社労士事務所から一般企業に転職するメリット・デメリット【一般企業の労務部・人事部との違いも解説】

2021年3月8日

3章.社労士の仕事内容3-3.社労士としての仕事・キャリア

この記事でわかること

  • 社労士事務所と一般企業の労務部・人事部との違いがわかる
  • 社労士事務所で働くメリット・デメリットがわかる
  • 一般企業の労務部・人事部で働くメリット・デメリットがわかる

社労士の仕事に興味を持っている人は、社労士事務所と一般企業の労務部・人事部のどちらで働くのが自分に合っているのか迷うかもしれません。
社労士事務所は沢山の顧問先企業を相手にするのに対して、一般企業の労務部・人事部は所属企業のために働きます。
一般企業の会社員として士業を行う、勤務社労士になるのも選択肢の一つです。
社労士事務所と一般企業のどちらがよいかは一概には言えません。
どのようなキャリアプランを持っているか、どのような環境で働きたいかによって最適な選択は変わります。

この記事では、社労士事務所と一般企業の労務部・人事部の違いや、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
これから社労士業務に携わりたいと考えている人は、就職先を検討する際に参考にしてくださいね。

社労士事務所から一般企業に転職するメリット・デメリット【一般企業の労務部・人事部との違いも解説】

社労士事務所と一般企業の労務部・人事部との違い

社労士事務所と一般企業の労務部・人事部で働くのには、大きく2つの違いがあります。

サービスを提供する対象

社労士事務所では、事務所の顧客である企業に労務に関するサービスを提供します。
たとえば、社会保険や雇用保険の書類作成と提出代行、給与計算、労務相談などです。
社労士事務所では数十社の顧問契約をしている場合もあります。

それに対して一般企業の労務部・人事部では、所属する企業の業務に従事します。
具体的には、所属する企業の従業員に関する労務全般の手続きや労務のアドバイスです。

業務内容の幅広さ

社労士事務所では顧客企業の労務に関わる業務や人事制度に関わるアドバイスを行いますが、実際の運用にはあまり関与しません。
一方、一般企業の労務部・人事部では、制度に関するアドバイスに加えて、実際にその制度を運用するのも業務の一つです。

たとえば、人事評価の進捗管理や採用の面接官、会社説明会の企画などを行うこともあります。
労務の専門家としての業務だけでなく、従業員満足度を向上させるための企画を考えるなど、所属企業の成長のために幅広い業務を経験できるといえるでしょう。

社労士事務所から一般企業へ転職する人のキャリアプラン

社労士事務所から一般企業へ転職する人のキャリアプランとして、勤務社労士があります。
勤務社労士の特徴は、一般的に企業の労務部・人事部で働く会社員でありながら士業として働けることです。
勤務社労士として社会保険労務士会に登録することができ、スキルアップのための研修にも参加できます。
社会保険労務士会の年会費は、会社が負担することが多いです。

勤務社労士の仕事内容には次のようなものがあります。

勤務社労士の主な仕事内容

  • 従業員の給与計算
  • 入退社に伴う社会保険・雇用保険の手続き
  • 就業規則の改定
  • 人事制度の改善
  • 採用活動

職場環境は、所属する企業によります。
社労士事務所は少人数で運営していることが多いですが、所属する企業の規模が大きければ、広々としたオフィスで多くの部署の人と交流があるでしょう。
労務部・人事部内で出世すれば、多くの部下を管理する可能性もあります。

勤務社労士として働くメリット・デメリット

勤務社労士として働くメリット・デメリットをまとめました。

勤務社労士として働くメリット

まず、勤務社労士は企業に属していることから、収入が安定するメリットがあります。
企業によっては、社労士の資格手当が給与に上乗せされます。
最近は勤務社労士をCHO(最高人事責任者)に登用する企業が多く、企業内での出世も狙えるでしょう。
顧客が所属企業だけなので、新規開拓の営業がないのも人によってはメリットと言えます。

また、自分の働いている企業のために働くので、企業の成長や従業員の労働環境を支えているというやりがいを感じやすいです。
経営者から信頼されるパートナーになって、企業の発展を労務の面でサポートすることができます。

勤務社労士として働くデメリット

勤務社労士として働くデメリットは、収入が上がりにくいことです。
所属する企業の給与規定に従って給与が決まるので、他の社員とそこまで差はありません。
資格手当が出るケースでも、月に数千円から多くても3万円程度の企業が多いです。

社労士事務所を開業すれば、自分の努力次第で収入は上がっていきます。
社労士事務所では労務サービスを提供することが利益に直結していますが、勤務社労士が行う業務はあくまで企業のサポートです。
労務部・人事部は直接利益を生み出す部門ではなく、スタッフ部門になります。

勤務社労士として働くのが向いている方

勤務社労士として働くのが向いているのは、安定した労働条件で働きたい人です。
企業に所属するので、会社員と変わらない待遇になります。
大きく収入が増えるチャンスは少ない代わりに、大きく減るリスクも少ないです。
社労士事務所のように営業で仕事を獲得する必要がないので、内勤志望の人にも向いています。

