社労士事務所の仕事内容は主に3種類【社労士の独占業務や求められるスキルも解説】
2021年3月3日
3章.社労士の仕事内容3-1.社労士事務所の仕事内容この記事でわかること
- 社労士事務所の仕事がどういったものなのかがわかる
- 社労士の独占業務に関する注意事項がわかる
- 社労士事務所の年収相場や、求められるスキルがわかる
働き方改革や、テレワーク勤務へのシフトなど、働く環境が目まぐるしく変化している時勢の中で、社労士の存在価値は、注目されており、社労士事務所への勤務を希望されるケースも増えています。
しかしながら、「社労士とは一体、何をするのか?」社労士の仕事に関しては何となく理解している程度で、実態としてどういった仕事内容なのかは、わからないといった方も多いようです。
今回は、社労士事務所の仕事内容について、社労士法に定められている1号~3号業務の内容を軸において解説していきましょう。
社労士事務所の主な仕事内容は3種類
社労士の業務は、社労士法にて1号~3号業務に区分けされています。
この項目では、各号ごとにどういった業務内容なのか、解説していきましょう。
手続き代行の1号業務
1号業務とは、「労働社会保険諸法令に基づき、行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類を作成することです。
ざっくり言ってしまうと、いわゆる労働行政(労働局、労働基準監督署、ハローワーク等)や年金事務所に提出する書類や手続きを、事業主に代行して行う業務です。
具体的に、例を挙げると、従業員の入退社に伴う、社会保険、雇用保険の手続きなどは、本来、事業主が責任をもって行うものとされています。
こういった書類や手続きは、専門知識を以て行うことが好ましいものばかりで、素人が何も知らずに行うとトラブルになるケースも多々あります。
しかしながら、そういった専門知識を有する従業員を確保することが困難な事業主が多いこともあり、このため、専門知識を有する資格者のみが報酬を受けて代行できるように定められることとなりました。
この資格者が、「社労士」というわけです。
先述の通り、1号業務は、社労士の独占業務であり、報酬を受けて代行できるのは、原則社労士のみです。
帳簿作成の2号業務
2号業務には、労働および社会保険に関する法令に基づく帳簿作成業務の代行が定められています。
この帳簿は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿のいわゆる「法定3帳簿」と言われており、この他にも、就業規則の作成代行も、この2号業務に該当することとなります。
1号業務と同じく、こういった帳簿類も、本来、事業主が整備することが義務付けられていますが、原則として社労士のみが、報酬を受けて、代行できる業務となっています。
相談業務の3号業務
3号業務は、労務管理や、社会保険に関するコンサルティングが該当します。
事業を運営していくにあたり、従業員絡みの、悩み、トラブルは尽きることはありません。
また、こういったトラブルを解決するにあたり、コンプライアンスをクリアするには、労働および社会保険に関する法令知識を欠くと、更に問題が大きくなりかねません。
こういったトラブルへの対応のために、状況を把握して、事業主、従業員にとっての“最適解”を導き出すサポートが、この3号業務と言えます。
1号、2号業務は、ある程度、定型的なもので「答えが用意されている」業務と言えます。
一方、3号業務に挙げられる相談業務においては、個々の案件ごとに、“最適解”は異なる上、「何が答えなのかはわからない」業務であり、似たような事例であっても、対応する社労士によって、導き出す答えが違うことも往々にしてあります。
このように、3号業務は、1、2号業務とは趣の異なる、社労士個々人のカラーが大いに現れる業務分野だと言うことができるでしょう。
また、3号業務は、社労士以外の者であっても、「報酬を受けて」対応することができます。
社労士の独占業務と他の専門家の独占業務との関係
先述の通り、社労士には、独占業務が定められており、社労士でない者が報酬を受けて対応すれば基本的に、社労士法違反となります。(弁護士は、1号、2号業務を行うことが可能です)
