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最終更新日:2024/3/12

亡くなる3年以上前の生前贈与に相続税はかかる?税制改正内容も紹介

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 生前贈与と贈与税、相続税の仕組みについて理解できる
  • 相続税の課税対象になる生前贈与は何年前まで遡るのかがわかる
  • 暦年贈与の2023年度税制改正内容がわかる

誰かが亡くなると、相続が発生します。

相続した財産が多額な場合、相続税が発生することはご存じの方も多いでしょう。

ただ、生前贈与をした場合も相続税の課税対象財産とみなされる可能性があることはご存じない方も多いのではないでしょうか。

今回は、生前贈与が相続税の課税対象になる場合についてと、その前提知識としての贈与税、相続税の一般的な仕組みについて説明します。

また、生前贈与された財産は相続発生の何年前まで遡って相続税の課税対象になるのか、さらに、来年から改正される相続税関係の情報について説明します。

亡くなる3年以上前の生前贈与なら相続税がかからない

現行税制では、原則として被相続人が亡くなる日の3年前より前に行った生前贈与については、相続税の課税対象にはなりません。

逆に、亡くなる日の前3年以内にした生前贈与については、原則として相続税の課税対象財産とみなされます。

これを暦年課税制度の生前贈与加算といいます(以下、生前贈与加算といいます)。

それでは、これから生前贈与加算の仕組みについてポイントとなる点をご説明します。

生前贈与加算の対象となる財産について

亡くなる日の前3年以内にした生前贈与が全て生前贈与加算の対象になるわけではありません。

ここでは、どういう財産が生前贈与加算の対象となるのかについてお話しします。

贈与税の暦年課税制度について

まず、前提として、贈与税の仕組みについてお話しします。

誰かから誰かに現金、時計や服、土地や建物など何かを贈与した場合、贈与税の課税対象になる可能性があります。

一般的な贈与に対する贈与税の課税制度は、暦年課税制度といい、1月1日から12月31日までの1年間でもらった財産の総額が110万円以下の場合は、基礎控除の範囲内とみなされ、贈与税は課税されません(暦年課税制度の対象になる一般的な贈与のことを暦年贈与といいます )。

総額が110万円を超える場合は、超えた部分に対してその金額に応じて贈与税が課税されます

亡くなる日の前3年以内にした暦年贈与は相続税の対象になる

次に、相続税の課税対象になるとみなされる場合について見ていきましょう。

例外はありますが、贈与者が贈与をした日から3年以内に亡くなってしまった場合、その生前贈与はなかったものとして、相続財産として加算され、相続税の課税対象となります

なお、この時に加算される生前贈与財産の価格は、相続が発生した時の価格を基準とするのではなく、贈与した時の価格を基準として加算されます。

ちなみに、この仕組みは2023年度の税制改正に伴い、3年以内とされていたルールが7年以内となりました。

これについては後ほど説明いたします。

基礎控除内の贈与についても生前贈与加算の対象になる

上述のとおり、1年間でもらった財産の総額が110万円以下の場合は、基礎控除の範囲内の贈与として扱われ贈与税は課税されません。

ただ、生前贈与加算の要件を満たした場合は、基礎控除を除いた残額が生前贈与加算の対象となるわけではなく、贈与をした全額が生前贈与加算の対象になります。

すでに納付した贈与税額の相続税額からの控除について

上述のとおり、1年間でもらった財産の総額が110万円を超える場合は、贈与税を納付する義務があります。

生前贈与をした際に贈与税を納付していたにも関わらず、その対象金額が生前贈与加算の対象になった場合、その対象金額について改めて相続税を支払うことになると二重課税になります。

この時に支払った贈与税額は、生前贈与加算をした上で算定された相続税額から控除することが可能です。

2023年度税制改正で生前贈与加算が3年から7年に延長される

上記のとおり、現行の税制では贈与者が亡くなる日の前3年以内にした生前贈与については、生前贈与はなかったものとみなされ、相続税の課税対象財産として扱われます。

しかし、2023年度の税制改正により、2024年1月1日以降の贈与により取得する財産については、『亡くなる日の前3年以内』とされていた要件は『亡くなる日の前7年以内』に延長されるのです。

ただし、税制改正後も経過措置があり、いきなり『亡くなる日の前7年以内』ルールが一律に適用されるわけではなく、一定の経過措置があります。

また、亡くなる日の前3年~7年にした贈与で加算される財産については、その財産の価格の合計額全額が相続税の課税対象として加算されるわけではなく、その財産の価格の合計額全額から100万円を控除した残額が相続税の課税対象として加算されます。

生前贈与加算の対象となる人

ここまで、いつ行った生前贈与分の財産が生前贈与加算の対象かについてお話しましたが、次に誰に対して行った生前贈与が生前贈与加算の対象になるかについてお話しします。

生前贈与加算の対象となる人について

ここまで、生前贈与加算の対象となる贈与の期間について説明してきましたが、その期間内の贈与であればその全てが生前贈与加算の対象となるわけではありません。

生前贈与加算の対象となるのは、受贈者が下記の要件を満たす場合になります。

  • 相続や遺贈を原因として財産を承継した人
  • 生命保険金や死亡退職金など(みなし相続財産といいます)の受取人
  • 相続時精算課税制度を適用して財産を承継した人

