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最終更新日:2022/12/16

知っておきたい相続税の税率・計算方法・非課税措置

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

この記事でわかること

  • 相続税の税率を知ることができる
  • 相続税の計算が自分でできるようになる
  • 相続税を節税できる非課税措置を知ることができる

身内の方が亡くなって遺産を相続するとき、相続税がどの程度かかるのかは気になるところだと思います。

遺産を相続しても、すべてのケースで相続税がかかるわけではありません。

一方で、遺産の内容によっては高額の相続税が発生し、支払いに困るケースも考えられるでしょう。

しかし、相続税が発生しそうなケースでも、非課税措置を適用するなどして適切に節税すれば、納税額を抑えることができる場合もあります

そこで本稿では、相続税の税率と計算方法をご説明し、非課税措置や節税方法についてもご紹介していきます。

相続税とは

相続税とは、亡くなった方の財産を受け継いだときにかかる税金のことです。

相続や遺言などによって亡くなった方の財産を取得した人に対して、取得した財産に応じて課税されます。

ここでは、相続税に関する基本的なことについてみていきましょう。

相続税がかかる可能性があるケース

まずは、どのような場合に相続税がかかる可能性があるのかについてご説明します。

相続税がかかる可能性があるのは、次の4つの場合です。

相続が発生したとき

人が亡くなると、基本的には生前に所有していた財産が相続人に受け継がれます。

亡くなった方が生前に遺言や贈与契約をしておらず、財産を誰に渡すかを決めていない場合は、亡くなった方と一定の身分関係にある方が財産を取得することになります。

このようにして財産が引き継がれることを「相続」といいます。

亡くなった方のことを「被相続人」といい、財産を取得する身分関係にある人のことを「相続人」といいます。

この場合は、相続人に対して相続税がかかることがあります。

遺贈が行われたとき

亡くなった方が生前に遺言によって特定の人に財産を譲り渡すことを指定していることもあります。

このように、遺言によって自分の財産を譲り渡すことを「遺贈」といいます。

遺贈によって財産を譲り受ける人のことを「受遺者」と呼びます。

遺贈は相続人に対して行われることもあれば、相続人以外の人に対して行われることもあります。

遺贈が行われたときは、受遺者に対して相続税がかかることがあります。

死因贈与が行われたとき

死因贈与とは、人が亡くなることを条件として、その人の財産を別の人に贈与することをいいます。

遺言によって贈与する場合が「遺贈」に当たり、生前に贈与契約を結ぶ場合が「死因贈与」に当たります。

死因贈与によって財産を譲り受ける人のことを「受贈者」と呼びます。

死因贈与が行われたときは、受贈者に対して相続税がかかることがあります。

亡くなる前の3年以内に生前贈与が行われたとき

被相続人が生前に行った贈与のことを「生前贈与」といいます。

生前贈与で財産を取得した人のことを「受贈者」と呼びます。

生前贈与に対しては基本的には相続税はかかりませんが、被相続人が亡くなる前の3年以内に行った生前贈与は相続税の対象となります

この場合、受贈者に対して相続税がかかることがあります。

相続税はいくらからかかるか

相続税は、以上の4つのケースで受け継がれる遺産の総額に税率をかけて計算されます。

しかし、すべてのケースで相続税がかかるわけではありません。

遺産の総額が一定の範囲内までは、相続税はかからないのです。

この基準となる金額のことを「基礎控除」といいます。

基礎控除の金額は、次の計算式によって求められます。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

遺産の総額がこの計算式で求めた金額を超えるときにのみ、相続税がかかります

例えば、相続人として妻と子ども2人の合計3人がいる場合、基礎控除額は4,800万円となります。

(計算式)
3,000万円+600万円×3人=4,800万円

