社労士事務所の年収はどれくらい?社労士が女性に向いている理由も解説

2021年3月3日

2章.社労士事務所の待遇2-1.社労士事務所の年収・給与

この記事でわかること

  • 働き方別の社労士の年収相場がわかる
  • 社労士業界で女性が重宝されている理由がわかる
  • 年収アップのために社労士がすべきことがわかる

数ある資格の中でも、難関資格として知られる社労士ですが、社労士として働く人たちの年収は如何ほどのものなのでしょうか?
活躍している女性も多いと言われる社労士業界ですが、その実態はどうなっているのか解説していきましょう。

社労士事務所の年収はどれくらい?社労士が女性に向いている理由も解説

社労士事務所の年収相場

苦労して難関の社労士資格を取ったのだから、独立開業を視野に入れるという有資格者は多いですが、いきなり独立開業に踏み切る方は少数派で、まずは企業の人事労務部門や、社労士事務所に勤めて経験を積む方が多いのが実情です。
また、独立せずとも、その資格を活かして企業内でその手腕を振るう勤務社労士も数多く存在します。
開業するもよし、企業勤めでもよしといった働き方が選べる人気資格の社労士ですが、実際のところの年収相場はどうなっているのでしょうか?

そもそも日本の会社員の平均年収は?

社労士の年収相場を解説する前に、基準となる数字を挙げておきましょう。
国税庁が令和元年に発表した、平成30年の統計によると、日本の会社員の平均給与年収は、男性は545万、女性が293万、男女合わせた平均で440万ということになります。
この数字をベースに、社労士の年収相場について解説していきましょう。

参考:国税庁 平成30年民間給与実態統計調査

勤務社労士は、女性が高年収

令和元年の「賃金構造基本統計調査」にて公表されている給与収入を得ている社労士の年収は、男性は513.7万、女性は433.7万となります。
男女合わせての合計は473.7万となり、男性であれば意外と平均付近の年収であることが分かります。
注目すべきは、女性社労士の年収は、平均よりも48%高く、高年収を目指す女性にとって社労士という職域は、かなり有効な選択肢であることがうかがえます。

参考:政府統計の総合窓口 令和元年賃金構造基本統計調査 社会保険労務士

開業社労士は、ハイアンドローが混在

開業社労士の年収データを示す公式の統計は存在しません。
そもそも開業しても、顧問先を開拓できず、年収100~200万程度の規模で運営している社労士事務所もあれば、売り上げにして億単位の売上をたたき出す資格者も存在するほど、年収の開きは大きいです
また、個人の営業力や事務所の運営方針によって、その収入は千差万別です。

仮に顧問先が50社あり、各社とも月々の顧問報酬が2万であれば、単純計算で月収100万、年収にして1200万です。
また、月々の顧問報酬の他にも助成金の成果報酬や、シーズン的なスポット業務による別途報酬なども追加されるため、実際の収入は更に高いものとなります。

特筆すべきは、社労士業務は仕入れなどが不要であり、事務所運営にかかるコストで主要なものは人件費程度であり、利益率の高い業種であるということです。
つまり、効率よく運営して人件費を抑えれば、先ほどの売上の大半が利益として自らのポケットに入るということになります。
反面、そこまでの運営ができる有資格者はそれほど多くはない為、低収入の開業社労士が多いというのが実情です。

社労士の主な仕事内容

年収は当然のことながら、社労士の仕事内容も気になる方が多いので、この項目で解説していきましょう。

企業自らが責任をもって行うものとされている主な労務管理には、以下のようなものがあります。

  • 社員の入退社等に伴う社会保険手続き
  • 雇用保険関連の手続き
  • 社員の勤怠管理
  • 給与計算
  • 賃金台帳などの帳簿類の作成管理

しかし、こういった業務は複雑で、各種法令の改正も頻繁にあるため、制度を熟知していないと正しくオペレーションすることは困難です。

専門知識を持つ人材を雇える大手企業はともかく、経営資源の乏しい中小零細企業では労務管理業務を正しく行うことは厳しい為、こういった業務について手続きの代行やアドバイスを行う専門家が社労士です。

社労士が女性に向いている理由

先述の通り、女性社労士の年収は、日本の女性会社員の平均と比べてかなり高いものとなっており、社労士業界は女性が活躍しやすいフィールドであることがうかがえます。
実際、社労士の業務においては、女性が重宝される場面が多々見受けられます。
ここでは、女性が社労士に向いている理由に解説していきましょう。

きめ細かい気配り

社労士は、細かい気配りが重要になってくることが多い職種です。
社労士業務の一つに、顧問先の従業員の社会保険の手続きや給与計算があります。
軽微なミスであっても、「給与の計算が違っていて、従業員の不信を買ってしまった」など、地道に積み上げてきた信頼が一瞬で吹き飛ぶ場合があります。

こういったミスを防ぐには、「チェックを入念に行う」「顧客とのコミュニケーション、帳簿類から従業員の些細な変化を察する」といった、細かい気配りが必要となってきます。
「女性だから全員気配りができる」「男性は気配りができない」と画一的に判断することは、ジェンダーレスなこの時代にそぐわない考え方です。
しかし社会で置かれる環境からの傾向として、女性の方が男性よりも細かい気配りを身に着けざるを得ない場面が多く、結果的に社労士業務においてアドバンテージを握ることに繋がっています。

