社労士事務所の繁忙期と残業の実態!避けた方がいい社労士事務所の特徴とは?
2021年2月3日
2章.社労士事務所の待遇2-2.残業・ワークライフバランスこの記事でわかること
- 社労士事務所の繁忙期となぜ忙しいのかがわかる
- 社労士事務所の残業時間の実態がわかる
- ハードワークな社労士事務所の見分け方のヒントがわかる
ワークライフバランスというワードが定着して久しい昨今、昔なような「社会人は働いてナンボ」なんていう考えは、ともすればパワハラとも捉えられかねないものとなっています。
仕事とプライベートの時間をいかに「両立」させるかが人生の幸せの基準の一つとして認知されてきた中で「いかに残業を減らして、プライベートの時間を確保するか」が、働く側にとって大きな関心ごとになってきているといっても過言ではないでしょう。
また、国の方針としても、働き方改革をはじめ、ワークライフバランスの実現を歓迎する方向にあり、「残業時間の削減」は企業・労働者ともに大きな命題の一つであり、働くにあたって「実際のところ、残業ってどれくらいあるの?」と気にされる方が多いのも現実です。
社労士事務所をはじめとした士業の世界でも、この影響は大きく、少数精鋭のイメージがありがちな企業風土を持つ社労士事務所においては、繁忙期はどのようなハードワークが待っているのか?残業の実態はどうなっているのか?事前に知っておきたい方は多いことでしょう。
今回は、そんな気になる社労士事務所の繁忙期と残業について解説していきましょう。
社労士事務所の繁忙期はいつ?
社労士事務所は、その業務内容の性質上、常に一定のペースでの業務(いわゆる定常業務)があり、これに加えて、シーズンごとや顧客の事情に応じて繁忙業務が上乗せする形となります。
顧客事情に伴うものは、ともかくとして、シーズンごとの繁忙はある程度パターン化されており、主に年度の切替わりと6月~7月、そして年末年始が該当します。
社労士事務所は常に忙しい?
社労士業務の中で、定常業務と言えるものは、入退社や従業員の家族事情に伴う、雇用保険・社会保険の手続き業務と給与計算があります。
前者は、年度の切替わり等、人事異動が活発になる時期を除いては、割と散発的に発生するものであり、業務量的には、それほど多くはないでしょう。
一方、後者の給与計算は、月々必ず発生するものであり、納期もあり、ミスも許されない業務であるため、多くの社労士事務所にとって、やりがいはあるものの重圧感がある業務となります。
この給与計算業務が毎月あるため、社労士事務所には、閑散期がないも同然な事務所も存在します。
月単位の閑散はない一方で、この給与計算業務があまりない「スキマ」的な閑散が発生することも多いため、月の中での繁閑がハッキリしていると捉えることもできます。
年度の切替わりと6~7月の繁忙業務
社労士業務のシーズン的な繁忙として、定番と言えるものが、まず人事異動に伴う、雇用保険・社会保険の手続き業務です。
年度の切替わり時期は、入退社が多いため、必然として手続き業務が増加します。
社会保険の手続きに関しては健康保険証の早期発行を希望される従業員も多いため、スピードが求められるので、この業務がひと段落するまでは、残業が多くなります。
これに加えて、労働保険(労災・雇用保険)の年度更新、という業務も発生します。
労働保険の年度更新は、4~6月にかけての比較的長い期間であり、繁忙といっても緩やかなものかと思われますが、行政に対する届出の締め切りは6月~7月上旬となるため、この時期は、修正作業も入るため、かなり業務がタイトになります。
そして、7月は社会保険の算定基礎があり、先述の労働保険の年度更新と時期が若干重なるため、やはり6月~7月は、多くの社労士事務所にとって繁忙期と言えます。
年末年始の繁忙業務
年末年始は、税理士事務所の場合、年末調整のため繁忙となりますが、社労士事務所にとっても繁忙となることが多いです。
本来、年末調整は税理士の範囲内であり、一見社労士事務所とは関係なさそうに思えますが、税理士と社労士のダブルライセンスで事務所を運営している社労士事務所は数多くあります。
そういった事務所で、働くとなると、必然として年末調整の繁忙業務に関わることになります。
また、税理士事務所と併設していない、社労士事務所でも、年末年始休暇の都合上、給与の締め日と支払日によっては、給与計算業務の納期がタイトになるという宿命が待っています。
社労士事務所の残業の実態
では、実際に社労士事務所の残業時間というのは、通常時と繁忙期でどれくらいの時間数になるのかデータを踏まえてお話していきましょう。
今回参考にするデータは、弁護士、司法書士、税理士などの他士業も含めた「士業」というカテゴリーでの統計となりますが、5万事務所を超える事務所から抽出されたデータであり、社労士事務所の実態をお話する上でも、十分参考になることでしょう。
通常時の残業時間
以下のデータは、士業事務所で正社員として働く従業員の回答を集計したものとなります。
(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』)
上記のデータは、1週間ベースのため、1月あたりで考えると、約半数は、通常の月であれば残業時間は40時間未満と考えることができます。
一方で、通常月であっても、残業時間が40~80時間あるいはそれ以上の正社員は、40%弱に達することとなります。(1ヵ月を4.34週で換算した場合)
1ヵ月の所定労働日数を20日と考えた場合、半数近い正社員は1日あたり2~4時間の残業をしているという計算になります。
通常時であっても気を抜けない
繁忙でない月とはいえ、社労士事務所には、給与計算業務が必ず発生します。
どれだけ納期がシビアであっても、ミスが発生しないよう、複数のチェック工程が機能するために、残業してでも、必要な業務時間を捻出する必要があります。
となると、月の中で定時に帰れるような閑散期があったとしても、どこかではある程度高い負荷をかけて、つまり残業をしてでも業務を完遂させなければならないタイミングが、社労士事務所には、必ず存在するということになります。
繁忙時の残業時間
今度は、同じく、士業事務所で働く正社員が、勤務する中で、最も残業時間が多かった週について回答を集計したデータとなります。
(出展:ファイブスターマガジン『事務所経営白書2020』)
こちらも、1月あたりで考えると、繁忙を極める士業事務所では、約40%の正社員が、80~120時間あるいは、それ以上の残業をしているということがわかります。
1ヵ月の所定労働日数が、20日として考えた場合、繁忙期は、半数に近い正社員が、平均して1日4~6時間残業をしているということになります。
社労士事務所はかなりハード?