では、詳しく見ていきましょう。

相続や遺贈を原因として財産を承継した人

生前贈与加算の対象となる人は、法定相続人かどうかで判断するのではなく、現実に相続や遺贈を原因として財産を承継したかどうかを基準として判断されます。

そのため、法定相続人でも相続放棄をした場合など財産を承継していない場合は、生前贈与加算の対象にはなりません。

また逆に法定相続人ではなくとも、遺贈によって財産を承継した場合などは生前贈与加算の対象となります。

このように、上記要件を満たす人が、贈与者が亡くなる日の前3年以内に生前贈与を受けた場合は、生前贈与加算の対象となります。

みなし相続財産の受取人

遺産分割(法定相続人全員で遺産の分け方について話し合って財産を承継する人を決定する手続き)や、遺贈を原因として財産を承継していない場合でも、みなし相続財産の受取人となっている人は生前贈与加算の対象となります。

相続時精算課税制度を適用して財産を承継した人

相続時精算課税制度とは、本来であれば基礎控除額(110万円)を超える贈与については贈与税の課税対象になるところを、下記の条件を満たす場合に税務署に申告をすることで優遇措置が適用される制度です。

これにより、累計で2,500万円までは贈与税の課税対象とせず相続財産の前渡しとして扱われ、相続が発生した際に相続税の課税対象として加算して相続税を算定されるようになります。

  • 贈与者は60歳以上の父母や祖父母
  • 受贈者(贈与を受ける人)は18歳以上の子や孫

この制度を適用して財産を承継した人については、贈与の時期や受贈者が相続時に財産を承継していなかろうと関係なく、必ず生前贈与加算の対象となります。

また、現行税制の下では、相続時精算課税制度を一度適用すると上述の暦年課税制度を適用することはできなくなるので、極端な例でいえば1円でも贈与を受けた場合は、贈与税の課税対象になっていました。

しかし、2023年度の税制改正により、2024年1月1日以降の贈与については、相続時精算課税制度独自の基礎控除として年間110万円が控除される制度が創設されました。

これにより、2024年1月1日以降は、年間110万円の基礎控除部分については、贈与税についても相続税についても課税対象から外れることになったのです。

生前贈与加算の対象とならない人について

上記の要件を満たす受贈者に対する贈与については生前贈与加算の対象となりますが、税法上の控除・特例を利用した生前贈与については生前贈与加算の対象となりません

詳細については次の項目で説明します。

控除・特例を利用すれば生前贈与加算の対象にならない

上記のとおり、税法上の控除・特例を利用した生前贈与については、生前贈与加算の対象となりません。

具体的には、生前贈与加算の対象とならない人としては、下記の人が挙げられます。

  • 贈与税の配偶者控除を適用して贈与を受けた人
  • 結婚や子育て資金のための一括贈与を受けた人
  • 教育資金の一括贈与を受けた人
  • 住宅取得等資金の贈与を受けた人

では、具体的にどういった人がこの特例や控除を受けられるのか、見ていきましょう。

贈与税の配偶者控除を適用して贈与を受けた人

下記の要件を満たすと、最大で2,000万円の贈与が非課税となります。

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦間でする贈与であること
  • 居住用不動産や居住用不動産を取得するための資金を贈与すること

結婚や子育て資金のための一括贈与を受けた人

下記の要件を満たすと、最大で1,000万円の贈与が非課税となります。

  • 父母や祖父母などの直系尊属からの贈与であること
  • 18歳以上50歳未満の子や孫に対する贈与であること
  • 金融機関等との一定の契約に基づくこと

教育資金の一括贈与を受けた人

下記の要件を満たすと、最大で1,500万円の贈与が非課税となります。

  • 父母や祖父母などの直系尊属からの贈与であること
  • 30歳未満の子や孫に対する贈与であること
  • 金融機関等との一定の契約に基づくこと

住宅取得等資金の贈与を受けた人

下記の要件を満たすと、最大で1,000万円の贈与が非課税となります。

  • 父母や祖父母などの直系尊属からの贈与であること
  • 省エネや耐震基準などを満たす居住用不動産を取得するための贈与であること

2023年度税制改正による期間の終了、延長

上記で説明した税法上の控除・特例ですが、2023年度税制改正により、下記のとおり期間が終了する制度と、延長する制度があります

結婚や子育て資金のための一括贈与を受けた人 2023年3月末まで→2年間の延長が決まり、2025年3月末まで
教育資金の一括贈与を受けた人 2023年3月末まで→3年間の延長が決まり、2026年3月末まで
住宅取得等資金の贈与を受けた人 期間の延長はなく、2023年12月末までで終了

まとめ

今回は、生前贈与に相続税がかかるのか、また税制改正内容について説明しました。

現行税制の下では、贈与者が亡くなる日の前3年以内にした生前贈与については、原則として生前贈与とはみなされず、相続税の課税対象となります。

しかし、2024年1月1日以降は、2023年度税制改正により贈与者が亡くなる日の前7年以内にした生前贈与について相続税の課税対象となります。

ただ、すべての人に対する生前贈与が課税対象になるわけではなく、対象になる人についても説明しました。

今回は、概要として説明しましたが、実際に生前贈与加算の対象になるかについては事案によって異なりますので、専門家に一度ご相談いただくことをお勧めします。

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メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。 前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

弁護士 中野 和馬

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