や入札など煩雑な手続きに対応しなければなりません。
ここでは、公共工事の概要や民間工事との違い、メリットやデメリットなどを解説します。
公共工事とは
公共工事とは、国や地方公共団体(都道府県や市町村)などの官公庁が発注者となる工事です。
競争入札を行い、最も工事を安く実施できる事業者と契約を結びます。
公共工事として実施される工事は、主に国や地方公共団体が管理するインフラ関連です。
公共工事の主な種類
公共工事には主に次の5種類があります。
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<建築工事>
役所、学校、図書館など、公共施設の建設や維持管理を行う工事です。 -
<土木工事>
道路、橋、ダム、トンネル、上下水道など、地面や建物の基礎に関連する工事です。 - <管工事>冷暖房設備、給排水設備、ガス管など、液体や気体を送る管に関連する工事です。
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<電気工事>
発電所、送電線、街灯、公共施設の配電など、送電に関する設置やメンテナンスを行う工事です。 -
< 造園工事>
公園、庭園、街路樹などの整備を行う工事です。
建設業法における公共工事の定義
建設業法では、公共工事の定義が以下のように定められています。
引用:
【建設業法27条23項】
1 公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。
2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。
一 経営状況
二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項
3 前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める
この条文によると、公共工事は「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事」となります。
建設工事を受注しようとする建設業者は、経営に関する審査を受けなければならないと定められています。
公共工事と民間工事との違い
公共工事と民間工事には、以下のような違いがあります。
- 発注者
- 予算
- 法規制
それぞれの違いについて詳しく解説します。
発注者
公共工事と民間工事との一番の違いは、発注者です。
公共工事は、官公庁が発注します。
一方で、民間工事は会社や個人など、官公庁以外のあらゆる人や団体からの発注です。
予算
公共工事は、国や地方公共団体が予算に基づいて建設工事の費用を負担します。
国や地方公共団体が保有する財源は、基本的に国民の税金です。
税金の無駄遣いを防ぐためには、少しでも低い金額で工事を発注しなければなりません。
そこで、競争入札により、基本的に最も低い金額を提示した事業者がその工事を受注します。
民間工事は会社や個人が費用を負担します。
少しでも安く工事を行うためには、複数の工事業者から相見積もりを取り、その中から安い金額を提示した事業者を選定します。
また、金額には関係なく、昔から付き合いのある業者や友人の業者に依頼するケースも少なくありません。
法規制
公共工事の場合、品質や安全性などにまつわる企業の技術力について建設業法で厳しい規制が課せられています。
公共施設は不特定多数の人が利用するため、品質や安全性に問題があれば多くの人に影響が及ぶ恐れがあります。
企業の技術力を担保するため、国が定める審査を受けなければ実施できません。
一方、民間工事の法規制は比較的ゆるやかで、発注者の要望に沿って工事を行います。
公共工事を受注するメリット
公共工事を受注するメリットは、以下の通りです。
- 社会的な信用を得られる
- 売り上げが安定する
- 技術力が向上する
それぞれのメリットについて解説します。
社会的な信用を得られる
公共工事を行っている会社は、金融機関や他の建設業者からの信用を得やすくなります。
国や地方自治体などの信頼性の高い行政機関から、企業が認められている証拠となるためです。
信用を得られれば、民間工事の受注も獲得しやすくなります。
売り上げが安定する
公共工事は景気の波に関係なく、安定的に仕事があるのがメリットです。
また、公共工事は民間の会社や個人とは違い、貸し倒れのリスクがありません。
工事代金はすべて現金での支払いが基本であり、資金繰りの心配をせずに済みます。
保証会社から前受金の支払いを受けられ、早期に多くの資金を手に入れられます。
技術力が向上する
公共工事は大規模なプロジェクトとなるケースが多く、高い品質や安全性、複雑な工事に対応するための技術力などが求められます。
プロジェクトへの参加により、請け負う会社や技術者にとっては新しい技術や専門的な経験を積む機会となります。
取得した技術は次の公共工事や民間工事に活かせるため、さらなる実績の獲得につながるでしょう。
公共工事を受注するデメリット
公共工事を入札するときは、以下のデメリットを考えたうえで手続きを進めましょう。
- 入札するまでに複雑な手続きが必要となる
- 入札する競争が激しい
それぞれのデメリットを詳しく解説します。
入札するまでに複雑な手続きが必要となる
公共工事は、競争入札に参加するまでの手続きが非常に煩雑です。
そのため、公共工事の受注を検討していたにも関わらず、入札前の段階で諦めてしまう建設業者もいます。
公共工事を落札した場合、その後に提出を求められる書類の量が膨大です。
民間工事で求められなかった書類の提出が必要となり、作成するまでに非常に手間がかかります。
膨大な書類は契約直後から完成した時まで何度も提出しなければならず、初めて公共工事を受けた事業者には大きな負担になるでしょう。
入札する競争が激しい
公共工事は大規模な受注や社会的な信用を得られるなどメリットが大きいため、多くの建設業者が入札に参加します。
公共工事の入札のうち、一般競争入札であれば資格を有するすべての建設業者が参加できます。
最も件数が多いとはいえ、大企業や公共工事での優れた実績を持つ建設業者も参加するため競争は激しくなるでしょう。
最終的に案件を獲得するためには、下請けでの実績や自社の強みとなる技術、独自の提案といったアピールも必要です。
公共工事を受注する流れ
公共工事を受注する流れは以下の通りです。
- 建設業許可を取得する
- 経営事項審査(経審)申請を行う
- 入札参加資格審査申請を行う
- 入札に参加する
公共工事を受注するためには、たとえ小規模な工事であっても建設業許可を取得する必要があります。
建設業許可を取得するまでに、1~4カ月程度の時間が必要です。
公共工事を受注する前に、まずは建設業許可を取得する準備をしておきましょう。
経営事項審査(経審)では、事業者の決算書から経営状況を分析し、評価点数をつけられます。
決算が終了した後、毎年経審を受け続ける必要があります。
まとめ
公共工事は民間工事と比べて大規模なケースが多く、資格審査や入札の手続きなど様々な違いがあります。
大規模な工事の受注や社会的信用の向上といったメリットの一方で、手続きの煩雑さや競争の激しさなどのデメリットもあります。
もし入札の手続きなどで不安がある場合、専門家に手続きの代行を依頼するのも一つの方法です。
もし専門家へ依頼した場合、手続きに誤りがあるなどの心配がなく、手間や時間を大幅に削減して本業に専念できるでしょう。