この記事でわかること
- 贈与がばれない可能性があるのかわかる
- 贈与がばれてしまうケースがわかる
- 贈与税を申告しなかった場合のリスクがわかる
- 贈与税を抑える方法がわかる
目次
贈与がばれない可能性はある?
お金や土地、建物、宝石などの財産をもらうだけなら、税金はかからないと思うかもしれません。
しかし、タダでもらう行為は「贈与」にあたり、「贈与税」がかかります。
贈与を受けた場合は申告しなければなりません。
そして、贈与税の無申告がばれるシチュエーションは多々あり、たとえ贈与を受けたことを隠してもばれる可能性は高いといえます。
現金ならばれない?
現金だと贈与がばれにくいという話を聞いたことがある人もいるでしょう。
しかし、現金であっても、贈与がばれることはあります。
これは、税務調査は贈与を受けてから何年も経過したのちに行われることがあるためです。
「なぜ現金をもらったのにばれたのだろう?」という疑問に思うかもしれませんが、相続が発生した場合、被相続人の財産の流れについて直近10年ほどさかのぼって調査されるため、ばれる可能性があるのです。
贈与税の無申告がばれるとき
贈与が行われた疑いがある場合、税務署は情報収集を行い、調査をします。
調査により贈与がばれるケースについて、見てみましょう。
税務調査によるお尋ね
現金での贈与は税務署に発覚しにくいのは確かです。
もらった方も、タンスにしまいこんでしまえば、贈与を受けた現金の流れを追及されることはないと思うかもしれません。
しかし、贈与税の税務調査には注意が必要です。
税務調査には次の3種類があります。
- 実地調査
- 実地調査以外の調査
- 行政指導
この調査の前提として、税務署から「お尋ね文書」と呼ばれるアンケートが送られてきます。
税務署の「お尋ね」への回答は任意ですが、回答せずにそのままにしておくと、税務調査が行われる可能性があるので断るのは難しいでしょう。
もし、税務署から「お尋ね文書」が送られてきたら回答期限内に回答することをおすすめします。
この「お尋ね文書」への回答によって、タンス預金であっても贈与がばれてしまうかもしれません。
贈与がばれて贈与税がかかるケースであれば、贈与税の申告漏れになってしまいます。
国税庁の実地調査
贈与税について、「税務調査」なんて本当にあるのかと疑問をもつ人もいるかもしれません。
国税庁が贈与税に対する調査状況を発表しています。
なお、この実地調査の前には「お尋ね文書」が送られているでしょう。
【平成30年度の贈与税に対する調査状況】
- ・贈与税事案に対する実地調査 50件(前年対比49.5%)
- ・上記のうち申告漏れ等の件数 49件(同53.3%)、追徴税額の総額は0.3億円(同21.7%)
不動産の購入
たとえば、マイホーム購入資金として数千万円を贈与された場合を考えてみましょう。
これは、現金でもらっても、銀行振り込みでも同様です。
数千万円を支払う資力がない方が、高額のマイホームをローンも組まずに即金で購入したとします。
税務署は、不動産の所有権移転の情報を法務局から得ているので、その情報をもとに資金の流れに疑問がある場合、不動産の取得者にお尋ね文書を送ります。
お尋ね文書では、不動産購入資金の調達方法を詳しく聞かれます。
お尋ね文書の回答項目の例
- ・資金を出した預貯金の名義(自分名義なのか、家族名義なのか)
- ・贈与による資金か、住宅ローンによる資金か
この回答をもとに調査されるので、贈与を受けたお金を不動産購入などに使えば、ばれる可能性が高くなります。
相続税の調査は、贈与税の調査も兼ねる
親が亡くなり相続が発生すると、贈与がばれることがあります。
相続税を申告すると、税務署は被相続人や相続人の財産を調査します。
その過程で、生前に被相続人から相続人の銀行口座に振り込みがあれば、贈与を疑われるでしょう。
なお、先述の通り、相続税調査の一環として、被相続人の預金口座を数年間さかのぼって調査されます。
「親が亡くなる5年前の贈与だったから大丈夫だろう」と侮らないようにしましょう。
申告をしなかった場合のリスク・ペナルティ
贈与税の無申告には、どのようなリスクがあるのでしょうか。
贈与税の申告期限
贈与税の申告・納税は、贈与を受けた人が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間にしなければなりません。
なお、贈与税は延納の制度もあるので、延納を希望する方は管轄税務署に確認しましょう。
贈与税を申告しなかった場合のリスク
贈与税を申告しなかった場合、贈与税に加え、無申告加算税など下記の税金が課せられるリスクがあります。
贈与税を申告しなかった場合のリスク
- ・無申告加算税(申告期限までに必要な確定申告を行わなかった場合)
- ・過少申告加算税(贈与税の額を過少に申告した場合)
- ・重加算税(故意に贈与税を申告しなかった場合など)
- ・延滞税(贈与税の納付が遅れた場合)
- ・利子税(税の延納の許可があった場合)
贈与税申告の時効
贈与税の時効は、原則として法定申告期限の翌日から計算して6年とされています。
不正行為により贈与税の負担を免れていた場合は、時効の期間が7年間に延長されます。
一方で、名義預金には時効がないため注意が必要です。
名義預金とは、お金の所有者と口座の名義人が異なる預金のことです。
子供の名義となっている預金口座に父親がお金を入れた場合、名義は子供であってもその預金の所有者は父親となります。
名義預金にお金を入れた後も、贈与の時効が成立することはないので、父親が亡くなった際に相続税の対象になることがあります。
生前贈与には非課税の特例を活用しましょう
