この記事でわかること
- 着手金の考え方
- 相続において弁護士に支払う着手金の相場
- 成功報酬との違い
相続手続きを弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかります。
その中でも着手金は、専門家に手続きを依頼する場面でよく目にするものです。
「いつ、どのタイミングで、誰が支払うのか?」
「どの程度の金額がかかるのか?」
実際に依頼を検討すると、こんな疑問や不安が出てくるでしょう。
弁護士費用には、着手金以外にも様々なものが含まれています。
今回は相続における弁護士費用について、着手金をはじめ費用の中身を詳しく解説していきます。
目次
相続における弁護士費用の着手金とは
相続における弁護士費用における着手金とは、弁護士と契約を結んだ後、実際に手続きに取りかかる前に支払う金銭のことです。
着手金は弁護士の活動に対する対価と考えられるため、相続手続きで思ったような結果にならなかった場合でも、原則返還されません。
そのため、手付金や内金とは意味合いが異なります。
ここでは、着手金の相場などを解説していきます。
着手金の相場は?
着手金の相場は20万円前後~とする場合が多いです。
一律としている場合と、経済的利益から算出する場合があります。
経済的利益とは、弁護士に依頼することで得られると見込まれる利益のことです。
たとえば遺産分割によって1000万円の財産を相続できると見込まれる場合、経済的利益は1000万円となります。
この1000万円に任意の割合を用いて算出するものです。
その他、すでに相続紛争が起こっている場合や相続人の数が多い場合など、依頼の難易度により着手金もそれに応じた金額となります。
着手金と成功報酬の違いとは?
前述したように、着手金は、実際の手続きが始まる前に支払う金銭です。
一方で成功報酬とは、相続手続きすべてが終了した後に支払うものです。
成功報酬の金額は、実際に依頼人が得た経済的利益を基準に算定されるケースが多いでしょう。
そのため相続財産が多いほど、成功報酬も高額になります。
着手金や弁護士費用は誰が支払う?
相続手続きを弁護士に依頼する場合、特に紛争などが起こっているケースでは、相手方に払ってほしいと考えることもあるでしょう。
しかし原則、依頼した本人が支払うことになります。
もし複数の相続人を代表して一人が依頼する場合、相続人で費用を出し合って負担することは自由です。
ただし、弁護士費用を相続財産でまかなう場合は、相続人全員の同意を得て、遺産分割協議で負担割合を話し合うことが必要です。
基本的に弁護士一人につき、相続人一人の代理しかできません。
相続人全員ではなく、あくまでも依頼者の代理人であると理解しておきましょう。
着手金以外の弁護士費用の相場・内訳
弁護士費用は、着手金以外にも様々な費用がかかります。
ここでは、弁護士費用の全体像について解説していきます。
相続を弁護士に依頼した場合の相場
相続における弁護士費用の内訳は、おおまかに以下のとおりです。
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 日当
- 実費
相続手続きは多岐にわたるため、依頼する手続き内容により金額は大きく異なります。
ケースごとに見ていきましょう。
遺産分割協議・調停まで依頼する場合
遺産分割協議から調停まで依頼し、経済的利益が2000万円となった場合の例で見てみましょう。
着手金:約30万円
成功報酬:約200万円
実費:数万円
合計で約230万円となります。
弁護士報酬は、相続税の控除対象に含めることができません。
高額な報酬を支払ったとしても、相続税の減額はできないため、依頼するかどうかは慎重に検討しましょう。
遺産分割協議書や遺言書のみの場合
相続に関する手続きの一部として、遺言書や遺産分割協議書の作成のみを依頼することもあるでしょう。
書類の作成のみであれば、10~30万円前後となる場合が多いです。
相続財産の内容や相続人の数などで変動し、相続財産の額が大きければ50万円ほどかかるケースもあります。
弁護士に依頼することで相続人間の争いを予防することにもつながるため、争いが起こりそうな場合は依頼を検討してみましょう。
その他相続に関わる費用
相続放棄をする場合、家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
手続きを弁護士に依頼した場合の相場は、10万円前後です。
遺留分減殺請求のため、相手方に内容証明を送付したい場合、内容証明の作成だけであれば5万円前後が相場でしょう。
その他、以下の依頼をしたい場合は、相続財産の額から算出した経済的利益を基準として算出するため、数十万円~が必要になります。
- 遺言の内容を確実に実行するための遺言執行者の就任
- 遺留分減殺請求で相手方と交渉が必要な場合
相談料は無料の場合が多い
相談料は1時間5000円前後です。
ただ、実際に手続きを依頼すれば相談料は無料とされることがほとんどです。
この他、初回相談無料、30分まで無料など、事務所ごとに決められているため、相談の際は比較してみるとよいでしょう。
日当とは?
日当とは、依頼者が遠方にいる場合や裁判所に出向くときなど、弁護士が出張をする必要がある場合にかかる費用です。
移動時間や現地での作業時間などから算出され、1日当たり5万円前後としている場合が多いでしょう。
タイムチャージの注意点
弁護士によっては、着手金や成功報酬に代えて、作業にかかった時間で報酬を算出する方法をとる場合があります。
これをタイムチャージといいます。
タイムチャージの場合、実際の稼働時間と時間単価を用いて費用を算出しますが、実際に手続きにかかる時間が予測しづらいため、事前に総費用がわかりにくい点が難点です。
この方法を採用している事務所に依頼をする際は、費用についてよく確認しておきましょう。
相続における弁護士費用を安く抑える方法
相続を弁護士に依頼するケースでは、家族間で争いが起こっている場合が少なくありません。
手続きの難易度や工程も複雑になるため、費用が高額になりがちです。
ここでは、弁護士費用を少しでも安く抑える方法をご紹介します。
比較検討する
弁護士費用は一律規定ではなく、事務所ごとの裁量により決められています。
そのため、依頼する弁護士により報酬が異なります。
一カ所で決めず、複数の事務所を比較検討するのがよいでしょう。
また、相続関係専門で手続きに詳しい弁護士に依頼することで、作業に無駄がなく、結果的に最小限の費用に抑えることもできます。
法テラスを利用する
法テラスは、収入や資産に応じて利用できる国の制度です。
依頼者に代わって弁護士報酬の立て替えを行い、依頼者は月々数千円程度から分割払いを利用することができます。
ただし、利用には条件があるため、よく確認しましょう。
完全成功報酬型を検討する
完全成功報酬型は、最終的に経済的利益が発生した場合のみ弁護士費用を支払う方法です。
着手金などは必要なく、確定した相続財産を基準に報酬が決定します。
ただし、この方法は通常の相続手続きではなく、すでに払ってしまった相続税の還付手続きで採用されている場合が多いでしょう。
また、最終的に着手金分を上乗せして成功報酬として請求される場合もあり、必ずしも費用を抑えられるわけではない、ということに注意が必要です。
まとめ
相続に関する弁護士費用は、事務所ごとに異なります。
まずは依頼を検討する事務所の無料相談を利用し、費用に関して明確にしておきましょう。
その中でも着手金は、契約を結んだ段階で先に支払うことになります。
ある程度まとまった資金が必要になるため、事前に準備しておきましょう。
依頼を検討する際には、着手金は原則、返還されないことや、弁護士費用が相続税控除に含まれないことを考慮しておく必要があります。