この記事でわかること
- 遺言信託の費用の相場
- 遺言信託のメリットとデメリット
- 遺言信託の解約方法やトラブル事例
遺言信託は、生前対策の一環として行われているサービスで、多くの広告が出ています。
しかし、「手数料が高いのでは?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
実際、信託銀行の遺言信託は、遺言書作成時の基本手数料や年間の保管料、さらに相続発生時の遺言執行報酬など、まとまった費用がかかります。
安心感の一方で、「本当に必要なのか」「他の方法と比べて損はないのか」と悩む声も少なくありません。
本記事では、遺言信託の手数料や費用の相場、具体的なデメリットやトラブル事例、解約時の注意点まで、わかりやすく解説します。
遺言信託を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
遺言信託の手数料は高い?
遺言信託の手数料は、一般的に「高い」と感じる方が多いのが実情です。
主な費用としては、遺言信託契約時の初期手数料、遺言書の保管料、そして相続発生時にかかる遺言執行報酬が挙げられます。
初期手数料は30万円以上が相場で、さらに年間の保管料が数千円から1万円程度かかる場合があります。
相続発生時には、遺産総額に応じて100万円から数百万円の執行報酬が発生することも珍しくありません。
参考までに、下記に主な費用の目安を表にまとめました。
費用は金融機関やプランによって異なるため、契約前に必ず詳細を確認しましょう。
費用項目 | 相場・目安 | 備考 |
---|---|---|
基本手数料 | 30万円以上 | 契約時に一括払い |
年間保管料 | 5,000円~1万円 | 金融機関によって異なる |
変更手数料 | 5万円~12万円 | 金融機関によって異なる |
遺言執行報酬 | 100万円以上 遺産の0.3%~3% |
遺産規模により変動 |
遺言信託のメリット
遺言信託には、費用がかかる反面、銀行という安心感があります。
また、窓口が多く、いつも気軽に相談に乗ってもらえる部分は利便性につながっています。
ここでは、遺言信託の具体的なメリットを解説します。
銀行に遺言書を預ける安心感
遺言信託を利用するメリットは、遺言書を信託銀行などの金融機関に安全に預けられることです。
自宅で保管すると、紛失や改ざん、火災や水害などのリスクがありますが、銀行に預けることで厳重に管理されるでしょう。
また、遺言書の内容や形式についても専門家のチェックを受けられるため、遺言書が無効になるリスクも低減します。
相続発生時には銀行が遺言執行者として手続きを代行してくれるため、手続きの煩雑さを大幅に軽減できるでしょう。
個人に依頼した場合の廃業や死亡のリスクがない
遺言執行を個人の専門家に依頼した場合、その専門家の廃業や死亡により、遺言の執行がスムーズに進まなくなるリスクがあります。
一方、信託銀行は組織としてサービスを提供しているため、担当者が変わっても業務が継続されます。
そのため、長期間にわたる安心感が得られ、相続発生時にも確実に遺言が執行される体制が整っています。
安定したサービスを受けられる点は、大きな魅力となるでしょう。
遺言信託のデメリット
遺言信託は安心感や利便性がある一方で、費用面や対応範囲に注意が必要です。
特に手数料や管理料などの費用が高額になりやすいにもかかわらずすべての相続ニーズに応えられるわけではありません。
生前対策を進める際は、こうしたデメリットも十分に理解した上で、他の選択肢と比較検討することが大切です。
手数料や管理料が高額
遺言信託の最大のデメリットは、手数料や管理料などで100万以上かかることも多く、費用が高額になる傾向があることです。
特に相続発生時には、遺産額によっては遺産の1~2%程度の遺言執行報酬が発生することも珍しくありません。
これらの費用は、弁護士や司法書士に依頼する場合と比べて割高になるケースが多く、遺産額が大きいほど負担も増します。