この場合、遺産の総額が4,800万円以内であれば相続税はかかりません。

相続税の税率

相続税がかかる場合、いったどのくらいの税金を納めなければならないのかが気になることでしょう。

納税額がいくらになるかは、税率によって大きく異なってきますが、税率は遺産が多いほど高く設定されています。

相続税の税率は、以下のとおりです。

法定相続分による取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用:国税庁|相続税の税率

なお、上記の税率表は、平成27年1月1日以降に相続が開始した場合に適用されるものです。

平成26年12月31日以前に相続が開始した場合には、旧税率表が適用されます。

どちらの税率表も、法定相続分による取得金額が2億円までのケースでは税率も控除額も同じです。

ただ、2億円を超えるケースでは旧税率表の方が税率が低くなります。

相続税の計算方法

それでは、相続税はどのようにして計算すればよいのでしょうか。

相続税を計算するときは単純に遺産に税率をかけるのではなく、次のステップを踏みます。

  • (1)各人ごとに課税価格を計算する
  • (2)相続税の総額を計算する
  • (3)各人ごとに相続税額を計算する
  • (4)各人ごとに納税額を計算する

それぞれのステップごとに、計算方法をご説明します。

各人ごとに課税価格を計算する

課税価格とは、相続税の課税対象となる財産の価格のことです。

相続や遺言によって取得した財産の中には、相続税の課税対象とならないものもあります。

逆に、相続や遺言以外によって取得した財産の中にも、相続税の課税対象となるものがあります。

そこでまずは、相続税の課税対象となる財産の価格を、財産を取得した人ごとに計算します。

課税対象となる遺産には、以下のようなものがあります。

  • ・本来の相続財産
  • ・みなし相続財産
  • ・相続時精算課税が適用される財産
  • ・相続開始前3年以内の贈与財産

一方、課税対象とならない遺産には、以下のようなものがあります。

  • ・非課税財産
  • ・債務及び葬式費用

相続税の総額を計算する

各人ごとの課税価格を求めたら、いったん相続税の総額を計算します。

このとき、各人ごとの課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます

各人ごとの課税価格の合計額-基礎控除額=課税遺産総額

例えば、法定相続人として妻と子ども2人がいる場合で、各人ごとの課税価格の合計額が8,000万円の場合は、課税遺産総額は3,200万円となります。

(計算式)
8,000万円-基礎控除額4,800万円=3,200万円

この課税遺産総額に、先ほどご紹介した税率表を適用すると、相続税の総額は440万円となります。

(計算式)
3,200万円×税率20%-控除額200万円=440万円

各人ごとに相続税額を計算する

上記で計算した金額は、財産を取得した人の全員にかかる相続税の合計額です。

そこで次に、一人一人にかかる相続税額を計算します。

計算方法は、上記で計算した相続税の総額を、各人ごとの課税価格で割り振ります。

相続税の総額×各人ごとの課税価格/課税遺産総額=各人ごとの相続税額

遺言や生前贈与が行われていない相続の場合は、相続人ごとの法定相続分で割り振ることによっても計算できます

先ほどの例では、法定相続分は妻が1/2、子どもが1人あたり1/4です。

したがって、各人ごとの相続税額は次のようになります。

  • ・妻の相続税額:440万円×1/2=220万円
  • ・子ども1人あたりの相続税額:440万円×1/4=110万円

各人ごとに納税額を計算する

以上で各人ごとの相続税額が計算できましたが、実際に納税すべき金額は異なる場合があります。

なぜなら、さらに控除できる場合や、加算しなければならない場合があるからです。

控除できる項目としては、次のようなものがあります。

  • ・暦年課税分の贈与税額控除
  • ・配偶者の税額軽減
  • ・未成年者控除
  • ・障害者控除
  • ・相次相続控除
  • ・外国税額控除
  • ・相続時精算課税分の贈与税額相当分
  • ・医療法人持ち分税額控除額