これは、他の資格についても然りで、その資格者でなければ、行うことができない独占業務が定められており、社労士業務を行う上で、他の資格者の独占領域に踏み込まないように注意しなければなりません。
社労士業務を行う際、よく引き合いに出されるものとしては、税理士が行う「年末調整」があります。
社労士は、給与計算業務を代行することも多く、その一環として、「年末調整」の代行を顧問客から求められるケースがあります。
しかし、「年末調整」は税理士の独占業務であるため、税理士以外の者が代行すれば、税理士法違反の可能性があります。
もちろん、税理士と社労士がタッグを組んでいる事務所であれば、税理士法に違反することなく、税理士分野のサービスを提供することは可能ですが、有資格が社労士のみであれば年末調整をすることは違反となります。
経営者の中には、給与計算をしているところが、年末調整を行うという認識を持っている方も多いので、この辺りの領域の住み分けはしっかりと意識すべきでしょう。
社労士の独占業務に関する主な違反内容
社労士の1号~3号業務各号の業務ごとに、原則社労士のみが報酬を受けて行えるか、この可否が定められており、違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金というペナルティが課せられることとなります。
先述の通り、3号業務であるコンサルティングに関しては、独占業務ではないため、社労士以外の者が報酬を受けて対応することは、社労士法に違反しません。
独占業務に関する主な違反としては、近年では、社労士資格を持たない者が、報酬を受けて助成金の申請を行ったとして、処罰されるケースが目立ちます。
助成金の申請は、社労士の1号業務に該当するため、報酬を受けて対応できるのは、原則社労士のみです。
裏を返せば、「無報酬であれば社労士法に違反しない」ので、無償で対応しているように見せかける、あるいは、事業主や社内の人間が作成、提出しているように処理するといったパターンが横行しています。
助成金は、事業主にとって、関心が高く、メリットを数字で明確に示すことができるため、こういった無資格者による介入で半ば強引に助成金を受給しようとして、後々トラブルに発展するケースが後を絶たないため注意が必要です。
社労士事務所の給与・年収相場
独占業務や、非独占業務が入り混じる、社労士事務所の給与、年収の相場ですが、その事務所の規模に応じて、ハイアンドローになっているのが実際のところです。
社労士事務所は、個人経営の事務所が多数を占めるため、そういった事務所では、正職員になった場合、年収にして、300万~400万程度の待遇の求人が多いです。
一方、複数の資格者を擁する、規模の大きな社労士法人などでは、資格者であれば、年収400万~600万程度の待遇を約束している案件もあることから、働くステージによって、収入にはかなり高低があると言えるでしょう。
ただし、個人経営の小規模事務所であっても、事務所の中核になるようなポストであれば、一部上場の従業員の年収よりも高い収入を得ることは、不可能ではありません。
社労士事務所で働く人に求められるスキル
社労士業務は、顧問先の企業に対する貢献度が高く、やりがいもある職種と言えますが、それに比例して、責任も重く、ミスが許されない業務でもあります。
些細な油断が、顧客からの信頼を一気に失うほどのミスにつながることも珍しくないため、業務運営には、繊細で、きめ細かい気配りが求められます。
また、このような気配りは、顧問先の状況の変化を察知することにも有効に働きます。
このため、社労士事務所では、責任感が強く、きめ細かい気配りができる人材が好まれる傾向にあります。
また、パソコンスキルも、選考過程で問われる社労士事務所も珍しくありません。
社労士事務所を志望するのであれば、履歴書などでアピールできるパソコン系の資格を取得しておけば、選考を有利に進めることができるでしょう。
まとめ
今回は、社労士事務所の仕事内容について、社労士法に定められている、「1号~3号業務」「独占業務」という切り口で解説するとともに、収入面や、社労士事務所で求められるスキルについても触れました。
ご自分の描くワークスタイルとマッチするのかという点でも十分に吟味し、スキルアップするための参考にご活用ください。