親や夫(妻)から生前贈与を受ける場合、非課税の特例をつかえば贈与税が課税されないこともあるので、基礎控除や特例を上手に使いましょう。
毎年110万円以下の基礎控除(暦年控除)
贈与税には暦年控除とも呼ばれる基礎控除があり、次の場合は贈与税がかからず、贈与税の申告も不要です。
- ・1年間にもらった財産の合計額が110万円以下
- ・1人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額
たとえば、1人の人が1年間に贈与を受けた額が120万円であれば、120万円から基礎控除額110万円を引いた10万円に贈与税がかかります。
なお、贈与税の計算式は以下の通りです。
贈与税の計算式
贈与財産の合計額-基礎控除額(110万円)×税率-控除額=贈与税額
婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与の特例
婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与なら、下記の条件を満たす場合、2,000万円までの配偶者控除の特例を利用することができます。
配偶者控除の特例は、相続税計算の際に行われる生前贈与加算の対象外でもあるので、相続税対策として有効です。
贈与の内容・時期 | ・居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与 (居住用家屋のみ、居住用家屋の敷地のみの贈与でも可) ・夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与 |
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回数 | ・配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度 |
なお、他にも細かな適用要件があります。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に住んでいて、その後も引き続き住む見込みがあることなどが要件です。
贈与税の配偶者控除の特例を利用する場合、税務署や税理士に確認してください。
生命保険金で相続対策
生命保険金にも贈与税がかかる可能性があります。
ただし、一定の生命保険契約の場合、生命保険金をもらっても贈与税はかかりません。
贈与税の対象にはならず相続税の対象になる生命保険金
- 夫(被保険者)が死亡
- 夫が保険料を負担
- 相続人である配偶者が生命保険金の受取人
生命保険金を相続した場合、生命保険金だけに適用される非課税枠を利用すれば、相続税対策になります。
相続税の生命保険金非課税枠は、500万円×法定相続人の数です。
離婚による財産分与
離婚前の夫婦間贈与は贈与税がかかりますが、離婚による財産分与は贈与に当たりません。
ただし、夫婦間で過度な額を財産分与すると、贈与とみなされる可能性もあるので注意しましょう。
多額の贈与税がかかってしまうケースに注意
贈与税の非課税枠や特例を使っても、控除しきれない贈与額が発生するケースがあります。
贈与ではないと勘違いして親子、夫婦間で行ってしまいがちな行為を確認しておきましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済など
住宅ローンの繰り上げ返済を、親や夫(妻)の資金で行うことは、贈与にあたり贈与税がかかってしまいます。
マイホームを親子または夫婦で資金を出し合って購入した場合、マイホームの持分は出した資金の割合に従います。
事例
たとえば、5,000万円のマイホームをAが2,500万円、Bが2,500万円出し合って買ったら、マイホームに対して親と子が有する権利は、AB各自2分の1ずつです。
贈与に当たらないようにするためには、贈与額に見合う持分を親や夫(妻)に移転します。
しかし、夫婦が亡くなる順番によって、余計な相続税が発生する原因にもなるので注意しましょう。
また、AとBが夫婦なら、上述の配偶者控除の特例の適用を考えてもよいですが、配偶者控除の婚姻期間が20年以上などの細かな要件があるので、必ずしも適用できるわけではありません。
その他、マイホームに関しては、子が所有する家を親の資金で大幅にリフォームし、二世帯住宅とするケースも注意しなければなりません。
親が出す資金は贈与とみなされます。
預貯金の移動や金銭の貸し借り
親子間、夫婦間の預貯金の移動も贈与に当たるケースがあります。
とくに、同居していない親子間の預貯金の移動は注意が必要です。
同居している夫婦間であれば、通常の生活費や教育費の支払い用に、夫婦間で預貯金を移動しても贈与にあたりません。
しかし、日常生活に必要な額を超える預貯金の移動は贈与となります。
また、親子間や夫婦間の金銭の貸し借りは、贈与税がかかる場合があります。
親子間や夫婦間であっても、利息や返済期限などについて、きちんと金銭消費貸借契約書を取り交わさなければ、贈与とみなされてしまうかもしれません。
また、実際に返済することも大切です。
まとめ
贈与税の基本的知識、贈与税を申告しなかった場合のリスク、贈与税を安く抑える方法について解説してきました。
とくに注意したいのは、「贈与に当たらないケース」と思い込んでしまわないということです。
一方、国が認めた正当な控除や特例を利用すると、暦年控除や夫婦間贈与の特例などの特例を適用できる範囲に収めれば、贈与税対策になります。
生前贈与がよいのか、相続まで待つべきか綿密に財産処分を計算するのは、税金についての詳しい知識がなければ難しいでしょう。
贈与や相続対策でお悩みの方は、税理士に相談してみることをおすすめします。