一方、加算しなければならない項目としては、次のものがあります。

  • ・相続税額の2割加算

相続税の節税方法

相続税を節税するためには、まずは上記でご紹介した控除制度を適切に活用することが大切です。

これらの控除制度は、その適用によって相続税がかからなくなることもあるので、「非課税措置」と呼ばれることもあります。

ここでは、それぞれの非課税措置についてご説明したうえで、その他の節税方法もご紹介します。

非課税措置を活用する

まず、それぞれの非課税措置についてご説明します。

暦年課税分の贈与税額控除

被相続人が亡くなる前3年以内に財産が贈与された場合は、相続税の課税対象となります。

つまり、3年以内に贈与された財産は、相続財産に受け戻して相続税が計算されます。

ただ、贈与された際に贈与税が課税されていることもあります。

この場合に受け戻した贈与財産の全体に相続税を課税すると、二重課税が発生することがあります。

そのため、受け戻した贈与財産に課税された贈与税に相当する金額について、相続税額から控除することができます。

配偶者の相続税額の軽減

相続税にも、いわゆる配偶者控除があります。

被相続人の配偶者が遺産を取得する場合、取得価格1億6,000万円または法定相続分に相当する金額のどちらか多い方の金額まで、配偶者には相続税がかかりません。

未成年者控除

被相続人の法定相続人で、かつ未成年者が遺産を取得する場合は、その人が満20歳に達するまでの年数について、1年あたり10万円を相続税から控除することができます。

計算式にすると、次のようになります。

未成年者控除額 = 10万円×(20歳-対象者の相続開始時の年齢)

なお、1年未満の端数は切り上げて計算します。

例えば、相続開始時に14歳6ヶ月の法定相続人が遺産を取得する場合は、6年分に相当する60万円を相続税から控除できます。

障害者控除

被相続人の法定相続人で、かつ85歳未満の障害者が遺産を取得する場合は、その人が満85歳に達するまでの年数について、1年あたり10万円を相続税から控除することができます。

ただし、その人が特別障害者に該当する場合は1年あたり20万円を控除できます。

計算式にすると、次のようになります。

障害者控除額 = 10万円(または20万円)×(85歳-対象者の相続開始時の年齢)

なお、1年未満の端数は切り上げて計算します。

例えば、相続開始時に80歳6ヶ月の障害を有する法定相続人が遺産を取得する場合は、5年分に相当する50万円を相続税から高所できます。

相次相続控除

今回の相続開始前10年以内に、別の相続や遺言によって被相続人に相続税が課せられていた場合は、今回の相続にかかる相続税から一定の金額を控除することができます。

計算式は複雑ですが、以下のようになります。

相次相続控除額 = A×C/(B-A)×D/C×(10-E)/10

ただし、「A×C/(B-A)」が1を超えるときは1として計算します。

A~Eには、次の数値を当てはめます。

  • A:今回の被相続人が前の相続で取得した財産に課せられた相続税額
  • B:今回の被相続人が前の相続で取得した財産の価額
  • C:今回の相続で財産を取得した人の全員の取得価額の合計額
  • D:今回の相続で控除対象者が取得した財産の価額
  • E:前の相続開始時から今回の相続開始時までの期間(1年未満の期間は切り捨て)

