社労士事務所で働くのに必要なスキルとは?スキルアップ方法と共に解説
2021年10月28日
1章.社労士業界の就職・転職1-1.就職活動ノウハウこの記事でわかること
- 社労士事務所で働く上で必要なスキルがわかる
- 社労士事務所に向いている人の特徴がわかる
- 社労士事務所で磨いたスキルを一般企業で活かすヒントがわかる
法律系の資格の中でも、知名度・人気共に高い社会保険労務士資格ですが、実際に社労士事務所で働くとなると、どのようなスキルや人物像が好ましいのか、気になるところです。
今回は、社労士事務所で必要とされるスキルや人物像に関して解説していきましょう。
社労士事務所で働く際に必要なスキル
企業経営者にとって、かなりデリケートな領域の情報を扱い、サポートしていく社労士業務で求められるスキルは、一般企業で通常求められるものとは、やはり若干毛色が異なると言えます。
項目を分けて解説していきましょう。
答えを“外から”探し出す能力
社労士業務には、大きく分けて「個々のケースによって最適解が異なるもの」と「答えが一律に決まっているもの」があります。
前者は、かなり専門性の高い労務相談で、担当社労士によって、あるいは顧客の事情によって導き出される答えは異なります。
一方後者は、手続き業務や比較的簡易な労務相談が挙げられます。
例えば、手続き業務においては、行政が定めた様式に、決められた項目を記載して提出することになりますので、どこの社労士事務所が作成提出しても、同じ成果物でないといけません。
事務所ごとのカラーが出る余地のないものと言い換えてもよいでしょう。
この類の業務は、大抵、書籍や行政の窓口に答えが用意されています。つまり、頭の中からひねり出すまでもなく、頭の外に答えがあります。
社労士事務所という専門色の強い職場で働く際、自分の頭の中から答えを引っ張り出そうとするのではなく、「自分の頭の中以外に答えがある」という認識を以て、効率よく答えを引っ張り出すスキルは、社労士事務所は、かなり必要となります。
経営に必要な知識
社労士業務は、労務関連の知識さえ完璧であれば、それで良いというものではありません。
社労士事務所の顧客は、経営者であり、彼らは労務管理だけでなく、税金、会計、法務などの会社として遵守しなければならない事柄に対応しています。
時に、労務管理の問題を対処していく中で、そういった他分野とのクリアランスが問題になることがあります。
社労士業務であれば、税金の分野の知識がないと経営者とスムーズにやり取りできないことが多いです。
労務管理面ではよくても、他分野との絡みで問題が出てくるといったことは往々にしてあります。
こういったことを先回りしておくことで、「痒い所に手が届く専門家」と認識され、信用を得ることができます。
このため、会社経営に必要な知識についてバランスよく身に付けるスキルは、社労士事務所からも、顧客からも重宝されることになります。
営業力
将来独立開業を視野に入れているのであれば、営業のスキルは必須です。
独立開業するのであれば、顧客開拓からスタートすることになるので、営業できない=顧客がいないこととなり、そもそも仕事すらありませんので、収入も0です。
また、独立開業でなくとも、自ら顧問先を開拓できるスキルがあれば、所属している社労士事務所にも、売上というハッキリとした「数字」を以て、事務所への貢献度を示すこともできます。
つまり、昇給に直結しやすいと言えます。
自分の力で収入をアップさせたいと望むのであれば、営業力は非常に強力なスキルです。磨いておいて損はありません。
コミュニケーション能力
顧客である経営者が、本当に求めていることを理解するためには、経営者が普段から心の内に秘めて、他人には明かさない部分を引き出す必要があります。
ここで必要になるのがコミュニケーション能力です。
特に、深刻な労務相談があったときは、専門的な知識は当然のことながら、「関係者が本当に望んでいることはどういうことなのか」ということに重点を置いて話を引き出してみると、案外突破口を見出すことができる場面があります。
一方で、コミュニケーションを雑にしていると、肝心なところでお互いの認識に齟齬が生まれかねません。「この人は、真剣に私の話を聞いていない」と思われたら、気持ちのいい取引はできなくなります。
コミュニケーションのスキルは、対顧客のみでなく、事務所の職員同士でも当然重要になってきます。スムーズな事務所運営のためにも、必須のスキルと言えるでしょう。
社労士事務所で働くのに向いている人の性格・適性
社労士事務所では、求められるスキルも若干特徴的ですが、それに比例するように、社労士事務所で活躍する人の性格や適性にもやはり傾向がみられます。
コツコツ努力できる
社労士業のみならず、士業という職業は、傍から見ると華々しく思えるかもしれませんが、意外なほど地味でコツコツとした作業がほとんどです。
気の遠くなるような、膨大な量のデータを日々入力する作業もあり、こういった作業は短時間で一気に行うとミスが重なり、結果的に多くの労力を費やすこととなります。
日々の業務の中で、慢心することなくコツコツと地道に業務と向き合うことを辞さない性格は、社労士事務所では非常に歓迎されます。
経営に興味がある
先述のとおり、社労士事務所の業務においては、労務管理分野の知識だけでなく、周辺知識もある程度わかっていないと、経営者のニーズに応えることは難しいので、勉強は欠かせません。
しかしながら、労務管理の範囲だけでも覚えることは広範にわたるので、義務感だけではモチベーション的にも効率的にも、他分野にまで覚えるのは限界があります。
経営自体に興味があれば、日々の業務の中で疑問に感じたことを、他分野も含めて横断的に調べて体系立てて勉強することができます。