顧客窓口も女性であることが多い

人事労務部門のアウトソーシング先である社労士事務所ですが、顧問客の窓口は総務部門をもつ企業であれば、多くの場合、窓口は総務部門のスタッフとなります。

総務部門のスタッフの大半が女性で占められている企業は多く、必然的に、社労士事務所は顧問先の女性スタッフを通じて、業務を進めていくこととなります。
同性同士だからこその、機微を読み取った「阿吽の呼吸」でのやり取りや、適切な距離感を保つ判断など、男性では感覚でつかめない繊細なコミュニケーションを展開することができるのも、女性ならではの強みと言えます。

キャリアスタイルを描きやすい

結婚や、出産を機に第一線を退かれる女性が多いですが、社労士はそういった人生のイベントに影響されることなく働くことができる職業であると言えます。

社労士業務は、昔であれば役所に赴く場面が多いものでしたが、ペーパーレス化が進み、今ではパソコンとプリンター、インターネット環境があれば自宅でも、特に支障なく業務を行うことができます。
他の士業と比較しても、窓口業務というものが少ないということも、自宅開業のハードルを下げるポイントと言えますし、テレワークにも馴染みやすい職種でもあります。

また、業務の責任は重いものがありますが、事務作業が主体であり、肉体に掛かる負担はそれほど重くありません。
このため、結婚や出産後であっても、実力をもった女性社労士であれば、自力で収入源を作ることも難しくはありません。

社労士事務所に所属していたとしても、結婚や出産など女性特有の環境の変化に伴う時短やシフトの変更に関しても、割と寛容な社労士事務所が多いことも特徴です。

社労士の今後の求人動向

女性が比較的活躍する場面が多い社労士業界ですが、実際のところ、社労士の求人内容はどのようになっているのでしょうか?
現在のトレンドも踏まえて、働く場所に分けて解説していきましょう。

一般企業の総務部

企業の総務部門は、社労士の専門分野である人事労務管理業務を行う部署であり、資格を活かせる職場であると言えるでしょう。

求人数も、社労士事務所と比較しても多いですが、総務部門は人事労務管理業務以外にも幅広い業務を行う部署であり、事務用品の補充や社内資料の整理、来客対応等、社労士とは関係のない業務も多々こなすことになります。
このため、社労士としてのキャリアアップを見込んでいる方は、やや物足りない、又は的外れな印象を抱く場面もあるかもしれません。

社労士資格は「あれば尚良」としている程度で必須ではなく、収入面においても年収で300~400万程度の求人が多数を占めるため、社労士として活躍したい方は物足りないものと感じる方も多いことでしょう。

一方で、勤務社労士としての人材を募集している求人の場合、経営母体が大きい企業であることが多く、専門職であるため、収入は先述したような400万台の年収という求人も少なくありません。
しかし、一般企業の勤務社労士の求人自体はかなり少数であり、専門知識やスキルを持つ方々と選考で争うことになるため、競争率はかなり高いものとなります。

社労士事務所の求人

社労士事務所の求人は、一般企業の総務部と比べて、どうしても少数であることが多いのが現状です。

また、小規模で経営している社労士事務所が大半の為、収入は、資格手当が毎月1~2万程度支給されるものの、一般企業の人事総務部よりも若干高い程度に留まることが多いです。

一方、運営規模の大きな社労士法人などの事務所では、有資格者であれば年収400万台で人材を募集している案件も、数は多くありませんが存在します。
また、社労士事務所は一般企業の総務部と比べて、当然ながら社労士業務の比率が高い為、社労士としてのキャリアアップに重点を置くのであれば、有力な選択肢となります。

年収アップを目指す社労士がしておきたいこと

働く場所によっても、年収が様々な社労士業界ですが、どのような環境で働くにしても、やはり年収アップは目指したいものです。
この項目では、そんな年収アップを望む社労士がしておくべき事柄について解説していきましょう。

専門領域と得意分野を高める

昨今、「フルオーダーメイドの就業規則ならおまかせ」「障害年金の申請なら当事務所へ」といった形で、得意分野を前面に出して、他の事務所との差別化を図る社労士が増えています。
社労士の数は世間のイメージよりも多いため、こういった差別化がきちんとできていないと、「なぜあなたにお願いするのか?」という視点が曖昧になるので、受注率に影響を及ぼすことに繋がりかねません。
「あなただからお願いしたい」という差別化につながる、特化した何かを見つけて磨いておくことは収入アップにも直結します。

営業力がキーポイント

社労士として収入を伸ばすのであれば、開業社労士として顧問先を開拓するのが最も近道と言えます。
先述の通り、パソコンとプリンター、インターネットの環境さえあれば、社労士業務をすることは可能です。
開業当初で経営が軌道に乗るまでは、職員を雇わず、自分ひとりで運営することでコストはかなり抑えることが可能です。
イニシャル、ランニング双方でのコストを考えても、開業のハードルが低い為、顧客開拓に必要な営業力を伸ばせば、収入の上限は、勤務社労士よりも高いものとなります。

社労士事務所所属の勤務社労士であっても、顧客開拓能力が高ければ、数字で事務所への貢献度を示すことができ、待遇アップの強力な材料となるはずです。

まとめ

今回は、年収という切り口で、社労士という職業の可能性を解説しました。
今後も、社労士はその需要を伸ばしていく職業と言えますので、今回の内容を参考に、ご自分にとって最適なキャリアアップの道を模索してみましょう。