個人の社労士事務所と社労士法人は何が違う?平成28年の社会保険労務士法の改正で変わったことも紹介
2021年3月3日
3章.社労士の仕事内容3-2.社労士事務所のキャリア・独立この記事でわかること
- 平成28年の社会保険労務士(以下:社労士)法の改正で、社労士法人の設立に関して何が変わったのかがわかる
- 個人の社労士事務所、社労士法人でどのような性質の違いがあるのかがわかる
- 社労士としての下積みの場所として、個人の社労士事務所と社労士法人どちらが適しているのかがわかる
「自分も社労士の業務に携わって世の中に貢献したい」「社労士として独立するために経験が積みたい」そういった方々にとって、数ある先輩社労士の事務所の内、一体どこを選べばいいのか悩まれる方が多いです。
知り合いに社労士の業務経験がある方がいるというのは稀でしょうから、相談する相手がいないというのが現状でしょう。
そんな方々の為に、個人の社労士事務所と社労士法人という切り口で、それぞれの性質の違い、どういった方々が適しているのか?
平成28年の社労士法改正で変わった点も絡めて、解説していきましょう。
個人の社労士事務所と社労士法人の違い
ここでは、個人事業主として小規模な運営をしている「個人の社労士事務所」と、法人として組織化してされている社労士事務所「社労士法人」と比較して、社労士事務所について解説していきます。
※社労士法人でも、小規模な運営をされている事務所もあり、個人の社労士事務所もまた然りです。
ここでは一般的な「個人の社労士事務所」と「社労士法人」という前提で展開していきます。
個人の社労士事務所
一般的に社労士というと、運転資金等の面で、独立開業のハードルが低いこともあり、個人事業レベルで運営されている事務所が大多数を占めます。
故に、その事務所では社労士個人のカラーが色濃く反映されるのも、個人の社労士事務所の特徴であると言えるでしょう。
低賃金かつ業務が多岐に渡る
数人レベルで運営されている事務所が多数を占めるため、少数精鋭で事務所運営に臨まれているところが多いです。
少数故に、職員各々が担当する業務は多岐に渡り、業務内容も世間一般で事務よりも専門性が高く、負担もハードになる場面がある一方、賃金は低い傾向にあります。
社会保険の適用がない事務所も
また、社労士などの士業は、社会保険の非適用の業種となっており、個人の事務所の場合、フルタイムでの勤務であっても社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入できません。
非適用の業種であっても、「任意適用事業所」の手続きを踏んでいれば個人の社労士事務所でもフルタイムで社会保険の加入対象となりますが、そういった社労士事務所は少数であると言えます。
個人の社労士事務所が向いているのはこんな人
後述する社労士法人と比較して、待遇面においては劣っているように見えることが多い個人の社労士事務所ですが、社労士として独立開業する人には、見方を変えればプラスになる面があります。
事務所のありとあらゆる業務を経験することができるので、独立開業して1人でゼロからのスタートをする際、幅広い業務経験は大きな追い風になります。
また、社労士法人のような好待遇であれば、ぬるま湯につかってしまい、いつの間にか独立する為のモチベーションを失ってしまうという面もあることから、むしろ好待遇でなくとも、独立する為のハングリー精神を燃やし続けるという意味では、個人の社労士事務所が好ましいという考え方もあります。
社労士法人
個人の社労士事務所が大多数を占める中で、徐々にその数を増やしている社労士法人ですが、個人の社労士事務所と比較してどのような違いがあるのか、解説していきましょう。
社労士法人とは?
社労士法人とは、社労士業務を組織だって運営するために、社労士同士が共同して設立する特殊法人のことを言います。
法人とは言っても、株式会社などではなく、どちらかというと合同会社に性質が近いです。
多数かつ規模の大きなクライアントを扱う社労士法人も
組織として社労士業を運営するため、個人の社労士事務所よりも母体が大きく、個人の社労士事務所では対応が難しい、大規模なクライアントを顧問先に抱えることができるキャパシティーがあります。
顧問報酬等の売り上げ規模も大きいことから、給与などの待遇は個人の社労士事務所と比較して手厚い傾向にあります。
法人であることから、社会保険の強制適用事業所となることも特徴のひとつです。
また、業務が分業化されている事務所が多く、組織として業務に臨むため、望むポジションに就くことができれば、得意な分野に特化して会社に貢献することも可能です。
社労士法人が向いているのはこんな人
組織化されており、言い換えれば会社然としている職場が多い為、独立などは視野に入れずに、安定して勤め続けたい人には、社労士法人は適していると言えるでしょう。
平成28年の社会保険労務士法の改正で変わったこと
従来までは、社労士法人は、2名以上の社労士が集まり、法人化しなければ設立することができませんでしたが、平成28年の改正により、1名でも社労士法人を設立することができるようになりました。
この改正により、以前と比べてハードルが高かった社労士法人設立が容易となり、その数が増えることとなりました。
まとめ
ハングリー精神を維持して独立開業を目指す野心家であれば、多少待遇が低くても、事務所運営に不可欠なノウハウを余すことなく身に付けることができる、個人の社労士事務所が、将来的にも適していることでしょう。
半面、分業化されたシステムの中で、ある業務に特化してキャリアアップを図って、長く勤務したい方には社労士法人が向いているでしょう。
ただし、先述したとおり、この傾向に当てはまらない事務所もまた少なからず存在しますので、まずは、ご自分の目で、本当にこの職場が自分にとってベストな職場が見極める必要があります。