勉強と割り切って学ぶよりも、業務を通して実践的に得た知識の方がより経営者の望む形であることも多いのです。
聴き上手
先ほどのコミュニケーションスキルにも通じるのですが、相手の言葉を通して、相手の言いたいこと、望んでいることを的確に把握することは、仕事をする上で非常に重要です。
時には、経営者の愚痴を聴くことに徹しなければならないこともあるでしょう。
ついつい、専門家としての立場から口をはさみがちですが、相手はもうどうしようもないことは承知の上で、ただ愚痴を聴いてほしいだけという場面は案外多いのです。
考え方を変えれば、愚痴も含めて、どんなことも安心して相談できる相手であると認識されるほどの信頼を得ているということでもあります。
普段から「聴くに徹する」ことを意識しておくと、思いのほか、経営者に寄り添うスキルにつながることになります。
社労士事務所で働く人がスキルアップする方法
社労士事務所では、求められるものが今まで勤めていた職場と異なるため、戸惑うことも多いかと思います。しかしながら、働くからには、スキル・経験を効率よくアップさせていかないとなりません。
ここでは、社労士事務所でスキルアップを図るためのヒントについて項目を分けて解説していきましょう。
基本を愚直に反復
社労士業は、制度の改正に伴う制度の変更が頻繁にあり、アップデートされた制度の追従するために日々勉強は欠かせませんが、覚えることは膨大であり、一度や二度程度では、なかなか習得することは難しいというのが現実です。
しかしながら、先述の通り、社労士業務の多くは、どこかに「答えがある」のです。多くの場合は、書籍や行政の窓口に答えがあります。
大事なことは、一度学んだことは忘れても、思い出せるように工夫しておくといった基本的なことです。
例えば、業務の過程で失敗や躓くことがあるたびに、新しく学んだことを、また思い出せるように付箋などでメモをしておいて、テキストに貼り付けて残しておき、最新のテキストが出る度に付箋を張り替えてアップデートしておく等です。
地味で基本的なことを愚直なまでに反復してください。これを実践しない人は、いつまでも同じところで躓き、時間を浪費してしまいます。
人の機微を読み取る
社労士業務は、3大経営資源の内、「人」にまつわる分野の専門家です。
残りの経営資源である、「モノ」「カネ」には、感情はありませんが、「人」は感情で動きます。
対面した相手が、または受話器の向こうの相手が、今どのようなことを考えているのか思いを馳せながら、表情や声色などから微細な感情の流れをくみ取りながらやり取りすると、思わぬ地雷を避けることができます。
専門知識ばかりを意識してしまうと、相手が感情をもつ人間であることを忘れて、無味乾燥な対応をしてしまいがちなので、人の機微を逃さないように相手に意識を向けるように心がけましょう。
社労士事務所で得たスキルを一般企業で活かす方法
社労士事務所での業務はかなり専門色が強い特化型の職種と言えますが、「人」に関する事柄を扱い、一癖も二癖もある経営者からの信頼を勝ち取る過程で身についたスキルや知識は、一般企業においても求められるスキルであると言えます。
ここでは、社労士事務所で培ったスキルや知識を基に、一般企業で手腕を発揮するにはどのようなキャリアアップ先があり、どのように行動していけばスムーズなキャリアアップにつながるのか、項目を分けて解説していきましょう。
一般企業の人事総務部
社労士事務所で得た経験や専門知識などのスキルを持つ人材を、積極的に採用しようとする企業は多いです。
特に、中堅規模で、総務部門の層が厚い企業では、専門機関にアウトソーシングするのではなく、内部に専門知識を持つ人材を据えて内製化を図った方が効率的な面もあるので、より積極的に採用しようという動きもあります。
こういった一般企業で手腕を発揮する場合、今一度、ビジネスマナー等、社会人としての常識を一通りおさらいした方が良いでしょう。
なぜなら、社労士事務所という専門色の強い職場は、事務所によっては独自の社風で事務所運営しており、一般的な企業の人間から見れば異質に映る可能性があります。こういったことは、思いのほか、当の本人は気付かないものです。
個人経営の社労士事務所が多く、代表社労士の方針で比較的自由な社風も珍しくない上に、案外本人に自覚がないというのが厄介なので、社会人としての感覚を世間一般レベルに是正しておく意味でも、書籍などを参考にしてズレがないかどうかチェックしておきましょう。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームとは、企業の持つ経営面での課題を解決まで導くことを専門とする業種です。経営者のサポートをする社労士業務ともリンクする部分は多く、社労士事務所で培ったスキルが活かせます。
人事労務の側面だけでなく、包括的なサポートを行うコンサルティングファームで手腕を発揮するのであれば、社労士分野に軸足を置きつつ幅広い周辺分野の知識を吸収し、可能であれば、実務経験も積んでおくべきです。
また、コンサルティングファームと一口に言っても、総合系、戦略系、シンクタンク系などいくつかの種別に分かれる上、各企業の特色によっては、社労士事務所で磨いたスキルを活かせる場面が少ないこともあるので、ある程度狙いを絞っておくことが肝心です。
まとめ
社労士事務所での業務は、責任も重く、地道な作業も多いので、求められるスキルも一般企業のそれとはやや毛色が違いますが、努力して、そのスキルを磨けば一般企業でも十分通用するものです。
今回の内容を参考に、将来のキャリアアップも含めた長期的なスキルアップ計画を考えていきましょう。