ちなみに、労災認定の目安となる残業時間の「過労死ライン」は、1ヵ月で80時間ですので、ホワイトな印象を持たれる方もいらっしゃる士業においては、業務が時にハードワークになるということは、このデータでもおわかり頂けるかと思います。
先述の通常時のデータからも見て取れる通り、半数に近い正社員が、通常時であってもある程度残業をしないと業務が正常に回らないといった実情があります。
繁忙期になっても、必ず完遂すべき業務を抱えた上で、繁忙業務に向き合う社労士事務所の辛いところとも言えます。
企業の残業時間などの問題について、専門家として寄り添う社労士事務所が、その実、なかなかのハードワークが当たり前という何とも皮肉な数字であるとも言えるでしょう。
あくまで、他の士業等も含めた統計となりますので社労士事務所単体で捉えた場合、正確な数字とは言えませんが、納期がシビアになる給与計算業務などの定常業務に加えて、シーズン的な繁忙業務が上乗せされる社労士業の性質上、実態としては、それほどかけ離れてはいない数字とも言えます。
残業が発生する理由と・原因
顧客への貢献度も高く、やりがいが大きな分、時にハードワークともなる社労士事務所ですが、繁忙期はあるとはいえ、比較的、定期的に繁忙が発生する業態なので、「ある程度予測して、ハードな残業を避けることはできるのでは?」という意見もあります。
当然、好き好んで身を削るようなハードワークに至るには、次のような事情があります。
給与計算が社労士事務所をブラック化させる?
給与計算業務には、様々な形があり、例えば人数も少なく、全員月給で、毎月同じ金額であり、ほぼ同じ数字を毎月入力する程度という、簡易な案件もある一方、顧客から送ってきたタイムカードを基にエクセル等の電子データに入力して、残業代などの集計をするという手間がかかるものもあります。
加えて、顧客ごとに独自のルールを設けているケースもあり、人数も多ければかなり煩雑な業務になります。
煩雑な業務ではありますが、毎月必ず発生し、必ず決まった納期に間に合わせないといけないのが給与計算であり、締め日を過ぎてからでなければ着手できないので、あらかじめ準備することも困難です。
加えて締め日と支払日との期間が短ければ、その分納期はタイトになりますし、長期休暇や祝日などの都合によっても、火急の業務になることもしばしばあります。
この給与計算業務が多い、社労士事務所では、ただでさえハードな日常業務に、シーズン的な繁忙業務が上乗せされることになるので、必然として、残業せざるを得ない状況となります。
ミスが許されないという重圧
給与計算をはじめとした、社労士事務所の業務は、顧客にとっても重要な要素をアウトソーシングしているので、貢献度が高い分、ミスは許されません。
一見大ごとでなさそうなミスであっても、顧客の信頼を損なうことに繋がりますので、ミスが起こらないような業務オペレーションが、事務所を運営する上で大前提となります。
そういった前提では、納期ギリギリで間に合わせるような、仕事のやり方は歓迎されません。
人間なので、ミスはつきものですが、そもそも、そういったミスが起きやすいような「ギリギリ」の状況をとにかく嫌う士業経営者は多いです。
ミスを避けるべく、複数のチェックという工程を踏むためにも、常に「ある程度の余力」を確保しなければなりません。
そうなると、できることはとにかく前倒しですべきであり、そのためにも残業はやむなしといった、考えは、特にマンパワー不足になりがちな小規模の社労士事務所には多いです。
避けた方がいい社労士事務所の特徴
こうして考えると、社労士事務所という業態は、その業務の性質上、ミスが許されない、納期が常にあるといった緊張の下、息抜きが難しいものといったイメージが付いて回ります。
そういった中で、残業が多いハードな職場といった切り口で考えた場合、避けた方がいい社労士事務所の特徴としては、やはり少数精鋭で運営している小規模事務所となるでしょう。
まとめ
企業への貢献度の高さに比例して、求められる責任の高さが、社労士事務所の残業時間のデータを裏付けているとも言えます。
その一方で、業界全体として、業務の時短に寄与する様々なツールが投入されており、今後は、社労士事務所においても、ワークライフバランスを重視した風潮が根付いてくる兆しもあります。
今回の内容が、社労士事務所での勤務を志望する方の一助になれば何よりです。