費用の詳細や条件は金融機関ごとに異なるため、必ず契約前に確認し、総額でどのくらいかかるのか把握しておくことが重要です。
法的争いや法的身分関係に対応できない
遺言信託は、財産の分配や管理に特化したサービスで、財産に関する遺言の執行だけに限られます。
たとえば、法的な争いが起きた場合、信託銀行が対応すると弁護士法違反となるため、銀行は関与できません。
身分関係の問題については、認知症による後見人制度の利用や相続人の廃除などに対応できません。
また、相続人同士でトラブルがある場合、信託銀行は遺言執行者への就任を辞退することがあります。
その場合、家庭裁判所で新たな執行者を選任し直さなくてはなりません。
さらに、遺留分を侵害する遺言については、信託銀行が作成や執行を拒否することもあります。
そのため、希望どおりの遺言内容にできない場合もあり得ます。
信託銀行が遺言執行者に指定されている場合、相続人全員が合意しても、遺言と異なる遺産分割を行うには、遺言執行者の同意が必要です。
このため、柔軟な対応が難しくなることがあるでしょう。
このように、複雑な相続や法的争いが予想される場合は、信託銀行では対応できないことが多々あります。
こうしたリスクを事前に避けたい場合は、弁護士への相談を検討しましょう。
遺言信託に関するよくある質問
遺言信託を検討する際、多くの方が「途中で解約できるのか」「トラブルが起きた場合はどうなるのか」といった疑問を持ちます。
実際に契約後の変更や解約、相続人間のトラブルなど、事前に知っておきたいポイントがいくつかあります。
ここでは、特に質問の多い2つのテーマについて詳しく解説します。
遺言信託を解約したい
遺言信託は、原則として遺言者が存命中であれば解約が可能です。
解約を希望する場合は、契約した信託銀行に連絡し、所定の手続きや必要書類、解約料などを確認しましょう。
多くの金融機関では、解約時に「中途解約金」や「精算費」といった名目で20万円から50万円の費用が発生することが一般的です。
また、既に支払った保管料や手数料は返金されない場合もあります。
相続開始後は、原則として相続人の意思だけで解約することはできません。
契約内容や金融機関によって条件が異なるため、事前に詳細を確認しておくことが大切です。
このように、遺言信託は費用が高額な上に解約手数料もかかり、トラブルがあった場合も複雑な手続きとなります。
そのため、遺言信託を契約する際は、様々な選択肢を考慮の上、慎重に行いましょう。
遺言信託のトラブル
遺言信託では、手数料や執行報酬が高額なことや、相続人間のトラブル、遺言内容への不満などが原因で問題が起こることがあります。
トラブルに対応できず、信託銀行が遺言執行者を辞退するケースも少なくありません。
信託銀行が遺言執行を辞退する主なケースには、以下のようなものが挙げられます。
- 相続人同士でトラブルや争いが起きた
- 遺言内容や財産状況が大きく変化した
- 遺産の内容が非常に複雑で執行が難しい
- 相続人の所在が不明、財産の管理や分配が難しい
- 遺留分を侵害している
- 被相続人や相続人が認知症になった
- 信託銀行の経営上の理由でサービス継続が困難になった
他のトラブルとしては、費用やサービス内容の説明不足から相続人が納得できず、後々トラブルに発展することもあり得ます。
また、遺言信託の解約しようとして高額な手数料が発生し、トラブルになることもあります。
これらのトラブルを最小限にするためには、契約前に十分な説明を受け、相続人とも情報を共有しておくことが重要となるでしょう。
まとめ
遺言信託は、手数料の仕組みや解約時の条件、相続発生後の手続きなどは、金融機関や契約内容によって大きく異なります。
手数料やサービス内容に疑問や不安を感じた場合、まずは信託銀行や専門家に相談することをおすすめします。
希望する最適な選択肢を見つけるためにも、早めに専門家に相談しましょう。
具体的な費用やリスクを知り、他の方法との比較ポイントを確認することで、納得できる生前対策が実現できるでしょう。