また、所属する企業に愛着がある人にも勤務社労士がおすすめです。
社労士事務所では沢山の顧問先企業と関わるので、1つの企業に対する関係性は勤務社労士よりも薄くなります。
一方、勤務社労士として企業の労働環境を改善し従業員の満足度を向上させることは、自分の労働環境や満足度向上にも繋がるのです。
自分の所属する企業の成長を支えたい、企業内で管理職や執行役員などのポジションを目指したい人は、勤務社労士として企業に貢献するほうが向いているでしょう。

一般企業から社労士事務所へ転職する人のキャリアプラン

一般企業から社労士事務所へ転職する場合、未経験可の社労士事務所を探せば転職できます。
最近では未経験者歓迎の求人も多く、人物重視の採用をしている事務所が増えてきました。
社労士事務所の勤務経験がなかったとしても、一般企業で給与計算や社会保険の手続き経験があれば有利です。
社労士資格はあるに越したことはありませんが、勉強中でも応募可能な求人はあります。

社労士事務所では、顧問先企業から労務関連の手続きを請け負います。
従業員の個人情報を預かり、企業の代わりに書類を作成して行政機関に届けるのです。
その他、給与計算を行ったり、労務トラブルが発生したときの相談に乗ったりします。
近年はコンサルティング業務に力を入れている事務所が多く、人事評価制度や採用プロセス、採用後の研修プログラムなどを提案することもあります。

また、事業拡大のためには新規顧客の開拓も重要な業務の一つです。
社労士事務所は少人数で業務を行うのが一般的で、規模の大きな社労士法人でも数人のチームを編成して業務を行います。
チームワークを発揮して協力しながら、迅速かつ正確な作業をすることが必要です。
同じチームで働く人との人間関係が、働きやすさや生産性に大きく影響します。
基本的にはデスクワーク中心ですが、行政機関への書類提出や顧客訪問で外出することもあるでしょう。

一般企業から社労士事務所に転職するメリット・デメリット

一般企業から社労士事務所に転職するメリット・デメリットを紹介します。

一般企業から社労士事務所に転職するメリット

社労士事務所に転職すると、労務の専門知識を追求できます。
一般企業の労務部・人事部では、労務と関係が薄い業務も仕事の一部です。
たとえば、福利厚生の一環としての社内イベントなども企画しなければなりません。
社労士事務所で働けば、労務に関する知識や経験を効率よく身に付けることができます。
多くの社労士事務所では、スキルアップを目的として定期的に勉強会を行っています。
労務の専門家として意識の高い環境に身を置くことができるので、スペシャリストを目指せる点がメリットです。
また、自分の働きが事務所の利益に直結するので、結果が目に見えやすく収入も上がりやすいです。

一般企業から社労士事務所に転職するデメリット

一般企業から社労士事務所に転職するデメリットは、収入が安定しないことです。
一般的に、社労士事務、所は一般企業よりも規模が小さく、経営基盤が安定していません。
福利厚生などの制度も従業員が多い一般企業のほうが充実している傾向にあります。

また、社労士事務所は、当然のことながら一般企業の労務部・人事部よりもより専門的な知識が求められます。
なぜなら、沢山の顧問先企業の経営者に労務の専門家としてアドバイスする必要があるからです。
専門家としての知識や経験は身につく反面、特定の企業の発展に深く貢献しているというやりがいは薄くなります。

一般企業から社労士事務所に転職するのが向いている方

社労士事務所に転職するのが向いているのは、将来的に社労士として独立開業を考えている人です。
社労士事務所の開業を考えているなら、労務に関する実務だけでなく事務所の運営に関わる業務も間近で勉強しておきましょう。
たとえば、新規顧客をどう開拓するのか、事務職やアシスタント職をどう教育するのか、事務所全体の生産性をどうやって高めるのかなど、一般企業で働いていてはわからないことが多いです。
沢山の顧客先企業と接点を持つことで人脈も広がりますし、色々な業種の経営者と話ができるのは貴重な経験と言えます。

また、まだ独立開業は考えていない人でも、労務の専門家としての業務に専念したい人は社労士事務所を選ぶとよいでしょう。
一般企業の労務部・人事部では、大企業で完全に分業制の組織でない限り、労務・人事だけに専念できる環境ではありません。
企業全体の発展を考えて社労士業務と関係のない仕事もこなせる人はよいのですが、スペシャリスト志向が強い人は社労士事務所が向いています。

まとめ

社労士事務所と一般企業の労務部・人事部の共通点は、労務関連の手続きや労務相談を行うことです。
しかし、社労士事務所は複数の顧問先企業にサービスを提供するのに対して、一般企業の労務部・人事部では所属企業のスタッフ部門として働きます。

一般企業の労務部・人事部で働くキャリアプランとして、勤務社労士があります。
会社員として企業に所属しながら士業として働けるので、収入を安定させつつ専門職として働けるのがメリットです。
所属企業の成長に貢献し、管理職など出世を目指すことができます。
ただ、あくまで会社員なので、給与水準は一般の会社員と変わりません。
社労士事務所のほうが収入の上がる可能性は大きいです。

未経験者でも転職できる社労士事務所はあります。
社労士事務所の勤務経験がなくても、一般企業での労務や人事、経理の経験は十分アピールできる強みです。
社労士事務所では労務のスペシャリストとして専門的な知識や経験を得ることができます。
一般企業ほど待遇面で安定はしていませんが、将来的に独立開業を考えているなら社労士事務所で働くほうがよいでしょう。