外国税額控除

相続や遺言によって外国にある財産を取得したときは、その国の法令に基づいて課税される場合があります

この場合に日本において通常どおりに相続税を課税すると、二重課税が発生することがあります。

そのため、この場合は外国で課税された金額相当分を日本における相続税から控除できます。

相続時精算課税分の贈与税額相当分

生前贈与を受ける際に相続時精算課税を選択したときにも、一定の場合に贈与税が課税されることがあります

この場合も、二重課税を避けるために贈与税額相当分を相続税から控除することができます。

贈与税額を相続税から控除しきれない場合は、贈与税の残額が還付されます。

不動産を活用した相続税対策

一般的に不動産は、現金や預貯金よりも相続税を計算する際の評価額が低くなります

土地については時価の概ね20~30%、建物については時価の概ね30~70%が相続税評価額になるといわれています。

土地について小規模宅地等の特例が適用される場合は、さらに最大80%まで評価額が軽減されます。

1億円を現金や預貯金として相続すれば課税価格は1億円ですが、1億円で購入した不動産を相続すれば課税価格が数千万円程度に抑えられることがよくあります。

そのため、不動産を活用することは相続税対策として有効であり、人気がある節税方法でもあります。

養子縁組を活用した相続税対策

養子縁組を活用して相続税を節税することもできます。

相続税の基礎控除額は、法定相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増加します。

養子縁組をすることによって法定相続人の人数を増やすことができるので、相続税の非課税枠が広がることになります。

被相続人の生前に、子どもの配偶者や孫などと養子縁組をして相続税を節税する例がよくあります。

ただし、遠い親戚や第三者などと合理的な理由もなく養子縁組をすると、税務署から相続税の計算において養子縁組を否認される場合もあるので注意しましょう。

相続で節税するには贈与も活用しよう

相続が発生したときに「なるべく相続税を抑えたい」と思うかもしれません。

相続での節税方法はたくさんありますが、もっと節税したいなら生前贈与を活用しましょう。

下記では生前贈与時に利用できる節税方法を紹介します。

年間110万円の暦年控除

贈与で確実に利用できる節税方法は、年間110万円の暦年控除です。

年間110万円以下であれば、贈与したとしても贈与税がかかりません。

人数・年数の制限もないため、相続まで時間があったり、贈与する対象が多い場合は有効活用できます。

例えば3人の子供に年間110万円×10年で贈与した場合、合計3,300万円の贈与になります。

3300万円を一気に贈与してしまうと贈与税がかかりますが、暦年控除を使ってコツコツ贈与すれば、課税されません。

ただし毎年一定金額を贈与し続けると「定期贈与」とみなされる可能性もあります。

定期贈与とは、一定の金額を一定の期間で贈与し続けることです。

定期贈与だとみなされた場合は、贈与した合計金額に対して、贈与税がかかります。

対策としては、贈与のタイミングを毎年ずらしたり金額を変えるのがいいでしょう。

相続時精算課税の利用

相続時精算課税は、2,500万円まで贈与税が発生しない仕組みです。

例えば相続時精算課税を利用せずに、2,500万円を贈与すれば、465万円の贈与税がかかります。

ここで相続時精算課税を利用していれば、贈与税は1円もかかりません。

ただし相続時精算課税にはデメリットもあるため、利用には注意が必要です。

まず相続時精算課税を利用すると、暦年控除が使えなくなります。

暦年控除は金額こそ小さいですが、毎年確実に利用できる控除なので、相続時精算課税を利用前に「暦年控除がなくなっても大丈夫か?」と確認しておきましょう。

また相続時精算課税を使って贈与した資産は、相続時に相続財産としてカウントされます。

例えば2,500万円の不動産を相続時精算課税を利用して生前贈与して、10年後に相続が発生した場合は、2,500万円の不動産は相続財産として扱われて、相続税の課税されるかもしれません。

相続時精算課税は2,500万円の控除ではなく、あくまで贈与税を先送りにしているだけの仕組みです。

相続税で悩んだら弁護士に相談しよう

相続について悩んだら専門家である弁護士に相談するのがオススメです。

なぜなら相続の節税方法は数多くあって複雑なので、知識のない人が上手に節税するのは難しいからです。

プロである弁護士に依頼して、確実な節税を行う方が安全でしょう。

また相続では親族同士の話し合い・財産の分配など、もめてしまうかもしれません。

弁護士であれば交渉や話し合いの仲介もしてくれるため、節税・相続の交渉をまるごと任せられます。

まとめ

相続税は基礎控除額が大きいため、約9割の世帯で相続税は非課税となります。

相続税がかかりそうな場合は、まずは本稿をご参考にどのくらいの相続税がかかるのかを概算し、そのうえで必要に応じて節税対策を考えるようにしましょう。

節税対策にはさまざまな方法がありますが、むやみに手を出すとかえって損してしまうこともあります

まずは、非課税措置のうち、適用できるものを確実に適用するようにしましょう。

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